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現代アートと経済との密接な関係とは?

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 2008年、ニューヨークのオークションにて、1516万ドル(当時のレートで約16億円)で落札された、村上隆さんのフィギュア作品「マイ・ロンサム・カウボーイ」のように、現代アートには、ときとして驚くような価格がつくこともあります。

 現代アートは美術であると同時に、資本主義社会のなかで流通する”商品”であることもまた事実。そして、数万円で売買されていたものが、時を経て数十億円の価格がつけられたりと、その価値は変動に富んでいます。

 日本で初めて現代アートを専門に取り上げた画廊「東京画廊」のオーナー・山本豊津さんは、自著『アートは資本主義の行方を予言する』の中で、アートこそ「資本主義社会の特質をもっとも先鋭的なかたちで表している」のだと指摘。

 本書で、山本さんは「幅の広い価格帯を持つ美術作品を扱いながら、作品に応じて適正な価格を判断し売買」する、いわば芸術と経済とをつなぐ存在である”画商”としての目を通して見た、日本の現代アートが辿ってきた歴史とその現在について分析していきます。

 資本主義社会のなかの現代アート。本書のなかで山本さんは、国力を考えるときには、軍事力や経済力のみならず、芸術の力にも注目すべきだといいます。

 なぜなら「文化や芸術において価値を作り出し、世界にそれを認識させ定着させることは、国家としての価値を高め、政治活動においても経済活動においても大きなメリット」(本書より)をもたらすから。そのため、第二次世界大戦前後、米国は文化や芸術における覇権を握ることを目指し、1935年から43年にかけて、連邦美術計画と呼ばれる芸術家支援計画を実施。これにより約5000人から1万人に及ぶ芸術家が、20万点もの作品を制作。抽象表現主義の誕生に寄与したのだそうです。

「この動きの中にはジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニングといった作家も含まれ、戦後、米国の美術の大きな流れとなる抽象表現主義の誕生に寄与しました。
 この抽象表現主義の流れからロバート・ラウシェンバーグやジャスパー・ジョーンズといったネオ・ダダの動きが生まれ、そこからポップ・アートという米国が世界に発信した芸術潮流へとつながっていくわけです」(本書より)

 こうした歴史を振り返るとき、日本もバブル時に、自国の芸術や美術の価値を高め、その認識を世界に広げておくべきだったのではないかと山本さんは指摘。たとえば、現在、ボストン美術館に所蔵されている雪舟の水墨画を高額で買い戻しておけば、日本の美術品の資産価値を上げ、文化的な優位性や自信の獲得、美のスタンダードを握っていくことにも繋がっていたのではないかといいます。実際、中国では現在、強くなった経済力を背景にして、自国の美術品を買い漁り、国をあげて美術品の価格を上げ、その価値を高めているそうです。

“商品”としての側面をもつ、現代アート。本書は、その価値や価格の謎、資本主義社会のなかで果たす役割について迫った一冊となっています。

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