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【人を縫い、服を縫う】脳外科医とデザイナーを両立するDrまあやさんが、「二足のわらじ」を履く理由

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レインボーカラーの髪、そしてカラフルでド派手なファッション。街ゆく人が振り返るほどインパクト抜群のこの女性、医師とデザイナーの二足のわらじを履くDrまあやさんだ。

脳神経外科医としてハードワークをこなすかたわら、個展や展示会などを開催するなどデザイナーとして制作活動にも注力している。昨年、テレビ番組『家、ついて行ってイイですか?』に取材されたのを機に、その個性と異色の経歴に注目が集まり、最近ではテレビや雑誌にもひっぱりだこだ。

そもそもなぜ、医師とデザイナーという、両極とも思える仕事を両立させているのだろうか?そして今後はどんなキャリアを目指しているのか?ご本人を直撃した。

脳神経外科専門医・デザイナー

Drまあや(折居麻綾)さん

2000年岩手医科大学医学部卒業後、慶応大学外科学教室脳神経外科に入局し、脳神経外科医として勤務。2009年、日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学し、翌年から約2年間、英・ロンドンのセントラル・セント・マーチン芸術大学で学ぶ。帰国後、2013年に「Drまあやデザイン研究所」を設立。現在は、医師の仕事と制作活動を両立し、活動を続けている。6月2日(水)~6日(月)原宿にて「カラフルデブ展示会即売会」を開催。7月には初の著書『カラフルデブを生きる』(セブン&アイ出版)を発売予定。

道で倒れている人を救えるようになりたいと、脳神経外科を選択

まあやさんの作る服はとてもカラフルで、奇抜だ。

カラーグルーガンで作った色とりどりの渦巻きをつなぎ合わせたドレス、おもちゃや人形がびっしり付けられたベスト、よく見ると花柄がCT画像でできているワンピース…などなど。

「日本人はファッションに対して保守的な人が多いですが、ファッションってもっと自由で楽しいものだと思うんです。だから、自己表現の一環として、そしてアートの一部として、私が面白いと思うファッションを創作し、提案しています。…このドレス生地のCT画像、私の腹部のものなんですよ。昔から花柄が苦手で、それを克服する意味で『自分のCT画像で花柄を作ったら面白いのでは?』と考えました。これは75キロの時のCT画像だから、まだ脂肪が少ないですね。今は大台(100キロ)に乗せたから記念に撮り直し、デザインし直してみようかな、なんて思っているんです(笑)」

まあやさんのヘアスタイルは、レインボーカラーのショートボブ。脳神経外科医として患者に相対する時は、黒のウィッグを被る。手術の時は、患者の麻酔が効いてからウィッグを取るそうだ。「でも、最近テレビに出るようになったから、患者さんにバレ始めちゃって…『先生、それカツラだったんだ?』なんて言われるんです」と笑う。

▲作品はカラフルで斬新。これらのドレスはカラーグルーガンでできている PHOTO:Akiko Michishita

医師であり、デザイナーという現在のまあやさんを形作ったのは、子どもの頃の環境にあった。

祖父が開業医、両親がアーティストという環境で育ったまあやさん。子どもの頃からアートやデザインに親しみ、「この道に進みたい」と思ったこともあったという。しかし、祖母から医師になることを強く勧められたうえ、両親を見ていて「芸術で食べていくのは難しい」と感じたことから、将来の目標を「医師」に置いた。

「医師は専門職。手に職を付けることで、ずっと一人でも食べていけるだろうなと思いました。それに、医師になってからほかの道を目指すことはできても、ほかの道から医師になるのは難しい。まずは医師になってから別の道を考えたっていい、という思いもありましたね」

そして大学1年の時に、「道で倒れている人を医師として救える人になりたい」と、より専門性の高い「脳外科医」を選択する。

「道で倒れるということは、原因は心臓か脳にある可能性が高い。せっかく医師を目指すなら、そのどちらかを救ってあげられるようになりたいと思ったんです」

大学卒業後、慶應大学の脳神経外科に入局。研修医を経て、脳外科の専門医として資格を取得し、晴れて脳神経外科の専門医として独り立ちし、活躍するようになった。一方で、学会のポスター作成を請け負うなど、趣味の範囲で「デザイン好き」としての手腕も発揮していたという。

落ち込んでいた時にたまたま見たデザイン学校の広告で、「二足のわらじ」を決意

そして、医師としてのキャリアが10年になろうとしていた2008年、転機が訪れる。

脳外科医として働きながら大学院で研究をしていた時のこと。研究発表前の履修審査の席で、教授に内容についてめちゃくちゃに怒られたという。「今からテーマは替えられないし、これからどうしよう…」と落ち込み、あてもなく山手線に乗って何周もぐるぐると回り続けていたが、ふと顔を上げると、ある車内広告が目に止まった。

