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成田達輝、萩原麻未、横坂源、吉田誠によるメシアン「時の終わりのための四重奏曲」ツアーが間もなくスタート、「次の日からの希望につながれば」

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 成田達輝、萩原麻未、横坂源、吉田誠というクラシック音楽界を牽引する若手奏者4人が、メシアン「時の終わりのための四重奏曲」に挑むツアーを5月26日より開催する。本ツアーへの意気込み、そして作品の魅力について成田に聞いた。

―4人の出会いを教えてください。

成田達輝:この4人で初めて演奏したのは約1年前のことです。「このメンバーで演奏したら面白いんじゃないか」というアイディアから軽井沢に集まって二泊三日の合宿をしました。軽井沢は武満徹の別荘があり、メシアンが散歩をしたこともある場所です。夕方に集合して、朝4時頃までずっと演奏していたことを覚えています。

―朝まで演奏ですか! すごいですね。荻原さん、横坂さん、吉田さんはどんな方ですか?

成田:荻原さんは、カメレオンのようにピアノの音色を自由自在に変えられる人。横坂さんは温かくて包容力のある魅力的な人柄が、そのまま音楽に表れています。吉田さんとはパリ音楽院に入学する前からの付き合いなのですが、パリに着いた日の夜に電話してみたら、すぐに友達のパーティーに誘ってくれて。色々な人や物を繋げることができるパワーがあって、素晴らしい才能を持つアーティストだと思います。

―「時の終わりのための四重奏曲」は、メシアンが第二次世界大戦中にナチス・ドイツの捕虜として収容されていた際に作曲・初演されたという過酷な背景を持つ作品です。

成田:そうですね。僕はこの作品を聴くと、鉄と鉄とを擦りあわせたようなザラザラした印象を受けます。

まず一楽章では、早朝の森のようにチェロとピアノが同じメロディを繰り返す中、クラリネットとヴァイオリンが鳥の鳴き声を響かせます。そして三楽章はクラリネットのソロ。吉田さんが「収容所まで走る機関車の汽笛の音を表しているんじゃないか」と言っていたのが、とても印象的でした。捕虜を乗せた貨物列車が、毎日 汽笛を鳴らしながら走ってくる。その音を聞くのは、ものすごく怖かったと思います。そんな人達の内的な感情をクラリネットの技巧で表している楽章なのではと思います。

そして、この作品は全部で八楽章ありますが、全員で演奏するのは一、二、六、七楽章の4曲のみ。六楽章は、全員ユニゾンで演奏します。約8分にわたって、全員で同じ音を演奏し、フォルティッシモに向かって少しずつ音量が上がっていく。少しでもずれてはいけないし、はみだしてはいけない。まるで、神の御言葉を絶対に間違えてはいけないと言われているような緊張感を感じます。

―私も昨年ラ・フォル・ジュルネで、この作品を聞かせていただきましたが、会場がすごい緊張感で満たされていたことを覚えています。

成田:僕の友人も、2人で聴きにきたのに終演後に何も話さずに解散したと言っていました。

―じゃあ、デートには向いていませんね。

成田:そうかもしれません(笑)。でも、しばらくしたらその時の感想を話したくなる、そんなコンサートかもしれません。

―前半は、武満徹の作品を2曲取り上げられます。

成田:武満徹の作品からは、樹木に栄養が満たされていくような、大地への感謝と自然への畏敬の念を感じます。今、「カトレーンII」を練習していますが、この作品は1人で弾いていても実態が見えません。4人で演奏してみて、やっとどんな曲かが分かる。まるで4本の枝が集まって1本の木になるように。それは日本人が無意識のうちに相手を感じとり、和を重んじる人種であるということが根底にあるからなのではないでしょうか。そして、そういうことを頭で考えなくても、阿吽の呼吸で感じ取れるように作曲されている。演奏するのが、今からとても楽しみです。

―最後に、公演にお越しになる方に一言お願いします。

成田:まず、メシアンの「時の終わりのための四重奏曲」というのは、演奏機会の少ない作品なので、とても特別な公演になると思います。この音楽を通じてメシアンが過ごした収容所での過酷な日々を感じていただき「自分の悩みなんて、ちっぽけなものだったんだな」と思い、次の日からの希望につながれば嬉しいです。 そして武満徹とメシアンは、音楽的にもとても密接な関係にありました。実際、「カトレーヌII」には、メシアンの「時の終わりのための四重奏曲」の音楽の断片が登場します。まるで動物が戯れる森の中に、メシアンがゆっくりと歩いているかのように。なので、このコンサートを通じて2人の邂逅を楽しんでいただきたいなと思います。取材:高嶋直子、写真:Hiroki Sugiura

◎公演情報【萩原麻未、成田達輝、横坂源、吉田誠 メシアン「時の終わりのための四重奏曲」】
5月26日(木)横浜・フィリアホール ※プログラムA
6月3日(金)群馬・桐生市市民文化会館 ※プログラムA
6月5日(日)宮城・石巻法音寺本堂 ※プログラムB
6月17日(金)東京・サントリーホールブルーローズ※プログラムA

プログラムA:
武満徹「雨の樹 素描II ―オリヴィエ・メシアンの追憶に―」
武満徹「カトレーン II」
メシアン「時の終わりのための四重奏曲」

プログラムB:
メシアン「時の終わりのための四重奏曲」
コネッソン「アダムズ・ヴァリエーション」
ガーシュウィン「3つの前奏曲」ほか

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