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地方移住の壁を超える一つの答えとなるのか? 『広島小商いメッセ』取材レポート

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地方に移住するという人は検討中の人を含めれば、かなり存在すると考えられる。
理由は様々だが、現実問題として一番の課題になるのは収入ということになるだろう。

広島県では、地方移住や地方での活動に関心を持つ若年層を対象に、広島での「小商い」(こあきない)活動の機会を提供し、その体験をしたもらおうと『広島小商いメッセ in 海の街・山の街」』を開催した。
このうち、広島県府中市上下町で行われた山の街のイベントを取材した。
小商いという、あまりいい心地ではない単語をあえて使ったのは、大もうけできるわけではないが、生活するための足しにはなる程度の商いという意味が込まれれているのだという。

写真はJR福塩線上下駅

府中市上下町は、JR福塩線沿線の街で、山陽新幹線福山駅から福塩線で行けば距離的には近いのだが、そうはいかない。
のぞみ号も停車する福山駅から、福塩線府中駅までは電化され電車が行き交うのでさほど大変でもないが、そこから先は非電化で1日6往復しか列車が走っていない。
そうなると、記者のスケジュールの都合もあるが、東京から取材に行くにはこのルートは不便すぎて、使えない。
最終的に選択したのは広島まで行き、前泊。朝の高速バスで直接上下駅に至るという遠回りだが、一番楽なルートとなった。
石見銀山と瀬戸内を結ぶ街道沿いの宿場町であった上下町は、金融業(両替商)で栄えたとされ、現在でも古い町並みがそのまま残る。

しかしその多くは空き店舗となり、居住者もいないままという例が多い。
そこで、空き店舗となった古い住宅を現地のNPO法人等が一時的に借りて、数店舗をめぐるという形でこのイベントは開催された。

イベントとしてはあまりにも小規模で、知らずに通るとそのまま通過してしまいそうなのが「小商い」らしい。
広島県内外から小商い実践者が、それぞれの商いを披露、交流しながら、そのノウハウや苦労話を聞くことができた。

写真のこの店舗は、昔は百貨店だったという。百貨店とはいえ、いわゆる現代の大規模小売店のデパートではない。昔の雑貨屋さんのことで、店舗を閉鎖したまま、そこにはタイムカプセルのごとく当時の商品がそのまま残った。それを発掘して販売していた。

例えば、写真左側はかんざしで、右側は羽織紐(ひも)。
保存状態は良く、これが数百円で販売されていたのは驚きだった。
地方の郷土資料館に所蔵しても不思議はない代物だ。

日本髪を結う女性には3500円は激安といえるのではないだろうか。

このような、眠っていた逸品は全国にあるのかもしれない。

さて、それぞれの小商いを見せていただこう。
まずは、筆を使わず指で絵を描くという変わったもの。

広島県尾道市でパステル教室を開く横山晴美さん。
絵を体験してもらったり、絵そのものを販売したりもするが、教室を開いてその授業料を得ることで小商いにする。

続いて、「ロザフィ」と呼ばれる、紙でできたバラの花を自由に組み合わせてアクセサリ等を作る小商い。

井川理砂さんも尾道市で同様に、地域の人に教えることで小さな収入を得る。認定講師の資格も持つ。

こちらは、子供でも買える100円の手作りアクセサリー。

池田千波流さんは、地元上下町で小さなネイルサロンを開く。
おそらく小さなこの街では「独占企業」かもしれないが、同級生のほとんどは学校を出ると福山や広島、あるいは大阪や東京に出て、戻ってこないのが寂しいと話してくれた。
100円のアクセサリーも、小さい子供がいるママがネイルサロンを訪れた際に、子供に買ってあげられるように手作りで安く提供しているとのこと。
原宿で売れば500円でもいいのかもしれないが、こうした小さな努力が地方活性化の第一歩なのかもしれない。

カラーセラピーと呼ばれるこのコーナー。

柿原洋美さんは、福山市でこのカラーセラピーという商いをする。
よく占いのカテゴリーにされてしまうと言っていたが、その人が選んだカラーによって行動指針や、力、勇気を与えるというもの。
他に生年月日によって、その人が持つ数字を手掛かりに、人が置かれた状態や今後を推し量ろうということもやっている。
記者も見てもらったが、当てはまることも多く驚いた次第である。しかし当りや外れという観点のみで評価するのではなく、そういう状態であるということを認識して、自分を再発見することができれば、それはそれで心の癒しを得られるという意味では、セラピーという言葉も納得がいく。

最後に紹介するのは、いわゆる西洋タロットではなく、OSHO禅タロットと呼ばれる、ちょっと聞きなれない占い。

レイさんは、自宅以外に部屋を借りて占いをはじめとするサロンを開き、賃貸料を考慮してもようやくペイできるようになったという。記者に「何をするにも覚悟が必要」と語ってくれた。

小商いをする彼女たちは、現状では「それだけで食っていける」だけの収入を得るのは難しいと口をそろえる。しかし、レイさんの言葉を借りれば、地方移住も覚悟が必要で、その気になれば生活を助ける収入にはなるという。つまり、好きなことを副業にして地方で暮らすというスタンスであれば可能なのかもしれない。

広島県の地域力創造課の担当者によれば、経済の向上により仕事そのものはあるという。しかし得られる収入は都市部ほど多くはないので、あくまでも上下町はそのモデルケースではあるが、ゆったりと自分の好きなことで小商いもして、生活を安定させることができればという提案の意味で開催したと語る。

地方移住を思い立ったとしても、生活の安定のためには超えるべき壁は多い。
それを「小商い」という切り口で迫った広島県の取り組みは、地方再生の切り札となるのか。
今後の動向が注目されるだろう。

※写真はすべて記者撮影

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(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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