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同人誌のつくりかた・お金編 ~原価計算をしよう~

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日に日に気温が下がりまくっている今日、この頃いかがお過ごしでしょうか。複数回にわけて「同人誌のつくりかた」をお送りするシリーズ第二回目です。ちなみにタイトルは大好きな平尾アウリ先生の某百合漫画からもじっています。すみません。
11月ですね。今月筆者が着目しているイベントは11月15日(日)開催の『COMITIA114』と11月23日(月・祝)開催の『第二十一回文学フリマ東京』です。着目はしていますし行きたいですが当日は働いています。切ない。行ける方は是非筆者の分も楽しんできてくださいね。

今回のテーマは同人誌の「お金」です。

同人誌にかかるお金とは? 

ずばり、印刷代の一言に尽きます。
同人誌をめぐる状況は時代とともに変遷し恒常的に同人誌を扱う店舗やオンラインDL販売なんてものも登場しましたね。少しでも同人誌に携わった方ならご存知でしょうが大半の同人活動は赤字覚悟で行われます。同人誌は個人で自費出版できる趣味の冊子。つまり誰でも作ることができるのですが出せば売れるというものではありません。たまに何も知らない方に「ものすごく儲かるでしょう?」なんて聞かれます。そういう方々も確かに存在しますが大半のサークル参加者は赤字覚悟です。

そもそもが同人活動には印刷費以外にもいろいろなお金がかかります。
まずは頒布のためのイベント代。それから漫画や絵を描かれる方はその画材やデジタル機器がばかにならないはずです。イベントに参加する以上は交通費や食費、仲間との交際費も生じます。遠方の方は宿泊費もかかるでしょう。女子ならオシャレだってしたいでしょう。差し入れだって大事です。何よりあのカップリングやこのジャンルの同人誌をお買い物したい。そんなわけで同人誌はとてもお金がかかります。

何故売り上げが回収できないのか?

まず基本的に同人誌は売れるようなものではないのです。同人誌をひとつの出版物としてみなしてみましょう。知らない人の出した中身のわからないものをいきなり一日のイベントで見出してお金を出すというのは読み手からしても賭けなのです。
どんな大手サークルさんも行列ができるまでには一定の時間が必要です。その時間とは「あそこはいい」と情報が伝わるまでの時間です。表紙がいくら魅力的でも100部あったら最低100人が素通りしないだけの「時間」が必要になります。その時間を短縮してイベント開始直後から行列ができるのは「知名度」が高いから、というわけです。同人誌における知名度はカタログやサークル間の情報交換が地盤になります。昨今ではネットがあるのでイベント参加されていなくても人気がある方も多数います。
読み手が造り手を認識していく速度と売り上げは比例します。意識してもらうには確かに実力やら工夫やらも必要ですが結局「良い本を作るか」ということやジャンルを支えるファンの数にも左右されるのです。

「原価計算をしていないので売れば売るほど赤字になる」

印刷費にどれくらいのお金を上乗せして同人誌に値段をつけるかは自分次第です。筆者は現在活動していませんがかつては弱小サークルでした。工夫を凝らしていい本を作っているつもりでいたのですが……。だんだんとイベント費用が負担になってきました。例えば大手や中堅サークルさんであればそのイベントの一日の売り上げで参加費が回収できるほどの部数を刷ることができます。けれどもそれほどの実力がない場合には100部を刷って一度に30部しかはけない。場合によっては1部も動かないこともあります。
結局その後のイベントへの参加を経て完売に近づけるわけです。つまりその分イベント費用が生じて赤字になっていきます。しかもイベント参加時にあわせて原作が萌え供給をしてこようものなら参加するごとに新刊を発行したくなり、そうするとまたマイナスを抱えることになります。
かなりの落ち込みを体験したとき、あるフレーズを思い出しました。それは椎名誠先生がある出版物を初めて刊行した際のエッセーでした。発行したはいいものの「原価計算をしていないので売れば売るほど赤字になる」という愉快なお言葉。読んだ当時は笑ってしまいましたが、照らし合わせると自分がまさにそれだったのです。

原価計算をして費用と赤字を抑えよう

それまでは印刷費用とイベント代をマイナスしてその日の売り上げを足していけばいいという考え方でした。それをもう少しシビアに改めて印刷費用の原価計算をすることにしました。印刷費用を部数で割って一部あたりの単価を把握しておく。そして値段をつけて一部売れたときの利益を把握しておく。これだけです。
まず印刷費用を抑えるようにつとめました。同人誌の花は表紙です。きらびやかな仕様で印刷方式が凝っているほど好まれます。いっそそれがすべてといってもいい世界です。同人で表紙買いは自然なのです。一日きりのイベントで迷っていると完売してしまうおそれがあるためです。
まず出せる予算を決めてから、その範囲内での最高を目指すように切り替えました。それまでは「やりたいことありき」だったのですが、やりたいことのラインとコストの妥協点を見つけるようにしたのです。
そこで本文の印刷だけは印刷所に一色刷りで依頼し、表紙はカラープリンタを利用して自宅で刷ることにしました。ただし紙にはかなりこだわって竹尾見本帖本店や世界堂などにせっせと足を運びました。安いけれども安く見えない紙を吟味しました。売れば売るほど赤字になるのは変わりませんが一部あたりがもたらす利益を把握しておくと安心します。
イベント代がすっかり赤字ではなく何割回収できているかということが見えてきて次の計画が立てやすくなり衝動的に新刊を刷りたくなる気持ちを抑制できるようになるのです。どうしてもという場合はやはりコストを考えることができるようになりました。意識を切り替えて「頑張って売る」のではなく「工夫して赤字の額を抑える」ことにしたのです。

弱小だもの

筆者は「どうせ大手ではないし」と考えてまったく金銭面に目を向けていませんでした。しかし、趣味だからこそきちんと管理と計算をして同人誌を作成するという意識はとても大切です。同人誌は表現の媒体なので金銭目当てではないのですが、それでも活動を続けていくためにはやはりお金は必要です。弱小であるからこそ必要だったのです。
同人誌は造り手と読み手がそこにあるだけで読み手は表現物の代わりにお金を差し出してくれているだけです。だからお金にがめつくなることは何だか恥ずかしいような気がしていました。しかし、そんなことを言っていると活動そのものが続けられなくなってしまいます。
初めて参加される方や費用に悩んでいる方は是非一度原価計算と販売計画を立ててみましょう。創作意欲を抑えきれない場合はネットで発表するなど折り合いをつける筋道はいくらでもあります。

何だか「同人作家が原価計算をしてみたら」みたいな意識高い高い系の記事になってしまいました。実際はただの負け犬反省記なのに。

こんな長文にお付き合いありがとうございます。

次回のテーマは「イベント」のお話です。

※写真はイメージです。実際のサークルと関係ありません。

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 小雨) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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