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古舘佑太郎 青春群像短編小説 第五回 サケ•サイエンス•フィクションクラブ

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酒を酌み交わしながらSF映画について熱く語ろうじゃないか。

2016.1.26 PM19:50
月がくっきりと渋谷の上空で浮かんでいる。日中、晴天だったせいで、街は完全に放射冷却されて、しっかりと冷え込んでいた。「SF界の永遠のルーキー」ことフルタチは、待ち合わせ場所へと急いでいた。

2016.1.26 PM20:00
待ち合わせ場所である、渋谷の楽器屋の前にたどり着くと、もうそこには先輩の姿が見受けられた。今夜のお相手「ベース侍」こと中尾憲太郎氏だ。フルタチは、彼をSF映画の師と崇め、絶大なる信頼を寄せている。中尾氏のことを密かに「歩くコバルト爆弾」と呼んでいることは、ここだけの秘密にしておいてほしい。
今回の対談は、道玄坂裏手に位置する人気店、焼き鳥屋「鳥升」にタイミングよく滑り込むことに成功し、そこでレモンサワーが二つテーブルに運ばれてきたとこからの会話を納めたものである。サケ•サイエンス•フィクションクラブ。クラブのラブはLOVEなんだぜ、へへっ。

2016.1.26 PM20:10
フルタチ(以下:フ) 「来てくれてありがとうございます。」

中尾憲太郎氏(以下:中)「今日フルに会うから、『ホドロフスキーのDUNE』観直そうと思ってたんだけど、時間なくて観れなかったんだよね。」

フ「あの作品を中尾さんに教えてもらって、まじでSF映画に対しての考えが変わりました。」

中「だろ?最高だよな『ホドロフスキーのDUNE』。」

フ「僕は、SF映画は歴史をおって、紐解いていかないといけないと思うんです。一つの作品だけじゃ語れないな、と。」

中「CGとか、いわゆる映像技術ってのがもろに作品に出るジャンルだからね。やっぱり、その時代その時代ごとに最先端の技術が使われて、その映画が歴史をどんどん塗り替えてくからね。『ターミネーター』の液体金属に然り、『ジュラシックパーク』とかね。小さい頃、映画館で初めて観て毎回ビックリしてたよ。」

フ「もはや殴り合いですよね。そういう意味では、『ホドロフスキーのDUNE』はフリーダウンロード的な存在ですよね。だって、幻の作品なのに、その後のSF映画の名作と呼ばれるような作品たちに完全に教科書として扱われてるじゃないですか。」

中「『STAR WARS』は特にそうだね。だから、フルに観てほしかったんだ、DUNE。デビットリンチの『DUNE-砂の惑星-』も好きだけどね、俺は。」
フ「自分に対しても気をつけてるって感じなんですけど、今『STAR WARS』かなり白熱してて、皆が語ってるじゃないですか。て時に、『STAR WARS』は凄い詳しいのに、他のSF映画はあんまり興味ない、みたいな人結構いません?自分も、まだまだ中尾さんに比べたらSFぺーぺーなんで、『STAR WARS』をなるべくは語らないようにしてます。『ホドロフスキーのDUNE』観てない奴はFUCK!って感じ。」

中「でも、フルめっちゃ『STAR WARS』語ってるやん」

フ「ガビーン(笑)…そうなんです。好きなんです、はい。」

中「だよな、最高だよな。」

フ「中尾さん、覚えてますか?二人で、何年か前に、お洒落なロティサリーチキン屋さんでワイングラス片手に気づいたらジェダイについて熱く議論してしまって。」

中「ああ、あったね。」

フ「最終的に、2時間ぐらい議論して気づいたら、二人して大声で”フォースの冥界”って連呼してたんですよ。ま、要は、何故クワイガンは一度死んだのに、フォースの冥界から帰って来れたのか、みたいな話をずっと大声でしてたわけですよ。それで、ふと僕が我に返っちゃって、恥ずかしくなったんです。大の大人二人が、お洒落なレストランの真ん中の席で”フォースの冥界”だの”アナキン”だの”クワイガン”だの。」

中「フルのせいで、オレも我に返ったもん。」

フ「その時の中尾さんの一言、一生忘れらんないですよ。」

中「なんて言ったっけ、オレ。」

フ「さっきまで大音量だったのに、ボソっと『”フォースの冥界”ってまじなんだよ…』って」

中「(爆笑)」

フ「『やっぱり偉大ですよ、あの作品は。だって、僕ら大の大人が、『ハリーポッター』や『ロードオブザリング』を熱く語ったりはあんまりしないじゃないですか。」

中「あ、でもさ、2000年代になるとさ、ファンタジーブーム来なかった?それこそ、『ハリーポッター』や『ロードオブザリング』とかさ。剣だったり魔法、城の世界。」

フ「そうですね。ちょっと最近ですけど『アバター』もファンタジー感ありましたよね。僕、実は『ハリーポッター』とか『ロードオブザリング』とかが小学生だったんで、タイムリーなんですよ。だから、今でこそ大人になってあんまり観なくなったけど、小さい頃は、めっちゃ観てましたよ。」

中「オレ、凄いファンタジー好きなんだよね。」

フ「ええ!?まじですか。凄く意外です。ビックリですよ。」

中「なんだよそれ(笑)どんなイメージなのか知らないけど、オレファンタジー大好きだよ。」

フ「多分、中尾さんのことを知っている僕ら世代のバンドマンたちは、これ聞いたら衝撃ですよ。だってこの前、年末一緒にライブやったじゃないですか。あの時、僕の知り合いの男の子がライブ来てくれて、僕らのステージ観てくれたんですけど、一曲目の『タンデロン』のイントロで中尾さんのベースの音が鳴った瞬間に、音圧凄すぎて、治療中だった前歯が折れたらしいです。そんな殺人的ベーシストがファンタジーを好むとは。」

