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福満しげゆき作品を実写化!『ヒーローマニア』豊島監督インタビュー「“ヘタレ”が自警団をやる面白さ」

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『僕の小規模な失敗』や『うちの妻ってどうでしょう?』などで知られる漫画家・福満しげゆきの『生活【完全版】』を実写化。『ヒーローマニア -生活-』が現在公開中です。

映画『ヒーローマニア』は、特殊な能力や超人的肉体を持つキャラクター、ではなく、身近に存在していそうな市井の人々が、小さな悪を成敗しながら世直しをしていくというアクションエンタテインメント。東出昌大さん、窪田正孝さん、小松菜奈さんという旬のキャストが集結し、片岡鶴太郎さん、船越英一郎さんといったベテラン俳優陣が脇を固めています。

メガホンをとったのは『怪談新耳袋』シリーズで監督デビュー後、『紺野さんと遊ぼう』、『マジすか学園』等、個性派作品を手掛けてきた豊島圭介監督。本作への想いや福満作品についてなど色々お話を伺って来ました。


―本作とても楽しく拝見しました。まず、福満しげゆき先生のコミック「生活」を映画化しようと思ったきっかけはどんな事があったのでしょうか。

豊島監督:もともと福満さんの漫画が好きで色々と読んでいたのですが、エロ漫画出身で、セクシャルな物ばかりを描いていたのに、長編ストーリー漫画を描きはじめたタイミングがあって。それが「生活」だったのですが、映画では“ヘタレ”と呼んでいる、クラスでも隅っこにいる様な人達が自警団物のアクションをやるというのが面白いなと。後は、カナヅチを使ったアクションとか、ワイヤーを使ったアクションとか、すごく楽しくて。それで、僕は以前『週刊 真木よう子』で福満作品を実写化した事があり(「景色のキレイなトコに行こう」)、そのご縁もあって、この映画を撮る事が出来ました。

―私はその“にわか”というか(笑)、福満先生の作品は『うちの妻ってどうでしょう?』から読みはじめたので、今回本作を観るにあたって『生活』を読んで、「こんな作品があったんだ」と驚きました。

豊島監督:確かに福満先生は今私小説漫画家、といったイメージが強いのかもしれませんね。

―そんな福満作品にそこまで精通していない私でも、先生の作品は絵を含め、独特な作風だと分かるので、実写化は大変だったのでは無いかと思ったのですが。

豊島監督:まず大変かなと思ったのは予算の問題ですね。「生活」はそこまで有名な原作では無いので、すごく少ない予算で作らなくてはいけないかもしれないと思いました。その場合はアクションにはフィーチャーしないで、ヘタレな人間達を撮ってニッチな作品にしようと。でも御陰さまで豪華なキャストが揃い、予算もいただける事になったので、これはアクションエンタテインメント作品に振ろう、と作戦を変更しましたが。

―キャスティングはすんなり決まったのですか?

豊島監督:いえ、企画から製作開始まで5年くらいかかってますね。震災(2011年3月11日)の前から準備していました。東出君とはWOWOWのドラマ『ホリックxxxHOLiC』でご一緒していて、面識があったのですが、彼は凛々しい役柄が多いのに本人は三の線というか、抜けている所もあるので中津役は間違い無くお願い出来るなと思いました。東出君は同じ監督と2回やるのは(『ヒーローマニア-生活-』が)初めてだったみたいで、色々と話をしながら出来ましたね。『アオハライド』では女の子をキュンキュンさせようと演技しただろうし、『寄生獣』や『クリーピー 偽りの隣人』では体温が無い謎のキャラクターに徹しただろうし、だからこんなマヌケな彼を観られるのは、この映画だけだなと思います。東出君も結婚をしましたし、今はもう黄色い声援が飛んで来るという感じでは無いかもしれないけど、それがまた良いですよね。

―窪田正孝さんはまさに今黄色い声援の真っただ中にいる感じですよね。

豊島監督:本当にそうですね。儲けもんでした(笑)。窪田君とは『古代少女ドグちゃん』でご一緒してるのですが、役に対してすごくストイックでのめり込む所があるので、変態性の高い土志田には合っているなと思いました。後、窪田君はすごく身体能力が高いので、色々な事が出来るんですよね。窪田君が参加してくれる事になった事で、アクションに監督に森崎えいじさんを呼んで、吹替え無しのアクションシーンを増やす事が出来ました。鶴太郎さんも実は吹替えをほとんど使っていないんですけどね。

―片岡鶴太郎さんは最近ではドラマや映画で、ベテランの刑事さんとか、地位が上の役柄がほとんどになっている中、この作品では動く鶴太郎さんが観られるという。

豊島監督:アクションができてお芝居もできるとなると鶴太郎さんしかいなかったんですよね。ボクシングもやっていますし、今も毎朝3時間ヨガをやってらっしゃるそうです。僕は「ひょうきん族」世代なので、コミカルな部分を出して欲しかったのですが、ご本人も最初はその感覚が思い出せなかったみたいです。本の読み合わせをやっても、どうしても渋い刑事さんの様な雰囲気が出てしまったりして。ただ「ここまでやっていい」という感覚をつかんでからは、もう素晴らしくて。

―今監督は「ひょうきん族」世代とおっしゃっていましたが、昔からテレビでご覧になっていた人とお仕事をするというのはどの様な気持ちですか?

