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江戸時代の餅の調達法は4通り。とんでもない方法で餅つきする男も?

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正月といえば、おせち料理にお雑煮が付き物。お雑煮には餅が欠かせないが、江戸時代も正月用の餅を用意した。落語には、とんでもない方法で餅をついた男が登場する。それは、江戸時代の餅の調達法に起因するのだが……。連載【江戸の知恵に学ぶ街と暮らし】
落語・歌舞伎好きの住宅ジャーナリストが、江戸時代の知恵を参考に、現代の街や暮らしについて考えようという連載です。江戸時代の餅の調達法は金の掛け方で4通り。予約制もあった

古来から餅は、祝いの食べ物だ。今でもそれは変わらない。最近はあまり見かけないが、家を建てるときに上棟式で餅を配る習慣もあるほど。たしか三谷幸喜さんの映画「みんなのいえ」でも、上棟式で餅をまくシーンがあった。新年を祝う正月に食べるのにふさわしいのは、やっぱり餅だろう。

さて、江戸時代に正月用の餅を用意する方法は、参考資料によると4通りあったという。
武士や寺社、豪商のような使用人がいるところでは、使用人が餅をついて用意した。これが1つ目。
使用人を抱えていないふつうの江戸っ子は、餅つき職人に家に来てもらって餅をつかせるか、餅を買うかだ。

この時期だけ注文に応じて餅をついて回る職人がいて、餅米を蒸したり餅をつく臼や杵などの道具一式を持参して、家の前でついて回った。これが2つ目で、「引きずり餅」という。冒頭の浮世絵は、引きずり餅の様子が描かれているようだ。景気づけになるので、裕福な商人などの需要もあったという。

3つ目が、菓子屋に注文して餅をついてもらう「賃餅(ちんもち)」という方法。引きずり餅も賃餅も、注文が殺到するので、12月15日を過ぎると注文を受け付けなかったという。今でいう予約制のシステムか。
4つ目が、正月用品などを売る「歳の市」で餅を買う方法。これが一番安上がりだったようだ。

引きずり餅や賃餅は、12月15日からつき始め、年末のピーク時になると、夜明け前の朝早くから夜遅くまで、餅つきが続いたという。落語「尻餅」では、とんでもない餅つきが始まる

さて、落語に登場するとんでもない餅つきとは……。
貧乏長屋に住む夫婦。亭主が甲斐性なしで、年末になっても餅の用意ができない。近所は餅つき屋を呼んで景気の良い音をさせているのに、みっともないと嘆く女房に、亭主は金がないから仕方がないという。

それでも愚痴る女房に、「それなら餅つきの音だけでもさせよう」と亭主が言いだし、夜中になったら女房の尻を叩いてペッタンペッタンと音をさせることになった。

夜中に女房に起こされた亭主は、そっと家の外に出て、「餅つき屋でござい」と大騒ぎをしてわが家の戸を叩く。亭主と餅つき屋の二役をこなし、もち米を受け取って、蒸しては餅をつきはじめるフリをする。落語では、このやり取りを面白く演じて大いに笑いを取るところで、落語家は両手をうまく叩いて餅つきの音をさせる。

一方、尻を叩かれる女房のほうは痛くてたまらない。残りを聞くと、亭主は「あと二臼」というので、思わず「あとの二臼はおこわにしてもらっておくれ」。

もち米を蒸したままの「おこわ」にして、もうつかないでくれという“サゲ”だが、なんとも馬鹿馬鹿しい落語ではないか。

【画像1】十二月のてい 出典:「天和長久四季あそび」(画像提供/国立国会図書館ウェブサイト)

江戸の十二月は正月の準備で忙しく、上の絵(画像1)の右上に描かれた「煤払い(すすはらい)」や左側に描かれた「餅つき」、右下に描かれた「正月の物売り」などが風物詩だった。
煤払いや歳の市など「正月事始め」については、同じ連載の『落語「御神酒徳利(おみきどっくり)」から探る 江戸時代の正月事始め』に詳しくまとめているので、こちらも参考に。●参考資料
・「浮世絵で読む、江戸の四季のならわし」赤坂治績/NHK出版新書
・「江戸のくらしの春夏秋冬」歴史の謎を探る会編/河出書房新社
・「ヴィジュアル百科 江戸事情 第一巻生活編」NHKデータ情報部編/雄山閣出版
・「落語ハンドブック改訂版」山本進編/三省堂
・古文書塾/藤澤茜講師「浮世絵を読む」の資料
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/12/26/103352/

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