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松永経産次官納得の更迭人事

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永田町異聞

今回は新恭さんのブログ『永田町異聞』からご寄稿いただきました。

松永経産次官納得の更迭人事

今回の経産省首脳更迭人事については、菅首相と海江田経産相の対立など、様々な見方ができようが、松永和夫事務次官の悪知恵という観点から筋を追っていくのも一興だろう。

とりあえず物語のスタート時点を、5月20日としたい。この日、安倍晋三氏がメールマガジンでデマ情報を流し、記者を集めて説明した内容をおさらいしておこう。

福島第一原発で3月12日19時04分に海水注入を開始し、官邸に報告したところ、菅総理が「俺は聞いていない!」と激怒したため、一時、海水注入を中断する羽目になった

というのがおおよその内容だ。

これについてはのちに、福島第一原発の吉田所長が海水注入を続けていたこと、すなわち中断していなかったことを明らかにし、ニセ情報と確認されている。

この話をでっち上げたのが松永氏だったといわれる。月刊『選択』7月号の「罪深きはこの官僚」シリーズに、こんないきさつが書かれている。

◇原発事故でエネルギー政策の見直しは必至とみた松永は官僚主導でエネルギー政策の方向性を決めるべく「エネルギー政策賢人会議」(通称)などを立ち上げ、超多忙なジャーナリストや財界人をメンバーに選んで、事務局の経産官僚で仕切ろうとしたが、菅官邸がそうした官僚の振り付けを拒否する姿勢を示したため、菅政権打倒にスイッチを切り替えた。

これまで原発推進で二人三脚を組んできた自民党に、福島第一原発の海水注入指示をめぐる「デッチ上げ情報」を提供。あろうことか、時の首相に対し半ば公然と弓を引き、政争の片棒を担いで見せたのである。◇

8月5日の日経新聞に、菅首相の経産省首脳に対する怒りが次のように書かれている。

◇首相は「経産省は俺をはめようとした」「あの役所の『菅降ろし』はすさまじい」と再三にわたってもらしていた◇

この記事を信じるならば、“松永憎し”という感情が菅首相に渦巻いていたということだろう。

その首相の厳しい視線を感じ取った松永氏は、首相主導で自らが更迭され、後任人事にまで介入されることを恐れた。そうならないようにするには、海江田大臣を納得させる人事案をつくり、官邸の機先を制して人事を断行する必要があった。

海江田大臣が納得するためには、松永氏、寺坂氏(原子力安全・保安院長)、細野哲弘氏(エネ庁長官)の首を差し出す必要があるが、夏の定期異動時期でもあり、後任事務次官に松永氏の息のかかった安達健祐経済産業政策局長を予定通り就けることができれば、辞めても影響力は保持でき、いずれは、自らのゴージャスな天下りポストも確保できる。そう、松永氏は読んだに違いない。

海江田大臣は8月2日に首相官邸に赴いてこの人事案を説明し、首相から「任せる」と言質をとっていたという。ここまでは、松永氏が思うとおりの展開だった。

ところが、8月4日の朝日新聞朝刊一面に、首相が経産省三首脳を更迭する方針だという内容の記事が掲載された。

「菅首相は三首脳を更迭する方向で海江田経産相と最終調整に入った。原発事故の一連の対応やシンポジウムをめぐる『やらせ』問題の責任を問う目的だ」(記事の前文要約)

菅首相の側近から聞き込んだ情報で書かれた記事だろう。結論は同じだが、菅首相が海江田氏に命じて更迭人事をさせるという記事の筋立てに合点がいかない海江田氏が

「あまりにひどい。腹に据えかねる」「首相が決めたわけじゃない。私が決めたんだ」(日経)

と憤ったのも、うなずけなくはない。

朝日のスクープという形になってしまっただけに、日経など他紙が海江田氏の言い分を強調して、朝日の記事の価値を下げようとするのも、よくあることだ。

さて、菅首相を更迭人事の主役に据えてスクープをものした朝日が、「自分が決めた」という海江田氏の主張をどのように翌日の紙面で取り扱っているかにも注目してみよう。

真相はともかく、実に巧みな筋書きを考えたものである。記事の概略はこうだ。

◇海江田氏は「自ら主導した更迭劇」の演出にこだわった。朝日新聞が更迭人事を報じた4日朝、経産省内で緊急会見を開き、「…人心一新は1か月前から考え、事務次官に指示していた」と切り出した。◇

まず、海江田氏の“演出”という表現で、そこになんらかの野心があるように読者を誘導したうえで、次のように代表選の戦略と結びつけた。

◇7月7日の国会答弁で辞任の意向を表明。閣内でいち早く首相と一線を画して代表選に意欲を見せ、「反菅」」勢力から有力候補としてにわかに注目された。ところが中部電力などの「やらせ」問題が発覚。国会で「いつ辞めるのか」と攻められて号泣する姿もみせ、親しい議員からも「辞め時を逸した。これでは菅さんと同じだ」との嘆きが漏れた。
せっかく切った「辞任カード」の価値が下がり続ける。そこで先手を打って経産省首脳を切り、原発事故対応や「やらせ」問題に決着をつけたことを内外に示すことで、代表選に向けて「指導力」をアピールする作戦に転じたのだ。◇

筆者の勘に狂いがなければ、現状では海江田氏が代表選に出て首相の座を狙う心理状態にはないだろう。代表選のために“指導力”をアピールする作戦として3人の首を切るというのも、後任人事からみて説得力が乏しい。

先述したように、首相の人事介入を防ぎ、経産省の組織防衛をはかるために松永氏らが海江田氏を誘導したとみるほうが自然ではないか。

いずれにせよ、問題山積の経産省から足を洗える松永氏らにしてみれば、首相が決めようと、海江田氏が決めようと、OBを含めた経産省一家が安泰であれば、一時的に更迭の汚名を着せられても“ノープロブレム”だろう。

ほとぼりが冷めれば、人のうらやむ天下りポストにおさまり、延々と続く放射能汚染の苦しみを他人事のようにながめているに違いない。

つまるところ、朝日新聞の「首相が経産省3首脳更迭」の記事などは、スクープでもなんでもないのである。

執筆: この記事は新恭さんのブログ『永田町異聞』からご寄稿いただきました。

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