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【6/3公開】滴り落ちる血の一滴にすら、魂が震える。エミネム好き必見『サウスポー』直前レビュー

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カメレオン俳優の名を欲しいままにしている、今ハリウッドで最も勢いのある俳優のひとりジェイク・ギレンホール。作中でも序盤・中盤・終盤ではそれぞれ全くの別人のような印象を受ける彼が主演のボクシング映画、『サウスポー』が6月3日(金曜日)から全国で公開される。

今回は公開直前という事で、本作の魅力をエミネム好きの筆者独自の視点からガジェ通読者の皆様にお伝えしたい。
とは言え、絶叫必至のラストシーンは必見。最近流行りの3Dや4DXでないにも関わらず、思わず体が動いてしまうほど躍動感溢れる映像体験ができる。エミネム好きはもとより、「映画館で見るべき映画」の本作は、興味のない人にも是非劇場で体感して欲しいと自信をもってお勧め出来る1本だ。

<あらすじ>
「倒すのは、昨日の自分だった」 彼が左の拳を握る瞬間―その運命が変わる。
リング上で脚光を浴びるチャンピオン、ビリー・ホープ(ジェイク・ギレンホール)。怒りをエネルギーに相手を倒すというスタイルに心配が耐えない妻と娘。その彼の怒りは無情にも妻の死へと繋がってしまう。最愛の妻(レイチェル・マクアダムス)を失くしたビリーは悲しみに暮れる毎日。ボクシングにも力が入らず全てを失ってしまう。愛する娘(ウーナ・ローレンス)までも・・・。そんなビリーは、今は第一線を退き、古いジムを営むトレーナーのティック(フォレスト・ウィテカー)のもとを訪れる。かつて、ビリーが唯一恐れたボクサーを育てた彼に教えを請い、自らの「怒り」を封印することを学んでいくビリー。やがて彼は、過去の自分と向き合うことで闇のなかに光を見出して行く・・・。

生易しい映画ではない


結論からいうと、本作は感動のクライマックスを迎えるいわゆる「ヒューマンドラマ」モノである。栄光の頂点にあった主人公が愛する妻を失い、富も名声も一瞬で剥ぎ取られ、遂には唯一の希望であった娘すらも自分の下を去っていく。しかしそのどん底から立ち上がり、奇跡のカムバックを成し遂げるー。文章で表現すると、さもありなんという感じだが、その実この映画ではそこへ至るに辿る道筋は、長く非常な困難を伴うもので生半可なエイガでは無い!ということを声を大にして言いたい。

アントワーン・フークア監督のスピード感あるアクションももちろん健在だ。監督作『イコライザー』でも見せた流れるようなスローモーションが今回も効果的に使用されており、ある意味シンプルな「ボクシング」という格闘技がここまで新鮮に刺激的に感じることが出来るのか!と驚く。それもそのはず、監督自身ボクシング経験者であり、そのリアリティは一級品だ。試合中は勿論、リングの外のトレーニングやジムの様子などもリアリティがある。ビリーの体からほとばしる血しぶきを見れば、疑う余地はないだろう。

また、今作は象徴性にも優れ、作中何度か重要なキーワードや表現が登場する。そのような”小道具”を探してみるの、作品を楽しむ上では良いかもしれない。

見る者の感情を揺さぶりにくるキャラクター達

脇を固める演者たちからも目を話す事が出来ない。悪徳プロモーター役にはエミネムファミリーの50セントが起用されており、ストリートで育った氏の眼光鋭いリアルな演技を堪能できる。また、意外なダークホースとしては子役のウーナ・ローレンスが驚異的な演技を見せている。あまり女性登場人物が多くない本作においても、彼女の演技は明らかに最高レベルだっと言っても過言ではないだろう。その他にも施設のスタッフ役として『28日後・・・』や『007』でもおなじみナオミ・ハリスがストーリーを引き立てる。そして主人公ビリーの人生を救ったトレーナー役として名優フォレスト・ウィテカーが、極めて安定感のある存在を見せつけている。勿論、ストーリーの根幹を担う役どころの妻役・レイチェル・マクアダムスの慈母の眼差しは、クライマックスでは一切スクリーンに写っていないにも関わらず、常にビリーの脇にいるかのような霊的な存在感を発揮している。

