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『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』ジョー・ライト監督インタビュー 海賊がニルヴァーナを歌う理由とは?

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ロンドンの孤児院に暮らす少年が“ピーター・パン”になるまでの秘められた物語を描く映画『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』が、10月31日(土)より全国公開となる。

本作のメガホンを務めたのは、『プライドと偏見』(2005)、『つぐない』(2007)、『アンナ・カレーニナ』(2012)などのジョー・ライト監督。来日していた監督に、今作のようなファンタジー超大作を手掛けることになった経緯や、物語に込めた思いなどを聞くことができた。


――今作の監督を引き受けた経緯を教えてください。

ライト監督:26歳の若手脚本家ジェイソン・フックスから脚本が送られてきたんだ。読んでみたら、誰もが知っているストーリーをベースにしながらも、非常に独創性のある作品だった。生まれたばかりの息子のために、この映画で母子の関係を描いてみたくなったんだよ。

――ご自身の監督としてのフィルモグラフィーを振り返ると、今作はまったく新しい挑戦と言えるのではないでしょうか。

ライト監督:僕にとって、まさに新しいチャレンジだったね。スケールの大きいファンタジーで、空飛ぶ海賊船が出てきたり、他にもCGを多用する場面がたくさんある。個人的には、実験をしてみたいという思いがあったんだ。でも、いつも重要視しているのはストーリーで、自分自身がどれだけ作品とのつながりを持てるかを大切にしている。作品に個人的な観点を見出せるかってことだね。

――今作で言うと、ご自身とリンクした部分はどのあたりですか。

ライト監督:脚本を読んでいる時に、自分が12歳の頃に戻ったような、僕こそピーターだという感覚があったんだ。あと、僕の息子に重ね合わせたこともあったね。自分の秘めたる可能性を発見するまでには多くの困難があるわけだけど、僕自身、ピーターと同じように難読症で字を読むことができなかった。息子の場合は、悪夢に悩まされていた時期があって、勇気と想像力と信念を持てば恐怖を乗り越えることができるんだと息子に証明したかったんだ。

――極めてパーソナルなお話だったんですね。

ライト監督:アクション・アドベンチャー大作ではあるけど、その中でも個人的な思いを取り入れたかった。私的な題材を扱った映画は小規模で、大作にはそんなことができないと思われがちだけど、それは違うってことだよ。


――『ピーター・パン』はもともと思い入れがあった作品なのでしょうか?

ライト監督:日本と同様にイギリスでは非常に有名な作品で、僕自身、子どもの頃に読み聞かせしてもらったのを覚えているよ。ただ、改めて原作を読み直すと、非常に奇妙な印象を受けたんだ。いわゆるおとぎ話とは全く違って、ディズニーの世界観とはかけ離れた作品なんだよね。

――ピーターはヒーローでありつつ、ちょっと意地悪な側面もありますよね。黒ひげもただの悪党ではなく、どこか愛すべき二面性を持ち合わせています。キャラクター作りにおいてどんなことを意識されましたか?

ライト監督:僕の映画の中では、善い人、悪い人と定義した人物を登場させないようにしているんだ。だって人間は複雑で、現実世界でも完全に善い人とか完全に悪い人なんて出会ったことがないだろう? 自分自身もどちらでもないと思っているよ。子どもたちも鑑賞するこの映画の中で、世界は白黒はっきりしていると描いてしまうのはとても危険なことだ。世界のグレーな部分を楽しんで受け入れることが大切だし、人生は多面的だということを描いたつもりだよ。

――黒ひげを始めとする海賊たちが、ニルヴァーナの『Smells Like Teen Spirit』やラモーンズの『Blitzkrieg Bop』を大合唱するシーンが最高にクールでした。時代背景を無視してまでその曲使いを選択したのはなぜでしょうか。

ライト監督:ネバーランドは時空も時代も関係ない夢の世界、12歳の自分が想像力を働かせて作りあげた世界なんだ。自分の想像力を開放するために、ヒューも含めた役者たちや製作陣と1週間の“海賊ブートキャンプ”を実施したよ。他にもいろんな曲をかけていたんだけど、パンクをかけた瞬間にみんながいきいきとして、海賊らしいタフさを表現することができたんだ。僕はカオスな世界を生み出したかったから、黒ひげの登場シーンにはニルヴァーナしかないとそこで決まったんだよ。今作では無秩序を表現したかった。だって、子どもの世界ってそうだろう? 

――先ほど原作はディズニーの世界観とは違うと伺いましたが、仮に今作がディズニーの配給で公開されたとしたら、ここまでカオスな世界観が実現したと思いますか?

ライト監督:うーん、外交上の理由で答えるのが難しい質問だね(笑)。僕の両親は人形使いで、劇団を主催していたんだ。人形劇というと一般的には子どものための娯楽だという認識だけど、日本の能や歌舞伎のように、伝統的な芸術として従事していた。だから父は奥行きの深い詩的な題材、その中でも例えば、オリヴァー・ゴールドスミスとか、オスカー・ワイルドとか、社会に上手くなじめなかったような人物の作品を扱っていた。要するに、ディズニー的なものとは180度異なる物語ばかりだ。人魚姫の悲劇を扱った時は、女の子たちが泣いて帰ってしまったこともあったよ。父は子どもたちに真実を伝えたかったんだ。僕も同じだよ。あ、でも今作はハッピーエンドの物語だけどね(笑)。

――本日は、ありがとうございました!

『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』公式サイト:
http://wwws.warnerbros.co.jp/pan/

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記者:

PR会社出身のゆとり第一世代。 目標は「象を一撃で倒す文章の書き方」を習得することです。

TwitterID: stamina_taro

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