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新「3本の矢」地方への影響は(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

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安晋三首相は24日、自民党総裁の3選決定を受け、記者会見を開いた。今後は経済政策に注力する姿勢を強調、「新3本の矢」を放ち、GDPを600兆円に増やす計画を表明した。さっそく具体性の乏しさを指摘する声が出ているが、ここでは地方行政や地方政治に与える影響を考えてみたい。

自民党の総裁選はほかに立候補者がなく、首相の無投票当選が確定。24日に党本部で開かれた両院議員総会で、総裁再選が決定した。新たな任期は3年後の2018年秋。今後、支持率が急低下したり、国政選挙で負けたりしない限り、首相の任期も続けられる。

安倍首相は両院議員総会後の会見で、就任3年間の実績を強調。そして今後3年間の取り組みの方向性を表明した。50年後も人口1億人を維持し、全員が活躍できる「1億総活躍」社会を作る。そのために新しい「3本の矢」を放つ、という。

首相が3年前の就任時に掲げた旧3本の矢は①大胆な金融政策②機動的な財政政策③投資を喚起する成長戦略。これに対して新3本の矢は①希望を生み出す強い経済②夢をつむぐ子育て支援③安心につながる社会保障――である。

具体的な目標としては
(1)昨年度に490兆円だったGDPを600兆円に拡大
(2)現在1.4にとどまる出生率を1.8まで引き上げ
(3)家族の介護のために仕事を辞めなければならない「介護離職」をゼロにする
――と表明した。

いずれも意欲的な目標だが、今後は具体策の立案や財源の手当てが問われる。そして当サイトの読者が最も気にしているのは、地方にどう影響するかだろう。そうした視点で改めて会見内容を詳しく見てみよう。(末尾に記者会見全文を掲載)

安倍首相の会見内容を詳しく見てみる

まず、新1本目の矢である「強い経済」の中で地方創生に触れている。「地方の特色を活かしながら『ふるさと』を活性化する。地方創生もいよいよ本格化する」。そしてリニア中央新幹線の着工や北陸・北海道新幹線の開業に触れ、「日本全国が一つの経済圏に統合されることによって地方にダイナミックな成長のチャンスが生み出される」と語った。

地方創生への言及はこれだけだが、つまり鉄道網を中心とした交通インフラの整備に注力するということだろう。背景にあるのは、政権内で影響力を高める二階俊博総務会長らが主張する「国土強靭化計画」の存在。今後は地方創生の名のもとに、整備新幹線の前倒し開業や高速道路網の整備などに重点的に予算が配分される可能性がある。

新2本目の矢に関しては、待機児童対策に加えて不妊治療への助成や婚活支援、教育環境の多様化などを掲げた。不妊治療については現在も高額な「体外受精と顕微授精」への助成制度を国が設けているが、助成対象の拡大や年齢制限、所得制限のあり方などが議論となりそう。婚活支援についてはすでに各自治体が始めている街コンなど出会いイベントへの助成や出会いの場を提供するNPOへの支援などが検討されそうだ。

教育環境の多様化については、すでに超党派の国会議員がまとめた「多様な教育機会確保法(仮称)」が土台になるとみられる。不登校児が増えている実態に合わせ、フリースクールや家庭教育を義務教育として認める案が検討課題となる見込み。

新3本目の矢に関しては団塊世代、団塊ジュニア世代の引退に備え、介護施設の整備や介護人材の育成、在宅介護の負担軽減などを打ち出した。すでに急増している介護予算だが、「介護離職ゼロ」をキーワードに、一定程度の増額は容認するとみられる。

首相は予防医療の充実にも意欲を示している。一時期、長野県の予防医療と健康長寿との関係が注目されたが、今後はそうした自治体の取り組みや企業の取り組みを支援する動きが加速しそう。高齢者の就労を受け入れる企業への支援策も積みます見通しだ。

 

今回の首相会見は方向性を示しただけ…

今回の首相会見は今後、取り組む政策の方向性を示しただけで、具体策の立案はこれから。個人消費の拡大や子育て支援の充実、社会保障の拡充などはこれまでも取り組んできた課題であり、今後、中央省庁から画期的な案が出てくるとは考えにくい。

当面はこれまでの取り組みの焼き直しや地方で成果を上げつつある事業への財政支援が中心となるだろう。重要なのは地方や民間が地域の実情に合わせ、効果的な政策の立案を競うこと。お国任せではGDP600兆円も、出生率1.8%も、介護離職ゼロも到底達成できない。