豊島監督:本当に毎回有り難いですね。僕の年齢にもなると子供の頃から観ていた方が亡くなってしまう事もあるので。原田芳雄さんとか緒形拳さんとかお会い出来ませんでしたから。鶴太郎さんはまだ全然その様な年齢では無いですけど、今回ご一緒出来て「こんなすごい方と仕事出来るステージに来たのか」と感慨深いですね。

―カオリ役を演じた小松菜奈さんですが、原作のカオリは福満先生がよく描かれる女性、ムチっとしていておかっぱだったのでイメージが変わって面白かったです。

豊島監督:小松さんに決まってから、カオリのシーンは結構書き換えたんですよ。妖艶だったり、『渇き。』の謎めいた感じだったり、原作よりもセクシャルな雰囲気は増えるだろうなと思いました。カオリのテーマが「何が一番自分の得なのかを考える人」だったので、峰不二子的な要素を足したりとか。後はもう、あのスタイルですから衣装も変わったんですよ。最初はブルース・リーみたいなつなぎの衣装だったのですが、スタイリストさんの助言もあってショートパンツにしたり。

―このカオリというキャラクターは、映画を観たボンクラ男子達が悶絶してしまう女の子ですよね(笑)。

豊島監督:初期段階でカオリが海外に行ってしまう設定があったのですが、福満先生に「寂しいからそんなに遠くに行かせないでください」ってお願いをされました(笑)。福満先生ご自身もこのカオリというキャラクターが大好きで大切なんだと思います。

―事前に読ませていただいた映画の資料の中で、監督は「悪女マニア」と書かれていましたが、カオリの様なキャラクターにも惹かれますか?

豊島監督:好きですね。僕の悪女の定義というのが「何が一番自分の得なのかを考える人」なので、まさに。しかもそれを全く悪びれずにやるんですよね。「私、こっちに行く事にしたからごめんね〜」って(笑)。私生活でも何度か会った事ありますが、自分がされたらすっごい悲しいのに惹かれるんですよね。悪いな〜って。僕は若尾文子さんが好きで、若尾さんが出ている昔の映画を観ていると本当に悪くて、人をたぶらかすのに泣く所は泣くし、こんな人と一緒にいたら地獄に落ちるんだろうなっていう。

―そんなカオリの様な魅力的な女子がチームにいると、こう、人間関係がこじれるかなと思いつつ、そうはいかないという面白さもありました。

豊島監督:最初に脚本を見せた時、福満先生に「BLっぽさが足りない」と言われて、描きなおしました。中津の気持ちがカオリにいかないので、うまく三角関係にならないんですよね。僕、子供の頃『スター・ウォーズ』を観て「(ルークとレイアとハンソロの)ものすごい三角関係が描かれている!」と思ったのに、大人になってから観ると別に直接的な描写は無いんですよね。『ヒーロマニア-生活-』は子供が観られる映画にしたいなという気持ちがあったので、そこまで直接的に描かずに伝わる様に描いたつもりです。

―おっしゃるとおり、直接的に描かれていなくても観客側って何かを察するものなのですよね。今回、ヒーロー物を撮られて、面白かった事・難しかった事を教えていただけますか?

豊島監督:『クローズ』の様な男の子アクションを撮る事になったら困るかもしれないのですが、以前僕が撮った『マジすか学園』の様ないわゆる“偽物”なら出来ると思ったんですよね。『マジすか学園』は不良学園物の偽物というかパロディ、『ヒーローマニア』はヒーロー映画のそれ、という感じに。カッコイイ人がカッコイイ事をやるわけでは無くて、ダメな人が頑張るというのだったらやりたいと。

後は、『スパイダーマン』に「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という言葉が出て来ますが、この映画でもそれをきちんと描きたかったというか。人に暴力をふるったという事は、結局自分に帰って来る、因果応報というかやった事はやられるんだと。そこらへんは自分で撮ったのに観ると感動しちゃうんですよね。

―今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!


『ヒーローマニア -生活-』現在公開中!
http://heromania.jp/

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記者:

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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