自然豊かな鎌倉に住む[中] 街並みを守るルールで古民家も安心

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(写真撮影:長井純子)

海と山に囲まれた古都鎌倉。緑豊かで日本遺産にも登録された歴史的遺産と現代が調和する美しい街並みが魅力だが、この景観を守るため、住まいを新築・改築する際の鎌倉独自ルールも多い。鎌倉で住まい探しをする場合に知っておきたい規制と古い建物に安全に住むための耐震診断などの補助金制度について取材した。

歴史・自然・景観を守るために何重ものルールあり

鎌倉駅に降り立つと、緑が多く空が広いな、と感じる。聞けば市の総面積の約4割が樹林地等という環境、さらに市域のほとんどに建物の高さ制限があることで高層建築物も目につかない。神社仏閣などの歴史的建造物も多く、魅力的な街並みの景観を守るため、実は建築上の独自ルールがたくさんある。

都市計画法に基づく用途地域や建ぺい率など建築基準法は全国共通のもの。これに重ねて、鎌倉市・逗子市・京都市・奈良市など8市1町1村が指定されている「古都」ならではの歴史的風土を守るための「歴史的風土保存区域」がある。また自然景観を維持し、自然と調和した緑豊かなまちづくりをするために建物の建築時などに規制がある「風致地区」が市内の約55.5%を占め、周辺の街並みや自然環境と調和するよう建物の高さや建築物のデザイン・色彩などを規制する「景観地区」などの指定も。つまり、鎌倉市内で建築・造成・樹木の伐採などを行う場合、かなり高い確率で建築確認の前になんらかの許可や認定が必要になるのだ。【画像1】左:全国共通の「都市計画図」と鎌倉独自の「歴史的風土保存区域・風致地区等指定図」。市のホームページでも同じ情報を確認することができる。右:三方を山、正面を海に囲まれた古都鎌倉。高い建物がない街並み(写真撮影:長井純子)

【画像1】左:全国共通の「都市計画図」と鎌倉独自の「歴史的風土保存区域・風致地区等指定図」。市のホームページでも同じ情報を確認することができる。右:三方を山、正面を海に囲まれた古都鎌倉。高い建物がない街並み(写真撮影:長井純子)

建築工事を開始したら、埋蔵文化財らしきものが出てきて発掘調査となり、工期が延びたなどの話も聞く。他エリアから転入して、独自ルールを知らずにトラブルにならないのか?

鎌倉市まちづくり景観部まちづくり政策課によると、「家を建てる場合、法令による許可・認定などがないと建築確認を受けることができない仕組みになっています」とのこと。とはいえ、建物が建築確認の申請書通りであっても、敷地内に屋根のあるカーポートを追加したことで建ぺい率オーバーになるケースもあるという。

さらに法令以外にも、地域独自にプライバシーや住環境を守るための住民協定も。「屋上不可」「賃貸集合住宅建築不可」「50坪未満に分割不可」「隣地との境界線から1m離す」など自主規制をする住民協定は、現在51地域で策定されている。

さまざまなレベルの規制があり頭が混乱してしまいそうだが、「住みたい候補地が決まれば、市役所の窓口でどの地域に当てはまり、それによってどのような制限があるか具体的に説明しています」とのこと。住民協定などは、物件購入契約時に重要事項の説明がされない場合もあるので要注意。しかし規制だけでなく、緑豊かな街並み景観をつくるため緑化工事の補助金、など知って得する独自ルールもある。鎌倉で住まいを検討するなら、候補地が決まった早めの段階で市役所の窓口で直接具体的に相談することをおすすめする。

耐震性が心配な古い建物には、無料相談や耐震改修工事の補助も

鎌倉を歩くと、風情のある古民家など古い日本家屋が目につく。実際筆者も、築90年の平屋に一目惚れして鎌倉に移住した。しかし古い建物で心配なのは、なんといっても耐震性だ。

鎌倉市建築指導課によると、建物の耐震化については主に3段階の支援を行っているという。1つは建築士による無料相談、2つめは自宅の耐震診断費用の補助(5万円)、3つめは耐震改修工事費用の1/2(上限70万円、低所得者世帯等は上限80万円)の補助金制度だ。無料相談は、震災直後や平成27年9月の防災の日に合わせた告知後などは問い合わせが増える傾向があり、月2回の相談会枠は2カ月先までいっぱいだという(平成28年5月取材時点)。【図1】年間50件前後だった相談件数は、東日本大震災後著しく増加。平成26年には28件と低迷したため、平成27年には広報誌による注意喚起や告知を実施し増加。実際に改修補助した件数も5件から18件に大幅増加した(資料提供:鎌倉市) 【図1】年間50件前後だった相談件数は、東日本大震災後著しく増加。平成26年には28件と低迷したため、平成27年には広報誌による注意喚起や告知を実施し増加。実際に改修補助した件数も5件から18件に大幅増加した(資料提供:鎌倉市)【画像2】鎌倉にも大きな被害をもたらした関東大震災が発生した9月1日防災の日に合わせて市内の広報誌である「広報かまくら」の表面で大々的に耐震についての注意喚起と市の耐震補助制度の詳細について告知。これによって相談は激増した(資料提供:鎌倉市)

【画像2】鎌倉にも大きな被害をもたらした関東大震災が発生した9月1日防災の日に合わせて市内の広報誌である「広報かまくら」の表面で大々的に耐震についての注意喚起と市の耐震補助制度の詳細について告知。これによって相談は激増した(資料提供:鎌倉市)

工事前に申請書を建築指導課に提出など諸手続きが必須だが、対象となる物件の条件に当てはまる場合は利用しない手はない。【画像3】大正13年に建てられ明らかに耐震性が心配だった自宅。リノベーションした際、もちろん耐震補強もしたので、この70万円という補助金制度を知らなかったことが悔やまれる(写真撮影:長井純子)

【画像3】大正13年に建てられ明らかに耐震性が心配だった自宅。リノベーションした際、もちろん耐震補強もしたので、この70万円という補助金制度を知らなかったことが悔やまれる(写真撮影:長井純子)

引越し前後でこの1年鎌倉市役所に出向く機会が多いが、東京に住んでいたころに比べ、どの窓口も親切だ。規制も多いが、耐震改修工事や緑化推進など条件に当てはまれば得する補助金制度もあり、知らないと私のように悔しい思いをするかも!? 美しい街に安心して暮らすには、しかるべきルールがある。まずは、早めに相談を!●取材協力

鎌倉市都市調整部建築指導課 耐震改修工事費等補助金制度について

・鎌倉市まちづくり景観部まちづくり政策課
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