 

◇安倍晋三首相の会見全文(自民党HPより引用、太字は筆者加工)

はじめに

止まらぬデフレ、美しい海や国土に迫る脅威。3年前、日本は、民主党政権の下で混乱を極め、国家的な危機に直面していました。その危機感を共有し、国民の皆さんの力によって、私たちは政権を奪還することができました。

あれから2年9か月。

「日本を取り戻す」。この、お約束を実現するために、私たちは、全力を尽くしてまいりました。

アベノミクスによって、雇用は100万人以上増えた。2年連続で給料も上がり、この春は、17年ぶりの高い伸びとなった。中小・小規模事業者の倒産件数も、大きく減少した。もはや「デフレではない」という状態まで来ました。デフレ脱却は、もう目の前です。

この3年で、日本を覆っていた、あの、暗く、重い、沈滞した空気は、一掃することができました。日本は、ようやく、新しい朝を迎えることができました。

この3年間の実績に対して、「更に次の任期を務めよ」との、多くの党員の力強い支持を頂き、更に3年間、自由民主党総裁の重責を担うこととなりました。

これまでの3年間を超える「結果」を出すことを、私は求められている、と思います。次の3年間、私は、未来を見据えた、新たな国づくりを力強く進めていきたい。本日、この日から、アベノミクスは、「第二ステージ」へと移ります。

 

ニッポン一億総活躍プラン

目指すは「一億総活躍」社会であります。少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も、人口1億人を維持する。その国家としての意志を明確にしたいと思います。

同時に、何よりも大切なことは、一人ひとりの日本人、誰もが、家庭で、職場で、地域で、もっと活躍できる社会を創る。そうすれば、より豊かで、活力あふれる日本をつくることができるはずです。

いわば『ニッポン「一億総活躍」プラン』を作り、2020年に向けて、その実現に全力を尽くす決意です。

そのために、新しい「三本の矢」を放ちます。

第一の矢、『希望を生み出す強い経済』。

第二の矢、『夢をつむぐ子育て支援』。

第三の矢、『安心につながる社会保障』。

希望と、夢と、安心のための、「新・三本の矢」であります。アベノミクスによる成長のエンジンを更にふかし、その果実を、国民一人ひとりの安心、将来の夢や希望に、大胆に投資していく考えであります。

 

強い経済

「今日よりも明日は、きっと良くなる」。明日への「希望」は、強い経済なくして、生み出すことはできません。これからも「経済最優先」。経済政策が「第一の矢」であります。そのターゲットは、「戦後最大の経済」、そして、そこから得られる「戦後最大の国民生活の豊かさ」であります。GDP600兆円の達成を、明確な目標として掲げたいと思います。

そのために、雇用を更に増やし、給料を更に上げて、消費を拡大してまいります。デフレから脱却し、力強い成長軌道に乗せるため、「生産性革命」を大胆に進めていく。大きな経済圏を世界に広げながら、投資や人材を日本へと呼び込む政策を、果断に進めてまいります。女性の皆さんが、家庭で、職場で、地域で、もっと、もっと活躍できる社会を創っていかなければなりません。一度失敗を経験した皆さん、難病や障害のある方、すべての人が、もう一歩前に踏み出すことができる社会を創ることが必要です。「多様な働き方改革」を進め、誰にでも活躍のチャンスがある経済を創り上げてまいります。

北は北海道から、南は沖縄まで、地方がそれぞれ持っている特色を存分に活かしながら、「ふるさと」を活性化する地方創生も、いよいよ本格化してまいります。

南アルプスを貫く、全長25キロメートルに及ぶ、巨大トンネル。先月、リニア中央新幹線が、本格着工となりました。東京と大阪を一時間で結ぶ「夢の超特急」であり、日本の最先端技術の結晶であります。北陸新幹線は、今年の春、富山から、金沢まで乗り入れました。更に、来年3月には、北海道新幹線が開業となります。

高速鉄道によって、北から南まで、地方と地方をつないでいく日本全国が、大きな一つの経済圏に統合されることによって、それぞれの地方に、ダイナミックな「成長のチャンス」が生み出される。地方創生の大きな起爆剤となる、と考えています。

 

