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喫茶店の「モーニングサービス」発祥の地、愛知県一宮市のご当地PR女子「一宮モーニングエンジェルズ」ってなんだ!?

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高度経済成長期の好景気が「一宮モーニング」を生んだ

地方発のB級グルメは、その土地の文化や歴史を背景に生まれた誕生ストーリーがあり、発祥当時の古き良き時代に思いを馳せるのも楽しみの一つである。では、名古屋はどうだろうか。味噌かつや手羽先、ひつまぶし、あんかけスパなど名古屋めしの多くは、天才的なセンスのある1人の料理人が生み出したものが大半である。

それに対し、地域自体で育まれた食文化も確実に存在する。名古屋駅から電車でわずか10分、愛知県西部に位置する一宮市には、地場産業である繊維業の発展とともに、ある食文化が生まれた。朝、コーヒーなどの飲み物を注文すると、トーストやゆで卵などが無料で付く「モーニングサービス」(以下、モーニング)であり、一宮市はその発祥の地といわれいる。市内には約620軒の喫茶店があり、週末には家族揃ってモーニングを食べる姿も珍しくはない。

 

モーニングサービスの一例

一宮市の喫茶店でモーニング始まったのは、高度経済成長期にあたる昭和31年頃。当時は機織りの機械がガチャンと音を立てると、1万円儲かる「ガチャマン」と呼ばれる空前の好景気に沸いており、維業を営む人々は昼夜を問わず喫茶店で商談や打ち合わせをしていた。なぜなら、当時の繊維工場は機織機の音がうるさい上に埃っぽいからだ。

 

昭和31年頃の一宮モーニング。当時はまだ高価だった卵が付く

早い話、喫茶店を応接室や会議室代わりに使っていたのだ。そこで喫茶店のマスターやママさんは、朝から来てくれる客にゆで卵とピーナツをサービスとして付けたのがはじまりだという。

名古屋市にもモーニングを提供している喫茶店はあるにはあるが、テナント料や人件費の関係でトーストとゆで卵、サラダを付けるのがギリギリ。ドリンクに100円~150円の追加料金を払う「モーニングセット」が一般的になりつつある。

一方、一宮市の喫茶店はどうか。土地や建物は自前、さらに家族経営というケースが多い。私見ではあるが、名古屋よりも1~2品多いだけではなく、茶碗蒸しやおかゆ、うどんまで付ける店もある。そんな豪華なモーニングを出しても利益は出るのだ。

こんな面白い食文化を町おこしのネタにしないわけがない。’07、’08年に一宮商工会議所青年部は、市内で食べられるモーニングを「一宮モーニング」と命名し、発祥の地であることを改めて宣言。さらに市内の人気店を一堂に会してモーニングを提供する「一宮モーニング博覧会」を開催した。それを皮切りに、’09年には一宮商工会議所が中心となり、一宮市や市内の学校、食品関係団体などとともに一宮モーニング協議会を設立。市内約100店舗のモーニングを写真付きで紹介した「一宮モーニングマップ」や「一宮モーニング公式ホームページ」を毎年制作してPRしている。

 

毎年発行されている一宮モーニングマップ

 

モーニングマップには、詳細なお店情報が掲載されている

 

モーニングマップを見ると、実に多種多様なモーニングが紹介されている。それは喫茶店のみにとどまらず、中華料理店やインド料理店のものまで載っているほど。中には朝のみならず、終日モーニングを出す店もあり(!)、毎日通っても飽きないほどだ。

 

モーニング文化と繊維業のPRがエンジェルズのミッション

しかし、「一宮モーニング」は切実な問題も抱えている。一宮モーニング協議会の下部組織である一宮モーニング推進委員会の副委員長、森幹昇さんは言う。

「喫茶店に足を運ぶのは、60代以上が中心なんです。若者たちにモーニング文化を継承していかないと、途絶えてしまうという危機感をずっと抱いています」

筆者は昭和44年生まれの46歳だが、高校時代は喫茶店に入り浸っていた。しかし、私よりも年下の世代は喫茶店よりもファストフード。コーヒーよりもコーラだ。実際、喫茶店で若者を見かけることはほとんどない。 

2014年7月、一宮モーニング協議会はその打開策として、市内在住または市内に通勤・通学している女性を対象に、一宮モーニングのPR隊「一宮モーニングエンジェルズ」を公募、オーディションによって13名が選ばれた。

 


一宮モーニングエンジェルズのオーディション風景

「オーディションでは、長年チアリーダーを続けている方やモーニング未経験の学生さんもいました。それぞれからモーニングに対する熱い思いが伝わってきました」(森さん)

 

一宮モーニングエンジェルズ・第一期生

 

地元のお祭りにて。右端が一宮モーニング推進委員会副委員長の森幹昇さん

 

