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【インタビュー】あえてガイドブックからはずれる旅を/半年仕事・半年旅人 村上アシシ

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発売直後にAmazonの「Kindle本 海外旅行」部門でランキング1位を獲得した村上氏の新著『ロジ旅 ひとりでできる! 失敗しない海外旅行術 [Kindle版] 』。仕事は一年の半分、残りの半分は旅に出るという村上氏ならではのメソッドが詰まった同著は、まさにかゆいところに手が届く旅の教科書と言える。旅の計画を「Where(どこ)」や「How much(いくら)」からではなく「Why(なぜ)」から始めることを提案するのはなぜか? 執筆秘話とともに、その想いを語っていただいた。

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日本人の約8割は一度も日本から出たことがない

—『ロジ旅』を書こうと思い立ったきっかけは?

最大の目的は、“旅人の底上げ”ですね。今、日本人全体のパスポートの保有率は約24%。20年前は50%近かったのに、すっごい減ってるんです。背景には日本のGDPが頭打ちになっていることや、旅行以外の楽しみが増えていることなど色々ありますが、いずれにしろ、このまま一度も日本を出たことがない人が増えていくのには、いち日本人として僕は危機感を持っています。みんなにもっと、海外に目を向けてほしい。10代、20代の若いうちに世界を経験して、海外旅行ってこんなに面白いんだっていうのを、たくさんの人に知ってもらうためにこの本を書きました。

僕、よくネットで炎上するんですよ(笑)。“金儲け” だの “炎上商法” だの叩かれるんですが、ぶっちゃけると本の印税なんて、本業のコンサルティング業と比べると雀の涙です。10万字の原稿を必死になって仕上げるより、コンサルで現場出てる方が100倍稼げるんです。これ以上お金の話するとまた炎上するんでやめますが(笑)、そういう費用対効果の話を抜きにしてでも、純粋に僕の10年間の旅人生活で培った海外旅行のノウハウを一人でも多くの人に教えたい思いで書き上げたんです。

—海外に行く人は何度も行き、行かない人は全く行かないという二極化も耳にします。

「ニッパチの法則ですね。コンサルティング業界でもよく使う言葉なんですが、ようは全体の2割の人たちで、海外旅行の8割をカバーしているということです。残りの8割の人たちは、ほぼ海外旅行に行かない。

メディアで、若者の◯◯離れ、というワードがよく出てくると思うんですが・・・無関心だったり、何事も手のひらのスマホの中で済ませてしまったり。現場に行くっていうことをそこまで重視しない傾向が若者に増えてきてるのかな、と。でも、スマホで見て『マチュピチュすごいな〜』と思うのと、実際に行って見たマチュピチュの感動っていうのは比較にならないもの。

もちろん、実際行くとなれば何十万円もかかりますし、時間もかかる。英語やスペイン語が話せなくて不安だとか、治安が心配とか、障壁がいろいろあると思います。その障壁を下げる超具体的なノウハウを、この本で伝えたいと思ったんです。

具体例のないノウハウは薄っぺらい

—たしかに、エピソードも予算も、ものすごく具体的に書かれていますよね。

「防犯対策などは当然、いろんなガイドブックにも載っているんですが、『気をつけましょう』じゃ結局役に立たない。失敗エピソードを超具体的に書いて、もっと地に足のついたものにしたかったんです。

例えば、『ロジ旅』に書いた偽警察に遭ったエピソード。あれなんかはもう、実際の手口がそのまま書いてあるから、同じような状況に遭遇したときに、『あ、このパターン知ってる』ってわかるじゃないですか。

航空券だって、手配が1週間ずれただけで急に値段が変わることもあります。24時30分発の航空券を買ったら、思ったのと1日ずれていて買い直し、何万円か損をした人もいます。これから旅をする人にはもう、そういうばかばかしいミスはしてほしくないんです。

—初歩的なミスや知識のなさで消耗するはずの体力と気力を、もっと違うところで使って欲しいということですね。

「その通りです。僕の周りには旅好きや旅の達人が多くて。彼らのブログとかSNSを見ていると、まあ本当にみんな、旅先でトラブルに巻き込まれてるんですよ(笑)。それは僕自身も例外ではなくて、もちろんそれも含めて旅なんだけど、みんな失敗して初めて後悔するわけです。

僕や知り合いの旅人たちが積み上げてきた失敗の具体例と、その防止策をみんなに伝えて、旅に行きたいけれどお金や手配の面で中々踏み切れない人にも旅に出てもらう。既に旅が好きな人は、改めてこの本でノウハウを復習して旅人レベルをあげてもらう。そうやって、日本人の旅人の底上げを図りたいんです。」

