海洋アクションであり極限における人間ドラマでもある『白鯨との闘い』[映画レビュー]

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白鯨との闘い

今ではリゾート地として知られるマサチューセッツ州ナンタケット島は、かつて世界有数の捕鯨港でしたが、1820年、乗組員ほとんどが犠牲になるという捕鯨船エセックス号の海難事故が発生。その事件をもとに書かれたのが、あの有名なハーマン・メルヴィル『白鯨』です。しかし20世紀後半に、生還した船員の手記があらたに発見され、驚くべき事実が明るみに出ました。映画『白鯨との闘い』は、当時の膨大な資料を検証し、実話ながら超一級のエンターテインメントとして多くの読者を魅了、全米図書賞を受賞した同名のノンフィクション(ナサニエル・フィルブリック『白鯨との闘い』集英社文庫)を原作とした、巨匠ロン・ハワード監督の海洋冒険サスペンスです。

物語は、手記を書いた元船員のもとをのちの文豪メルヴィルが訪れ、封印した過去である事故の話を聞くという、映画オリジナルの場面で始まります。数年に渡る遠洋漁業をこなし、クジラをしとめて島の経済を潤す船員たちは島民の憧れの的。家族の期待を一身に受け、意気揚々と船出したエセックス号の乗組員たちの行く手には、思いもよらない恐ろしい運命が待ち受けていたのです…。

元船員が妻にさえ隠していた事実とは何なのか。大自然の驚異、複雑な人間関係、そして本能と理性との葛藤 - 情け容赦なく彼らを襲う困難の数々。未知なる冒険への期待と高揚感が、一転して絶望に変わったその瞬間。それらがなすすべもないほど圧倒的なスケールで大画面に叩きつけられます! 

主人公の一等航海士チェイスを演じるのは、『RUSH プライドと友情』でロン・ハワード監督と組んだクリス・ヘムズワース(『マイティ・ソー』)。漁師としてのキャリアは長いものの、地元生まれではないために船長になれず、経験が浅いのに家柄だけで船長になったポラード(『リンカーン/秘密の書』のベンジャミン・ウォーカー)と対立します。他に乗組員としてキリアン・マーフィ(『トランセンデンス』)や、新スパイダーマンのトム・ホランドらが出演。若き文豪メルヴィルは『スペクター』のQ役で大人気のベン・ウィショーが演じます。

捕鯨船と同サイズのレプリカを作り、実際に海に出て撮影もしたというこの作品。暗く狭苦しい船内の描写や、小さな木のボートでいかに巨大な獲物を捕らえ、どうやって鯨油に加工したのかなどが、リアルで臨場感たっぷりに描かれています。特に巨大クジラの登場シーンは息が止まるほどの迫力です! 脚本を読んだヘムズワースがハワード監督に熱烈に推薦し、監督及び製作陣の誰もがとりこになったという原作では、映画で描かれなかった驚愕の事実も満載です。海洋アクションであり、極限における人間ドラマでもある『白鯨との闘い』、ぜひ映画と原作の両方をお楽しみ下さい!

白鯨との闘い

【著者プロフィール】♪akira
WEBマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」(http://www.targma.jp/yanashita/)内、“♪akiraのスットコ映画の夕べ”で映画レビューを、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」HP(http://d.hatena.ne.jp/honyakumystery/)では、腐女子にオススメのミステリレビュー“読んで、腐って、萌えつきて”を連載中。AXNミステリー『SHERLOCK シャーロック』特集サイトのロケ地ガイド(http://mystery.co.jp/program/sherlock/map/)も執筆しています。

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