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原発事故がクラシック音楽界に与えた傷

エンタメ
原発事故とクラシック音楽

原発事故による社会情勢の変化はクラシック音楽界にも深刻な影響を与えている。というよりも、あまり世間的には知られてはいないが、この原発問題でもっともネガティブな影響を受けているのは、ある意味クラシック音楽界ではないだろうか。

日本人のクラシック演奏家が世界の第一線で活躍し、注目を集めていることは言うまでもない。先日も巨匠レナード・バーンスタイン氏の愛弟子だった佐渡裕氏がクラシック音楽の最高峰、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮して話題となった。指揮者にしろピアニストにしろヴァイオリニストにしろ、クラシック音楽界の最前線に名を連ねる邦人は多い。

しかし、いくらグローバルな世界になって多種多様な出自のアーティストが世を賑わせても、やっぱりクラシック音楽の本場はヨーロッパである。欧州人の、欧州人による演奏を聴いてこそクラシック音楽の真の醍醐味を味わえる。そういうシビアな現実もまた厳然とあるのだ。

毎年日本、特に東京では欧州のみならず世界各国からさまざまな外国人アーティスト、それも超一流のアーティストが日本に来日してくる。サクッと気軽にヨーロッパに行けない日本のクラシック愛好家にとって、そうした機会は何よりの楽しみ。しかし3.11から続く原発事故以来、そうした年中行事が、日本クラシック界異例の事態へと変貌することとなった。

言うまでもなく欧州人はチェルノブイリ原発事故を経験しているため、福島の原発事故への反応も極めて敏感だった。3.11当時来日中だったフィレンツェ歌劇場は、イタリア・フィレンツェ市当局によって強制的に公演中断を迫られ、その後も続々と欧州アーティストの来日中止が発表される事態に。近い時期ではフランス国立リヨン管弦楽団が、団員の意見に押されて日本公演中止となった。

公式な発表もさまざまである。いわく「本人の体調不良」や「急病」などお茶を濁すような表現もあれば「原発事故への懸念のため」とあからさまな理由が挙げられたりもする。極端な例ではオーストリアの老舗、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団は同じ東アジアというだけで原発を懸念し、韓国への音楽祭の出演を見合わせた。

もちろん、アーティストの自主的な判断をとやかく言うことはできない。しかし現在、皮肉にも3.11以後“来日する人、しない人”という区別によってアーティストの株に影響を及ぼす事態となっているのである。

在京オーケストラに限って見てみよう。上記のように日本には毎年一流のオーケストラが来日し、例年それら本場の音楽にファンは大いに歓喜していた。しかし現在はオーケストラどころか、日本のオーケストラに客演する指揮者個人もまた来日拒否ムードの渦中にいるのだ。

新日本フィルハーモニー交響楽団のオーストリア人音楽監督、クリスティアン・アルミンク氏は現在40歳。年配者の多い指揮者の中では若手と言って良い存在だ。彼は4月に新国立劇場によるオペラ『ばらの騎士』を新日本フィルと演奏する予定だった。しかし、ご多分にもれず来日中止。代役として来日したのは同じオーストラリア人で高齢のマンフレッド・マイヤーホーファー氏だった。

かたや読売日本交響楽団は常任指揮者のシルヴァン・カンブルラン氏が難なく来日。「震災後だからこそ、音楽を奏でる意義は大きい」と語った。同じ日本の指揮者のポストでこうした差が出てしまったことは、必然的に前者の株を下げる要因にならざるを得なかった。

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