最初はもっとコンサル臭の漂う本だった

—予算の具体例も絶妙ですよね。例えば飲食費の基準が『朝食はホテル代に含まれたブレックファースト、昼食は地元の屋台やファストフード、ショッピングモールのフードコートなどで済ませ、夜はリーズナブルなレストランを選んで、ビールやワインをたしなみつつ(2~3杯程度)、地元料理を食べる』とか。

今回の本は、旅の達人や編集のプロなど10人以上のブレーン陣に原稿を見てもらったんです。そこでその人の立ち位置から、ああでもない、こうでもないとフィードバックをもらいました。そういうみんなの知見を凝縮したからこそ、絶妙な具体例に落とせたのかなと。

予算の基準についても同様で、ターゲットはミドルクラス。2つ星〜3つ星クラスのホテルを基本にしつつ、貧乏旅行ならホステルワールドというサイトがあるよ、とか。4つ星ホテルに泊まりたいならチップや宿泊費でプラスこれだけかかるよ、とか。そういった枝葉の情報もケアしつつ、基本の値段をズバッと書く、というところはこだわりました。

—完成版は、最初に書かれたものとかなり違うんですか?

「大まかな構成やコンセプトは変わっていません。でも実は最初、前半部分はもっとコンサル臭が漂ってたんです(笑)。僕の周りだと『コンサルと旅を融合させる』なんて、どストライクなんですよ。」

—どストライクなんですか!?

「本当にそうなんですよ。コンサル業界の人間にとって『旅とはプロジェクトであるーたしかに! まさに! こんな本待ってたよ!』って人は周りに多かったです。でも、コンサル業界とは無縁なブレーン陣からは、『こんな本、論理的すぎて読めないよ!』という駄目出しをもらって(笑)。

世の中的には、『プロジェクトって何?』という人も多いわけです。『したがって〜』とか『なぜならば〜』とかコンサルタントが経営層に提案するような文章、すべての事象に理由がついてくるみたいな文章は好まれない、と。文章を読みやすくするためにも、一般受けする文章のテイストに修正する作業は結構頑張りましたね。」

予算から入る旅は、目的がしょぼくなる

—「Where(どこ)」や「How much(いくら)」からではなく「Why(なぜ)」から旅を始めるという提案が印象的でした。

「もともとこの本では、旅の予算を立てる方法って2パターン用意してたんですよ。1案目は先に旅の目的を決めてからトップダウンで落とし込んで、最後に予算を積む方法。これが実際本で紹介されている内容です。

とはいっても多くの人にとって休める期間は決まっていて、予算もある程度限られるじゃないですか。予算ありきでボトムアップで計画する方法を2案目で用意していたんです。これはたしかに地に足のついたやり方なんですが、それをやると絶対に旅の目的がしょぼくなるんですよ。それって、パッケージツアーとほとんど変わらないじゃん! という話になって。それで2案目のくだりはバッサリ切ったんです。」

—たしかに、はっきりした目的があれば、予算や時間を打破しようという気持ちも生まれそうですよね。

「そう。予算がないなら貯めろ! 休みが足りないなら上司に交渉しろ! ということです。でも、目的のレベル感は人によって全然違っていいと思うんですよ。僕みたいにワールドカップまでに32か国踏破というぶっ飛んだ目標を立てる人もいれば、ただリゾート地に行って癒されたいという人もいる。あとがきにも書きましたが、100人いれば100通りの答えがあっていいんです。

僕は旅もかなり理詰めで考える方ですが、旅人って本来自由人が多いから(笑)。現地でトラブルがあってなんぼ、トラブルも楽しみますっていう人も多いですよね。そういう人は当然、そんなに準備に時間をかけたって絶対計画通り行かないんだから、と思うわけです。それはそれで、その人に合った旅のスタイルだと思います。

でも、社会人ならやっぱり出発日があって、帰国日がある。どの都市に何日間いて、何を見て、というのは事前にある程度決めたいですよね。そのとき役立つ「型」は絶対あって、その方法論を提供したかったんです。

それが旅程表だったり、5W2Hで旅の計画を立てる方法だったり。それをどこまでミリミリやるかはその人次第ですが、『Why(なぜ)』をびしっと決めることで、必要以上に状況に流されることは減ると思います。より達成感が味わえる旅になるでしょうね。

