ミンチ肉はステーキになりうるのか!? ほぐされた食材をわざわざ元の形に成型し直す

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左から時計回りに、イクラ、牛肉ミンチ、鮭のほぐし身、焼き鳥缶

 

世の中には、食べやすいようにほぐされた食材がある。

例えば、イクラは筋子の卵巣膜を取り除いて一粒ひと粒分けたものだし、挽肉は肉の塊をミンチしたものだ。

こうした“ほぐされ食材”は、ひと手間かけてわざわざほぐしているわけだが、それを元の形にしたら加工前と同じ味わいが再現できるのだろうか?

実験してみた。

 

焼き鳥缶の鶏肉を串に刺す

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焼き鳥缶、塩味

 

まずは成型の超初級編。

つまみとしておなじみの焼き鳥缶である。

焼きたての焼き鳥はそりゃウマイが、保存のきく缶詰は、家で呑んでいてつまみがなくなったときなんかに重宝する。

合コンだと焼き鳥の盛り合わせを串からほぐした方が、周囲に女子力アピールできるのかもしれないが(行ったことないので完全にイメージ)、私は串から直に食べたいタイプだ。

……というわけで、串に刺していく。

貧乏性のばあちゃんが、焼き鳥の串を洗ってとっておいていたので、ありがたく使わせていただくことにした。

 

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実家にあった串。「焼き印の種類っていろいろあるんだなー」と、妙なところで感心する

 

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串に肉を刺していく

 

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完成! 見た目はもう、完全に焼き鳥串だ(もも串の焼き印を選んだ)

 

食べてみると、肉がホロホロと崩れる。それと、味もちょっと濃い。

焼き鳥のもも肉はプリプリした食感だが、どちらかというと煮込み料理みたい。

缶詰から直接食べると気にならないかもしれないが、見た目が完全に焼き鳥なだけに少しちぐはぐに感じた。

 

牛肉のミンチをステーキにする

成型中級編は、牛100%の挽肉をステーキ化する。

ウィキペディアによると挽肉は“商品価値の低い屑肉が材料となることがある。”とのことなので、サーロインやフィレ、リブロースといったおなじみの部位とは違う味わいになるかもしれない。

「ミンチ肉を成型したらハンバーグになるでしょ」と言われかねないので、できるだけハンバーグっぽさをなすべく、つなぎなどは一切使わず、肉の粘り気を利用して成型する。

 

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ミンチをよくこねる。十分に粘り気が出たら成型していく

 

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ぶ厚いステーキをイメージして成型した肉。240gほどあった。塩コショウを振ってフライパンで焼いていくよ

 

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完成! 焼き色はおいしそうだが、見た目はハンバーグだ

 

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中は、レアな焼き上がり

 

ニンニクを効かせた醤油ベースのタレ(自家製)につけて食べてみると……

半生の部分はステーキの再現度が高いが、よく焼けたところはボソボソしてしまった。

ハンバーグよりも肉肉しいが、ステーキほどの噛みごたえはない。

ステーキとハンバーグのあいだ。

「冷静と情熱のあいだ」みたいな言い方をしてしまった。エンヤの曲が脳内で流れる。

 

出勤前の父が物欲しげにうろうろしていたので、一口食べてもらうと「おいしい」と言っていた。

さらに後日、「あれ、また作ってほしい」と言ったので、料理として一応は成立していたようだ。

 

鮮度の高いミンチではなかったので、最終的にはもう少し火を入れて食べました。

 

鮭のほぐし身を鮭にする

続いて、成型上級編。

鮭のほぐし身を鮭の形にしたいと思う。

 

鮭のほぐし身は、牛肉ミンチのように混ぜれば粘り気が出るというわけでもないし、パラパラしているので多少手を加えることとする。

いっそ、もっと細かくしてしまい、ハンバーグの要領でつなぎを使い、成型してから焼く。

 

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包丁で叩くようにしながら細かくしていく

 

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ボウルに、鮭のほぐし身をさらに細かくしたものと、パン粉、卵を入れる

 

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しっかりこねていく

 

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鮭っぽい形にしてフライパンへGO!

 

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できたぞ! 朝食っぽく、海苔を添えてみた。皮があればもう少し似せられたかもしれない。

 

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鮭っぽい……?

 

食べてみると、ふわふわした食感の鮭?

「?」が付いているのは、鮭そのままの味わいではなく、ちょっと雑味があるからである。

パン粉と卵がこんなに主張しているのか? とも思ったが、ほぐし身をそのまま食べてみたら雑味がもっと強かった。

瓶のラベルを見てみたら、鮭だけでなくて大豆タンパクが入っていた。

おそらくこの味だろう。

 

鮭をほぐして調理すれば、もっとおいしくなるかなと思う。

 

イクラを筋子にする

ラストは、番外編という感じ。

イクラを筋子にしたい。……のだが、卵膜をどうやって再現するかで悩んだ。

最初は腸詰用の腸を調達して、イクラを詰め込む算段だったのだが、腸は火を通す必要がある。

イクラを詰めた後に火を入れるとイクラが固まってしまうし、腸を加熱処理した後にイクラを入れようとしたら、腸が縮んでしまい詰められなくなるのではないかという懸念も。

 

飲食店で働く夫に訊ねてみると(自家製ソーセージも作っているので)、やはり腸は熱で縮むであろうとの見解。

“人工ケーシング”という人工の腸や、テリーヌを作るときなどに使われる“網脂”の存在も教えてもらったのだが、どちらも加熱なしで使って大丈夫なのか不安。

ちゃんと食べられるものにしたいので、夫が次に提案してくれた手法を使う。

「寒天で固める」のである。

 

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まずは、皿にイクラを筋子っぽく盛る

 

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水に溶かして温めた寒天。ある程度冷めたらイクラにかけていく

 

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冷蔵庫で冷やした結果、表面が固まった。白い部分があるが、これは寒天が厚いため変色したもの

 

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まとめて掴める!

 

寒天は無味で邪魔しないため、イクラそのままの味わいだった。

……って、筋子になってないじゃん!

やはり粒同士が卵膜で結び付けられている筋子のようにはならない。

箸でまとめて取りやすくはなったが。

ちなみに寒天は剥がれるので、イクラに戻すのも簡単だ。

この企画の根幹を揺るがす、元も子もない発言だが。

 

 

今回、誰かが愛情をこめて(るかはわからないけど)ほぐしてくれたものを、わざわざ元に戻していったわけだが、その過程でなんだか申し訳ない気持ちになった。

せっかくほぐしてくれたのに、ごめん、と。

 

ほぐれているのには、ほぐれているワケがあるのだ。

もしくは、ほぐしてもおいしく食べるための工夫がなされていたのだ。

 

筋子になりきれなかったイクラは、寒天を剥がしてイクラ丼にして食べました。

 

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寒天を剥がすと、梱包材のプチプチみたいだった

 

書いた人:栗本千尋

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1986年生まれ。青森八戸市出身(ですが、実家が最近なぜか仙台に引っ越しました)。情報系雑誌をはじめ、旅行やグルメ雑誌、webメディアなどでお仕事しています。旅行会社→編集プロダクション→任侠系DVD会社勤務を経て、2011年からフリーライターに。2014年に出産し、一児の母になりました。

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