中「アホか!(笑)」

フ「でも本当、そんなイメージです。面白そうなので、ファンタジーの部分もっと語ってください!」

中「凄く細かい話して良い?」

フ「どうぞ。」

中「あのオレね、教育大学付属の学校に通ってて、小学校中学校がエスカレート式の一貫だったのね。だから友達とか全然変わらないわけ。でも、中学校で新しく入ってきたヤツが、『テーブルトークRPG』って云う凄くマニアックなゲームを持ち込んできたの。で、それは剣と魔法の世界が舞台で、テレビゲームでもボードゲームでもなく、テーブルの上で出来る遊びだったんだ。4人ぐらいで一人ずつ役割を決めて、ひたすらサイコロ振ってドラゴンを倒したり、宝を見つけたり。オレら、それずっと学校でやってたんだよね、中学校三年間。」

フ「え、ずっとですか?」

中「うん、毎日。休み時間もやってたし、学校終わっても先生に怒られるまで放課後もやってた。」

フ「うわー。イメージと違いますね。僕のイメージでは、学校サボって、喧嘩して、ベースはストイックに練習して、みたいな。」

中「ううん。毎日テーブルゲームで魔術師とかになってダンジョンクリアしてた。オレ、バイクも車も乗らないし、タバコも吸わないし、あのね、ただのオタクなのよ。」

フ「その部分を皆に知ってもらいたいですよ。相当面白いですもん。その後もやってたんですか?」
中「いや、高校は4人とも皆散ったね。バラバラの学校に。」

フ「散った…。うわなんか切ない。その後もその人たちとは会ったり『テーブルトークRPG』やったりはなかったんですか?」

中「ないね。」

フ「でも、そのお友達も今日も、同じ空の下で今も生きてるんですよね?」

中「いやそうだろ!(笑)なんだよ、生きてるって(笑)」

フ「良い話だ。」

中「まぁそれもあって、オレは、ファンタジーも好きなんだよね。」

フ「そういえば、最近のおすすめ教えてくださいよ。」

中「前にも言ったけど、『 ALL YOU NEED IS KILL』は?」

フ「あ、まだ観てない!そうだ、忘れてた!」

中「『サボテンブラザーズ』は?」

フ「観ました。最高でした。やっぱり、『エルトポ』もそうですけど、なんか”カウボーイもの”の映画ってかなりSFって云うか宇宙と繋がりますよね。同じ開拓と云う意味で。」

中「SFでは人間が宇宙人と戦い、カウボーイはインディアンと戦うからね。ま、オレは、宇宙人とインディアン側を応援してしまうけどね。」

フ「スピルバーグではなんかありますか?『スーパー8』とか正直あんまりダメだったんですよね…。」

中「『ニューヨーク東8番街の奇跡』。もう絶対観てほしい。オレ最初から最後までずっと泣いてしまう。」

フ「わかりました、マスター。そういえば、今日一番聞きたかった話があります。中尾さんが、今回の『STAR WARS エピソード7』を劇場で観たときに、お父さんの事を思い出して涙が止まらなかったって。それは、どういう心境だったのですか?」

中「ああ、でもそれは二回目ね。一回目観た時は、普通に『STAR WARS』に感動して観てたんだよ。二回目の時かな、泣いてしまったのは。」

フ「どうされたんですか?」

中「いや、オレが小さい頃、よく親父に映画館連れてってもらってて、そこで色んなSF映画観させてもらったんだよ。それこそ『STAR WARSエピソード6』も一緒に観たし、『E.T』もそうだし、『ジュラシックパーク』もそうだね。それきっかけもあってオレはSF好きなんだと思うんだ。でまぁ、親父は5年前に亡くなっちゃったんだけど。」

フ「その時の思い出が蘇って涙されたのですか?」

中「いや、違うんだよね~。二回目劇場で観てたときに、一回目よりももっと落ち着いて観れるから、色んな乗り物とか、映画の細かいところまでが目に入るじゃない?」

フ「そうですね。」

中「そしたら、『あ、これ親父に観せたい!これも観せたいな!ここどう思うんだろう。』ってどんどん思いが重なっちゃってね。普通に、映画終わったら親父に電話して感想を言い合いたくなっちゃって。そしたら、もうダメだよ。ミレニアムファルコン出て来た当たりから、もう嗚咽が止まらなくてね(笑)」

フ「そういうことだったんですね。でも、やはり、『STAR WARS』がまず、親子の話みたいな所があって、それが脈々と受け継がれて行く。その今回はエピソード7ですからね。やっぱ只でさえ感慨深いですよ。」

中「ま、オレから言わせれば、これも”フォースの冥界”だな、親父との!(笑)」

フ「お父さんも、DVD版エピソード6のラストシーンみたいに若い頃の見た目を差し替えますか?(笑)」

中「それだけは、絶対に許さないわ!次あんな演出をされたら、ベースの低音で歯折ったろか!」

フ「ジョージに伝えておきます。」

中尾憲太郎
1974年生まれ。1995年に「ナンバーガール」でメジャーデビュー。バンド解散後は自身のバンド「クリプトシティ」をはじめ数々のバンドにベーシスト、プロデューサーとして参加している。

古舘佑太郎
ミュージシャン。ロックバンド・The SALOVERSを、2015年3月をもって無期限活動休止とする。現在、ソロ活動を開始。2015年10月21日アルバム「CHIC HACK」を発売。

http://www.youthrecords-specialpage.com

illustlation Tatsuhiro Ide

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