—ただ単に『旅行に行きたいんで有給とります』より、『◯◯したいので』という目的があった方が有給もとりやすくなりそうですね。

「まさにそう。“次のロシアワールドカップを現地で応援したいから”という理由で2018年の6月は休みをくださいって既に上司に言っている人が、実際僕の周りにはいっぱいいるんです。上司もワールドカップじゃ仕方ないか、となる。それは、ワールドカップのような4年に一度のイベントでなくたっていいんです。『リオのカーニバルをどうしても一度見てみたいから2月に休みをください!』でもいい。『Why(なぜ)』が明確だと、単なる休暇ではなくて夢やミッションのように感じられて、旅のチャンスを逃しにくくなるという側面は絶対にありますね。

あえてガイドブックからはずれる旅を


トゥーロンのレストランにて

—そうはいっても、やはり日本人は自分で計画を立てる個人旅行より、ガイドブックをなぞる旅やパッケージツアーを好むように感じます。

「成功例とかマニュアルとか、そういったものが好きなんですよね、きっと日本人は。人気のあるものを求めるのは、日本人の心理かもしれません。でも、あえてガイドブックからはずれる旅というのも、意外と面白い。自分でノウハウ本を出版しといて、あれですけど(笑)。」

—ロジ旅の場合は、計画の仕方や防犯対策の具体例が書かれているのに対して、市販されている旅行ガイドブックはおすすめの観光地が羅列されているイメージがあります。

「フォローありがとうございます(笑)。そういうガイドブックに書いてある鉄板の観光地ばかり行くのも味気ないと僕は思うんです。具体例をあげると、フランスの地中海沿いにトゥーロンという町があるんです。そこでサッカーの小さな大会があって行ったことがあるんですが、有名な観光地という感じではないし、英語をしゃべれる現地人も少ない。地球の歩き方にも載ってなかった。

なんだけれど、そこがすごくよかったんですよ。ヨットハーバーにヨットがダーッと並んでて、海もすごくきれいだし、レストランもかなりリーズナブル。スーパーでワインのボトルを買うにしても安いもので2〜3ユーロで買える。なんだこの町は! と思いましたね。

トゥーロンは現地人御用達のリゾートなんですが、そういうガイドブックに載ってない町でも、いいところはあるんです。」

—そうやってガイドブックをなぞらない、個人旅行の醍醐味とは何ですか?

「僕は、ずっとレールに乗っかっていた人間なんですが、28歳のとき会社を辞めて独立して、ブレイクスルーしました(笑)。プロジェクトに入っているときはある程度制限がありますが、そうでないときは、明日何してもいいんですよ。突然海外に行ってもいいし、ずっと寝ててもいい。明日の可能性が無限大なんですよ。

それって旅でも一緒で、個人旅行だと何をしてもいいじゃないですか。観光が全てではなくて、疲れてたら部屋にこもって本を読んでてもいいし、夜は気晴らしに地元のバーに繰り出してもいい。“明日は何しよっかな?”という自由って、それだけでワクワクしますよね。そういう非日常における本当の意味での自由ってのが、個人旅行の醍醐味だと思います。

半年旅人ならではの旅の裏技あれこれ

—『入国審査には白いYシャツ』と書かれていましたね。

「これは、僕以外にもいろいろな人が言っていて、旅の上級者にとってはもはや常識ではあるんですが・・・。身なりを整えておくと、入国審査で不必要に怪しまれないというテクです。もちろん糊のきいたパリパリのやつじゃなくて、色も白じゃなくても大丈夫。襟付きのシャツを着ているというだけで、違うと思いますよ。」

—書籍の中では特に航空機移動について詳細に書かれていますが、ストップオーバー(途中で乗継地に24時間以上滞在すること)におすすめの地はありますか?

香港やシンガポールですかね。香港なら夜景を見て飲茶を楽しむ。シンガポールならマーライオン見て海南鶏飯(チキンライス)食べて。利便性も高い街だし、さくっと観光するのに向いてるんじゃないかと思います。あとは、ドバイ、アブダビ、ドーハあたり。短い時間でも、降り立っただけで異国情緒を感じられるのが、中東の国の魅力です。」


シンガポールにて

—防犯対策も厚めに解説していますが、旅先で話しかけてくる、怪しい人と親切な人との見分け方ってありますか?

「基本的に、相手から話しかけられた場合は関わらない方がいいですね。特に観光地とか空港とかで話しかけてくる現地人は、警戒した方がいいです。明らかにこちらが観光客だとわかってますから。現地の人と交流したいなら、自分から話しかけるのが一番。オープンなバーのカウンターとかは話が弾みやすいですよ。

でも、いくら自分からとはいっても、空港で見知らぬ人に荷物を見ててほしいと頼んだりしないでください。実際そうして全部持って行かれちゃった友人がいるんで(笑)。」

—TABIZINE読者に、お土産探しのアドバイスを!

