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TPPで得をする人、損をする人

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 経済ニュースというと難解なイメージがあって、苦手意識を持っている人が多いかもしれません。
 経済ニュースが難しいと思われがちな理由は、それらが「経済の基礎的な知識」を受け取り手がわかっている前提で構成されているから。逆にいえば、それさえわかっていれば、経済ニュースはどんな人でも理解できます。

 では「経済の基礎的な知識」とはどのようなものなのか。今回は『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社/刊)の著者、塚崎公義さんにお話を聞き、それらの知識を交えて、「TPP」「オリンピック景気」といった時事トピックを解説していただきました。

――塚崎さんはこれまで経済の入門書や教科書のような書籍を数多く執筆されてきましたが、この本を執筆する際に気を付けたこと、これまで書いてきた入門書と違う点、執筆の経緯などを教えていただけますか?

塚崎:私はこれまで、難しいことを平易にわかりやすく説明することを心がけて来ました。多くの入門書を書かせていただけたのも、出版社の方々がそれを認めてくださったからだと思っています。
今年始めに出版された『増補改訂 よくわかる日本経済入門』も、おかげさまで多くの読者から「わかりやすい」というコメントを頂戴しましたが、中には少数ながら「それでも自分には難しくて理解できなかった」という方もいらっしゃいました。
そこで、「この方にわかっていただける本を書こう」と思い立ち、『日本経済入門が読めるようになるための経済の本』という題名で出版社に打診し、宝島社からご承諾いただいた、というのが経緯です。
というわけですから、「世界でいちばん」か否かはわかりませんが(笑)、とにかく「わかりやすい」本ですから、経済のことを全く知らない人、他の本を読んでよくわからなかった人に、是非お読みいただきたいと思います。

――海外ではつい最近まで中国のバブル景気が注目を集めていましたが、その景気が一気にしぼんでいきました。日本でもバブルにわいたあと、長い間低迷しましたし、こうした事例はたくさんあります。そもそもバブルとは一体なんでしょうか。

塚崎:バブルというのは、土地や株の値段が、経済の状態から説明できないほどに高くなり、その後暴落する(バブル崩壊と呼びます)、という出来事です。
バブルは大きく分けて二通りあります。人々が「バブルだ」と知っている場合と知らない場合です。バブルだと知っていても、「明日は今日より値上がりするだろうから、今日買って明日売ろう」と思う人が多ければ、土地や株は値上がりを続けます。昔のバブルはこうした「バクチ」が多かったのですが、最近ではそうした状況になれば政府がバブルを潰しますから、この手のバブルは最近は少なくなっています。
最近のバブルは、人々がバブルだと気付かない間に大きくなって行くものです。たとえば日本のバブルの時には、「日本経済は素晴らしい。世界一素晴らしい経済なのだから、地価や株価が高いのは当たり前だ」と考えて土地や株を高値で買っていた人が多かったわけです。こうしたバブルは、人々がバブルだと気付かないので、世界中で時々発生するのです。
私たちが生きている間に、また日本でバブルが起きるかも知れません。そして、バブルが起きても人々はバブルだと気がつかないでしょう。結果としてバブル崩壊で損をする人が出て来るはずです。そうした目に遭わないために気をつける事として、一つだけ覚えておいて欲しいのは、「いままで株式投資に全く興味を持っていなかった人々が、素人が儲けた話を聞いて自分も儲けようと考えて株を買っている」時には、その流れに参加せず、じっと見ていましょう、ということですね。初心者ほど、周囲の初心者の流れに飛び乗ってしまう人が多いので、気をつけましょう。

――日本では2020年の東京オリンピックに向けて好景気が続くともいわれていますが、本当に私たち一般市民が実感できるレベルの好景気はやってくるのでしょうか。また、オリンピックが終わった後の日本経済はほとんど語られることがありませんが、どのようなことが起こるのでしょうか。

塚崎:今の景気は、株を持っているお金持ちが潤っていることと、失業率が減ったので失業していた人が就職できたことがプラス面ですが、一般庶民の生活はあまり景気回復を実感できていません。それは、給料が上がっていないからです。
バブル期までの日本企業は、利益が増えると社員の給料も上げたものでしたが、最近の日本企業は社員の給料を簡単には上げなくなったのです。
しかし、今後については明るい材料もあります。景気の回復に伴なって、人手不足が激しさを増しています。この流れが続けば、企業が給料を引き上げざるを得なくなるでしょう。そうなれば、庶民の暮らしも景気回復が実感できるものになるはずです。景気の回復がオリンピックまで続けば、相当な人手不足になるでしょうから、給料も結構上がるのではないでしょうか。
問題は、オリンピックの後ですよね。人々が語らないのは、わからないからでしょう。過去のオリンピックを見ると、開催後(あるいはオリンピックの準備が概ね終わった開催直前)に景気が悪化するケースは多いようですが、悪化の程度はケース・バイ・ケースのようです。
東京の場合、建設ラッシュで都心の不動産がバブルだ、という人もいますので、もしも本当なら、オリンピックを契機にバブルが崩壊するかもしれません。そのあたりが少し心配ですが、前回のバブルとは規模が全く違いますから、仮に崩壊しても後遺症はそれほど深刻なものにはならないと考えてよいと思います。

――本書ではTPPについても解説されています。日本のTPP参加をめぐり、「低所得者層への影響」という観点から、TPP参加のメリット・デメリットについて解説をお願いします。

塚崎:TPPというのは、いろいろな事が取り決められていますが、最重要なのは貿易の自由化です。各国が得意なものを作って輸出して、不得意なものを外国から輸入しよう、ということです。したがって、日本で言えば、工業製品の輸出が増えて農産物の輸入が増えることになるでしょう。
そうなれば、製造業は雇用を増やしますから、失業者が減ります。一方で、農家は輸入農産物に負けてしまうので損失を被ります。農業をやめて製造業に就職する人が多ければ問題はないのですが、なかなかそうもいかないので、零細農家をどう保護するか(補助金などによって零細農家を守る方法や、零細農家が競争に負けたとしても以前の所得を保証してあげる方法などがあります)、政府がいろいろ検討しているようです。不幸中の幸は、日本の農家は高齢者が多いということです。「遠からず引退するはずだったが、TPPが締結されたので、予定より少し早めに引退しよう」という人が多いとすれば、農業全体としてのデメリットはそれほど大きくないかもしれませんね。
忘れてはならないのは、農家以外の多くの国民にとっては、外国から輸入される農産物を安く買うことができるので、メリットがあるということです。
このように、TPPによって、大勢の人々が小さなメリットを受ける一方、少数の農家が大きなデメリットを受けるので、デメリット部分が注目を集めやすいのですが、日本全体として、あるいは日本中の低所得者層全体としてみれば、悪い話ではないと思いますよ。
(後編につづく)


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