子育て支援

第二の矢は、「夢」を紡ぐ「子育て支援」であります。そのターゲットは、希望出生率1.8の実現です。

多くの方が「子どもを持ちたい」と願いながらも、経済的な理由などで実現できない残念な現実があります。

待機児童ゼロを実現する。幼児教育の無償化も更に拡大する。三世代の同居や近居を促し、大家族で支え合うことも応援したいと思います。さらに、多子世帯への重点的な支援も行い、子育てに優しい社会を創り上げてまいります。

「子どもが欲しい」と願い、不妊治療を受ける。そうした皆さんも是非支援したい。「結婚したい」と願う若者の、背中を押すような政策も、打っていきたい。誰もが、結婚や出産の希望を叶えることができる社会を、創り上げていかなければなりません。

そうすれば、今1.4程度に落ち込んでいる出生率を、1.8まで回復できる。そして、家族を持つことの素晴らしさが、「実感」として広がっていけば、子どもを望む人たちがもっと増えることで、人口が安定する「出生率2.08」も十分視野に入ってくる。少子化の流れに「終止符」を打つことができる、と考えています。

教育再生の主役は、「子どもたち」であります。同じ子どもは、一人として、いません。個性はそれぞれ違います。社会の価値観も多様化しています。そうした時代にあって、教育制度の複線化は不可欠です。

いじめや発達障害など、様々な事情で学校に通えない子どもたちには、フリースクールなど多様な場で、自信を持って学んでいけるような環境を整えます。

子どもたちの未来が、家庭の経済事情によって左右されることがあってはなりません。奨学金を拡充し、希望すれば、誰もが、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えます。ひとり親家庭の支援も充実し、子どもの貧困の問題に取り組みます。

子どもたちには、無限の可能性が眠っています。誰でも、本人の努力次第で、大きな「夢」を紡いでいくことができる。そうした社会をつくりあげていきたいと思います。

 

社会保障

第三の矢は、「安心」につながる「社会保障」の構築です。

社会保障は、高齢者の皆さんのみならず、現役世代の「安心」も確保するものでなければならない。そうした観点で、社会保障制度の改革・充実を進めてまいります。

特に、仕事と介護の両立は、大きな課題であります。私は、「介護離職ゼロ」という、明確な旗を掲げたいと思います。

直近の調査で、介護離職者が、初めて、年間10万人を超えました。離職を機に、高齢者と現役世代が、共倒れしてしまうという悲しい現実があります。東京五輪が開かれる2020年には、団塊世代が70歳を超え、その数は、さらに増えていく。日本の大黒柱である、団塊ジュニア世代が、大量離職する事態となれば、経済社会は成り立たなくなる。その危機は、もう目前に迫っています。今、ここから、始めなければなりません。

「介護離職ゼロ」を目指して、介護施設の整備や、介護人材の育成を進め、在宅介護の負担を軽減する。仕事と介護が両立できる社会づくりを、本格的にスタートさせたいと思います。

急速な高齢化の進展。社会保障負担の増加。単にそう考えれば、これは、ピンチでしかありません。しかし、豊富な経験や知恵を持つ人材が増えると捉えれば、これは、大きな、大きなチャンスであります。意欲あふれる高齢者の皆さんに、社会の担い手として、もっと活躍して頂く。「生涯現役社会」の構築を目指します。

予防に重点化した医療制度へと改革を進めます。企業による健康経営、健康投資を促すような仕組みをつくりあげます。

同時に、高齢者に多様な就労機会を提供してまいります。年金も含めた所得全体の底上げを図ることで、高齢者世帯の自立を支援してまいります。

 

おわりに

「継続こそ力」である。

経済の再生も、外交上の国益の確保も、「政治の安定」なくして、成し遂げることはできない。これが、この3年間で学んだ、大きな教訓であります。

その意味で、一昨年の参議院選挙、更には昨年の衆議院選挙で、「安定した政治を進めよ」と、与党に大きな力を与えてくださった、国民の皆様に、改めて、感謝申し上げます。

だからこそ、私たちは、現状に満足しはいけない。数の上にあぐらをかいて、立ち止まってはいけません。

この安定した政治基盤を大きな力として、長年手つかずであった、日本社会の構造的な課題である、少子高齢化の問題に、私は、真正面から挑戦したいと考えています。

30年、40年、そして50年先を見据えながら、私たちの子や孫の世代のために、新たな国づくりを進めていく。「一億総活躍」の時代を切り拓くため、これからの3年間、全身全霊を傾注していく覚悟であります。

(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)

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