「僕は、これぞと思うお土産があったら、その場で買う。後にしない。だいたい、他でも売ってるだろうと思ってたら売ってなかったり、また来ようと思ってたら時間がなくなったりするものなので。

やらぬ後悔よりやる後悔。やらなかった後悔って、後々絶対引きずるんですよ・・・。それから、本にも書きましたが、ステッカーなど各国で必ず買うお土産を決めて集めると楽しいですね。


各国のお土産ステッカーを貼ったトランク

—最後に、個人旅行だからこその「人との出会い」エピソードを聞かせてください。

「ドイツにサッカーを見に行ったときに、ケルンで『ホテルがどこも満室で困った!』ってツイートをしたら、日本語を話せるドイツ人がいろいろアドバイスをくれたんです。彼のタイムラインを見てみると怪しくなかったんで(笑)、実際に会って、最終的には彼の家に泊まらせてもらいました。


ドイツにて

彼とは今でもつながっていて、僕がドイツに行くときはもちろん必ず会います。彼の日本語ツイートを添削したり、彼が日本に来たときは一緒に食事をしたり。しかもそれがどんどん広がって、ブンデスリーガ(ドイツ連邦共和国のプロサッカーリーグ)を観に行くサッカー好きの知り合いは、ドイツに行くとたいてい彼と会う、というくらいに輪が広がってるんです(笑)。

『ロジ旅』ブレーンの黒岩さん(世界248の国と地域を全踏破した旅人)との出会いも旅先でした。2007年にアジアカップでマレーシアに行ったときに空港で出会ったんです。

実はそのとき、すっごいトラブルが起きて。僕らは3位決定戦を見るためにインドネシアに行く予定だったんですが、そこにいた日本人十何人が『その空港はアライバルビザがとれないので日本人は飛べません』て言われたんです。

いやいや、8時間後にキックオフなんですけど(笑)って、そこから始まったんですよ、リアルな『24(トゥエンティフォー)』の世界が。本当にドラマでしたよ。中には仕事で来ているライターの人もいたんです。みんなで運命共同体になって『どうする!?』って考えて、調べて、最終的にはチケットを破棄してジャカルタ乗り換えで行くことにしたんです。

それでも、乗り換え便はインドネシア国内のローカル線だからここ(マレーシア)では手配できない、ジャカルタに行ってから手配しろと言われて。でも行ってみたらタイムラグで席が埋まっていて全員は乗れないと言われ、パニックに(笑)。限られた乗り継ぎ時間、交渉に次ぐ交渉でがんばったら、どうにかビジネスクラスに入れてもらえたんです。

で、空港に着いて、走って、荷物を持ったままタクシーに飛び乗ってスタジアムに直行して、キックオフ5分前にギリギリ到着できました。席に着いたら国家斉唱(試合前のセレモニー)という劇的なタイミング。結局その試合は負けたんですけど、一生忘れられない経験をしたと思いますね。

そこで出会った人たちとは今でも連絡をとってます。その中でも大阪在住の知人はよく僕が関西に行く時に泊めてもらってます。もう家族ぐるみの付き合いですね。非日常で出会った人たちって、意外と一生の友だちになったりするもんですよ。

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「村上アシシ」プロフィール

(C) Atsushi Murakami

村上アシシ/本名:村上敦伺(むらかみあつし)
1977年生まれ、北海道札幌市出身。職業は経営コンサルタント・著述家。2009年から2010年にかけて、南アフリカワールドカップ出場32か国を訪問し、『世界一蹴の旅』(双葉社)という書籍を上梓。「半年仕事・半年旅人」のライフスタイルを2006年から継続中。サッカー日本代表が出場する国際大会は毎年参戦するコアサポーター。

著書:『ロジ旅: ひとりでできる! 失敗しない海外旅行術 [Kindle版]』、『ブラジルワールドカップへの行き方 [Kindle版] 』、『日本代表サポーターを100倍楽しむ方法』(From One)、『世界一蹴の旅 サッカーワールドカップ出場32カ国周遊記』(双葉社)
ブログ:http://atsushi2010.com/
フェイスブック:http://www.facebook.com/atsushi.murakami
ツイッター:http://twitter.com/4jpn

[Photos by Atsushi Murakami&shutterstock.com]

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