「日本外国語専門学校の、海外芸術大学留学科のオープンキャンパス広告でした。その時、学生時代に憧れていた、世界三大ファッション大学の一つであるセントラル・セント・マーチン芸術大学で学びたい!という思いが、心の底から急激に湧いて出たんです。そこからは行動が早かったですね。週末にはオープンキャンパスに参加し、学校の人をつかまえてセント・マーチンへ留学できる可能性を質問。『頑張れば可能だ』と言われ、入学を即決しました」

10年間、医師として活動する中で、「この仕事は意外に時間を自由にコントロールできる仕事だ」と気づいたことも、一歩踏み出す勇気になった。フリーランスやパートタイムで効率的に働く医師も多く、「やりようによっては掛け持ちも可能だ」と考えたという。

初めの1年間は、昼は専門学校でデザインの基礎を学び、夜と週末は医師として当直もこなす生活を続けた。その後、念願の英・ロンドンにあるセントラル・セント・マーチン芸術大学に留学。 卒業間際、ビザのトラブルで緊急帰国を余儀なくされる不運に見舞われたが、約2年間ファッション・デザインの勉強に没頭し続けた。

医師の仕事を休んでまでロンドンに行ったのは、『やるなら仕事にしたい』と思ったから。趣味でデザインを続けるならばわざわざ学ぶ意味はないし、一から本気で学ぼうという覚悟も持てない。『デザインで稼げるようになる』という腹決めをして、気合を入れて臨みましたね」

帰国後は医師の仕事に復帰する一方で、デザイナーとしての事務所「Drまあやデザイン研究所」を設立。「二足のわらじ」生活の環境を整えた。

片方の仕事に行き詰まったら、もう片方に没頭することでストレス解消できる

▲小物もカラフル! PHOTO:Akiko Michishita

そして現在。都内のクリニックで院長を務めながら、月に3回は北海道・釧路の病院でパートタイム医師として働いている。脳神経外科医としてのスキルアップのため、学会に出席したり、文献を読んだりする時間も重要だ。

医師として多忙を極める日々だが、創作の手は緩めていない。家に帰れば、メスやハサミといった手術器具をグルーガンに持ち替え、洋服や小物を作り続ける。

「よく『両立するのは大変では?』と言われますね。確かに時間はいくらあっても足りないですが、そういうストレスは全くありません。どんなに好きな仕事であっても、壁にぶつかったり、もう嫌だ!と思う瞬間ってありますよね。そんな時、もう一方の仕事がいいストレス解消になるんです。医師の仕事は緊張を強いられることが多いので、もう疲れたー!と爆発したくなる瞬間がある。そんな時にデザインに没頭すると、肩の力がどんどん抜けていき、気持ちが楽になるんです。逆に創作に行き詰まった時は、医師の仕事がいい視点の切り替えになる。180度異なる分野だからこそ、いい相乗効果を発揮しているんでしょうね。以前に比べ、仕事のやりがい、喜びが倍増していると実感しています」

医師もデザイナーもどちらも大切。50:50のバランスで両立し続けたい

今後のキャリアについて、まあやさんは「医師とデザイナー50:50という今のバランスを維持しながら、体力の許す限り突き進みたい」と話す。

「脳神経外科医のスペシャリストとして、一人でも多くの患者を救いたいという思いはとても強いです。脳は、人間の心と体、あらゆる全てのことにかかわる重要な臓器。目の前の患者の頭の中で今、何が起きているのかを冷静にジャッジし、開頭するのは、脳外科医にのみ許されている行為です。これからも勉強を続け、知識をアップデートして、あらゆる症例に対応し続けたいですね」

「そしてデザイナーとしても、自分の感性をどんどん表現していきたい。今はまだ、ほとんど売り上げが立っていませんが、今年は展示会を積極的に行い、販売に力を入れていく予定。そしてゆくゆくは、世界に向けて発信していきたいですね。特に、道半ばで帰国することになったロンドンに進出するのが夢。ロンドンの人って、歴史を重んじる人が多いせいか、意外と頭が固いんです。脳外科医がデザインを学ぶなんておかしいと言われたし、私の自由な作風に関してもなかなか認めてもらえなかった。そういう人たちをギャフンと言わせるような服を作って乗り込みたいですね。私、意外と反骨精神が強いんです(笑)」

2つの仕事の相乗効果をうまく発揮しながら、二足のわらじを両立しているまあやさんは「スーパービジネスパーソン」のように見えるが、もちろんたまには行き詰まり、落ち込むこともあるのだとか。そんな時は、「何をすれば、動き出せるようになるか」を考えるという。

職場や創作の場にいると息詰まるならば、どこならやる気になれるのかを考えます。カフェみたいな開放的な場所でおいしいケーキを食べればやる気になれるのか、文豪みたいにホテルにこもればいいのか、とか。『あと1時間だけならば頑張れるかも?』など、時間を区切ってみることも多いですね。結果的に1時間も頑張れなくて、結局ぐうたらしちゃうことも多いんですけれど(笑)、そうこうしているうちに、少しずつ一歩踏み出せる元気が湧いてくるようになりますよ」

EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭

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