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Album Review: 『Jacaranda en Flor』タンゴのエッセンスを持ちながらもオリジナリティを持った楽器と楽器のダイアローグ

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 タンゴといえばバンドネオンというイメージが強いが、本作はハーモニカとピアノのデュオという少し珍しい作品である。日本でも活躍するアメリカ人のハーモニカ奏者ジョー・パワーズと、オルケスタ・アウロラの他様々なセッションに引っ張りだこの青木菜穂子。青木のオリジナル曲の他、フリアン・プラサやアンセルモ・アイエタといったレジェンドたちによる古いタンゴの名曲、そして現代フォルクローレを代表するピアニストであり、青木の師匠のひとりでもあるリリアン・サバのナンバーでアルバムが構成されている。ちなみに、タイトルにあるジャカランダ(ハカランダ)とは、初夏になると薄紫の美しい花を咲かせる木のことで、アルゼンチンのシンボルのひとつでもある。

 アルゼンチンにはウーゴ・ディアスという骨太な演奏で知られる巨匠がいた。実際ジョーは彼の影響を強く受けているということだが、そのプレイはもっと洗練されて都会的。とはいえ迫力は十分だし、技巧も情緒も持ち合わせているという印象が強いので、まったく申し分ない。よくタンゴではバンドネオンが使われるが、ジョーはハーモニカ一本でバンドネオン以上の役割を果たすのだ。一方の青木のピアノは、詩情的で緩急も自在に弾き分け、ハーモニカの響きに寄り添っていく。タンゴといっても、型にはまったものではなくもっと自由だ。スタンダード・ナンバーのようなキャッチーなメロディラインも多いし、時折ジャジーなインプロヴィゼーションを披露したりもする。タンゴもフォルクローレも、そしてクラシックやジャズまでも咀嚼しながら、清冽なピアノを聴かせてくれる。

 そして、そんな二人の密に絡み合うアンサンブルは、全体のトーンは凛としながらもしなやかで、どこか品のいい色香のようなものが漂っている。タンゴのエッセンスを持ちながらもオリジナリティを持った楽器と楽器のダイアローグ。そんな新しい感覚のインストゥルメンタル作品だといえるだろう。

Text: 栗本 斉

◎リリース情報
『Jacaranda en Flor』
ジョー・パワーズ&青木菜穂子
2015/05/01 RELEASE
1,944円(tax incl.)

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