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Album Review:ディアハンター『フェイディング・フロンティア』 人生を見つめ直す、悲しく優しい音楽の旅路

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 なんと甘美で、悲しい楽曲の数々なのだろう。ディアハンター史上、最も端正なドリーム・ポップ作となったニュー・アルバム『フェイディング・フロンティア』は、前作『モノマニア』から約2年半ぶりとなる作品だ。その間に、フロントマンのブラッドフォード・コックス(Vo/G)はソロ名義でドキュメンタリー映画『TEENAGE』のサウンドトラックを手掛け、2014年末には交通事故に遭い負傷するといった経験を経ている。

 今夏に来日/出演を予定していた【HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER】は、モーゼス・アーチュレッタ(Dr)の体調不良によりキャンセルとなったが、新作からの楽曲を披露する可能性があったかと思うと、あらためて残念でならない。前作『モノマニア』では極めて衝動的で激しいガレージ/サイケの視界に到達していたディアハンター(ライヴがまた圧巻の内容だった)は、ここに来てふと立ち止まり、ブラッドフォードがじっくりと人生を俯瞰して見つめ直す、そんな音楽の旅路へとリスナーを誘っている。

 先行シングルとなった「Snakeskin」は、トボケたレゲエ/パンク風の曲調であり、それとは裏腹に《僕は生まれたときから既に十字架に磔だった》と、恐らくは先天的な病を抱えて生まれたことの悲痛な思いを歌っている。曲調と歌詞とのギャップが、過去の経験を醒めた視線で見つめる様子を伝えるようだ。アルバムのオープニング曲「All The Same」も、柔らかなサイケ・ポップの中で苦闘の日々を虚しく振り返るといった印象で、そのサウンドは歩んできた道程の奥ゆかしさを伝えている。

 ただ、衝動的でないぶん、「Take Care」や最終トラック「Carrion」といった楽曲は、諦観の先で肯定性を掴み取るような、途方もない優しさに満ちている。特に「Carrion」は、ディアハンター版の「A Day in the Life」と呼びたくなるほどの、拭いきれない悲しみと生の実感に包まれているのだ。ロケット・プント(Key/G)が手掛けたエレクトロニックなサイケ・チューン「Ad Astra」から「Carrion」へと至るクライマックスは、気が遠のくような美しさである。

 平熱の、透明な悲しみに包まれながら、ブラッドフォードは自身のノスタルジーの中へと人々を導いている。『遠のく新天地』。移ろいゆく記憶は、ただそれだけで甘く、幻想的なものだ。彼が長らく敬愛してきたという、ステレオラブのティム・ゲインが「Duplex Planet」に参加しているのも良い。ぜひ、新作ライヴの機会に期待したいところである。(Text:小池宏和)

◎リリース情報
『フェイディング・フロンティア(Fading Frontier)』
2015/10/16 RELEASE
4AD / Hostess
BGJ-1000 2,400円(tax out.)
iTunes:http://apple.co/1LVyEEu
※初回生産分のみアーティストグッズが当たる応募ハガキ封入
※ボーナストラック1曲、歌詞対訳、ライナーノーツ(天井潤之介)付

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