と、非常に濃いキャラクター勢も見どころの本作だが、中でも子役のウーナ・ローレンスは要チェックだ。2002年生まれの彼女の見せる表情は、ある種ぶっきらぼうなビリーと異なり実に豊かで説得力に富む。そしてかわいい。本作を見て、明らかに天才の彼女が今後どう活躍するかが楽しみでしょうがなくて仕方がないほどだ。

エミネムフォロワー的には涙ナシには見れない


楽曲面ではヒップホップ界のレジェンドと言っても過言ではないエミネムが複数の楽曲を提供。さらに本作ではエミネムは単に楽曲を提供するに留まらず、ジェイク・ギレンホールと一緒にトレーニングを行ったりしている。というのも、この『サウスポー』はエミネムの生い立ちからもヒントを得ているからだという。

今作の非常に重要なシーンで仕様されるエミネムの曲『Phenomenal』であるが、ミュージックビデオとして破格の予算を用いて制作されたということで、一時期話題になったのは記憶に新しい。そこで見せるエミネムのアクションは明らかに「本気」を感じさせるもので、こちらも合わせて見ておくとより一層本作を楽しめるだろう。

さて、エミネムといえば『8 Mile』で衝撃的な映画出演も果たしているが、本作とエミネムはどうしても切っても切れない関係にあると感じる。冒頭、『8 Mile』では大事なラップバトルの直前、ヘッドホンをして音楽に集中するエミネムから始まる。本作でも似たような状況から始まっており、この時点でそのデジャブ感に筆者は刻の涙を流しそうになった程だ。
そしてストーリーを下るにつれ、次々と明らかになるエミネムとビリーとの類似性。かつてのエミネムの楽曲では何回出てきたかもわからないエミネムの愛娘・ヘイリーとビリーの愛娘・レイラが被ってしまって、エミネムファンとしては涙腺崩壊待ったなしなのは間違いないだろう。

エミネムの半生をなぞるようにロクデナシな主人公・ビリーのスクリーンから垣間見える不器用な娘との接し方は、エミネムの『When I’m Gone』、『Mocking Bird』といったトラックを彷彿とさせる。作中、スクリーンから伝わってくるビリーの「なんで俺はこんなにも娘を愛しているのに、誰も分かってくれないんだ!」という心の叫びは、まさに『Hailie’s Song』でのエミネムの吐露と見事に重なって見える。ドラッグ、愛する者の死、栄光からの転落、裏切り、そして娘の存在。ここまでくると、『8 Mile』以降のエミネムの半生映画といってもあながち間違ってはいないかもしれない。

そしてクライマックスでは、『Phenomenal』のリリックにもあるように、ビリーが「怒り」という感情を封印して自由に動き回る様子が映し出される。是非、一度エミネムの楽曲を聞いてから映画を観賞する事をお勧めしたい。

「サウスポー」の真意とは

本作のタイトルからも分かるように、主人公・ビリーはサウスポーとなる。日本では、全人口に対して約12%の人間が左利きと言われているが、ボクシングの世界では約27%のボクサーがサウスポー=左利きスタイルを使用している。そのワケは、サウスポーが非常にオーソドックス=右利きに対して有利であるという事が、大きな理由の一つとなっている。その点については、作中でまざまざと見せつけられるので、よーく観察して欲しい。

ビリーは、作中において『コンバーテッド・サウスポー』として、サウスポーの猛特訓をコーチのティックに仕込まれる。
ティックは言う。「ボクシングは頭をつかうんだ」。
ダイナミックなクライマックス感のある側面が大きく注目されがちな本作だが、実はビリーが『サウスポー』となる過程をストイックに描いたプロセスが根底にある。

深夜の誰もいないジムで、コーチのティックがビリーにマンツーマンでトレーニングを行う。
「ワンツー・・・ワンツー・・・」「ジャブ・・・ジャブ・・・」。
静かに、しかし不屈の闘志を燃やしながら。

映画『サウスポー』は6月3日(金)、全国ロードショー。

『サウスポー』公式サイト
[リンク]

Artwork© 2015 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.

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記者:

洋画や洋ゲーが大好物。基本的になんでも好き。スペイン語を勉強中。

TwitterID: @106yoyogi

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