エンジェルズたちは、ホームページやマップに掲載されている店に足を運び、公式ブログやFacebookでその店の魅力を伝えるのが主な活動だ。エンジェルズはすでに100を超える記事をブログにアップ。また、モーニングとともに地場産業である繊維業もPRするため、イベント時には衣装に燕尾服=モーニングを着用している。

 

2014年10月に開催された「一宮だいだいフェスタ大集合for Halloween」にて

 

写真中央は、一宮モーニングのキャラクター「ICHIMO(イチモ)」

 

「昨年、メンバーから、『歌とダンスでモーニング文化を伝えたい』との申し出があり、市内の祭りやイベントでオリジナル曲『おもてなし』を披露しました。一宮モーニングは、市内の喫茶店のマスターやママさんの“おもてなしの心”が原点。オリジナル曲の歌詞も『おもてなし』を連呼しますから、一度聴いたら頭の中でリフレインすると評判です」(森さん)

 

 

『珈琲司 豆工房』のシフォン&定番エッグトースト

一宮モーニングの歴史に新風を巻き起こした一宮モーニングエンジェルズ。2014年3月には1名が活動休止、5名が卒業したため、今年7月には再びオーディションが行われた。

 

第二期生のオーディション風景

 

結果、第二期生の5名が新たに加わり、計12名の新生・一宮モーニングエンジェルズが誕生した。

 

新生・一宮モーニングエンジェルズ

 

すでに彼女たちは市内の喫茶店に足を運び、モーニングの魅力をブログやFacebookで発信している真っ最中。そこで一宮モーニングエンジェルズのPR活動に密着してみた!

 

写真左から、よっちゃん、ジョニー、ゆりちゃん、ゆいかてぃ

 

エンジェルズのメンバーは世代もさまざま。一期生のよっちゃん、ジョニー、ゆりちゃん、そして二期生のゆいかてぃは、メンバーの中でも若手である。この4人が向かったのは、一宮市富士1丁目の『珈琲司 豆工房』。 

ここのモーニングは、ドリンク代(コーヒー400円)のみでエッグトーストや小倉トースト、シフォンケーキなど6種類から選べるパン類に、それぞれサラダとゼリーが付く。

 

ジョニーとゆいかてぃは女子らしくシフォンケーキを選択。

 


シフォンケーキのモーニングは女子ウケも◎

 

「店内のショーケースには手づくりのケーキが並んでいて、お店に入ってからずっとシフォンケーキを狙っていました(笑)」(ジョニー)

「フワフワの食感が美味しいっ!あっさりとした口当たりのクリームもイイ!」(ゆいかてぃ)

 

一方、ゆりちゃんは日替わりの黒ゴマパンのトースト、よっちゃんは定番のエッグトーストをセレクト。

 


エッグトーストのモーニング。これぞクラシカルな朝食!

 

「黒ゴマが香ばしさがイイです!パンの表面はカリッと、中はフワフワ。焼き加減もベストです」(ゆりちゃん)

「卵の味付けが濃厚!トーストもフワフワで美味しかったぁ!」(よっちゃん)

と、4人とも大満足の様子。

食べたあとはブログの記事を書くため、モーニングのこだわりについて店主へインタビュー。さっきまでの和気藹々とした雰囲気から一転、真剣な眼差しで店主の話に耳を傾けていた。

 

お店情報

珈琲司 豆工房
住所:愛知県一宮市富士1-16-5
電話番号:0586-24-1898
営業時間:8:00~22:00(土曜・祝日は~18:00) ※モーニングタイム8:00~11:00
定休日:無休

豆工房

 

朝からリゾットまで付いてくる『COCORO CAFE』

続いて(上写真左から順に)一期生のあんちゃんと、ねえさん、二期生のおかちが向かったのは、市内・千秋町の『COCORO CAFE』。 ここの「日替わりモーニング」は、ドリンク代(コーヒー350円)のみで、日替わりのトーストとリゾット(または麺)、サラダが付く。

 


「日替わりモーニング」。リゾットまで付いて350円!

 

さらに、パンの器に入ったハヤシソース(またはクリームシチュー)のリゾットがメインの「リゾットセットモーニング」(ドリンク付、600円)も用意されている。ボリューム満点の朝メニューだ。

 


朝からガッツリいきたいなら「リゾットセットモーニング(ハヤシソース)」

 

あんちゃんはクリームシチュー、ねえさんはハヤシソースの「リゾットセットモーニング」を注文。おかちは「日替わりモーニング」をオーダー。それぞれ異なるメニューを注文して、シェアしながら感想を述べ合う。

「実は私、プライベートでもココによく来るんです。実はつい最近も来たばかり(笑)。クリームシチューのリゾットを食べ終わった器にポテトサラダをのせて食べても美味しいんですよ」(あんちゃん)

「ボリュームがあるので、お昼近くに来てブランチにしてもイイかも。サラダに使うドレッシングも自家製だったりと、細かい部分にまでこだわりが伝わってきます」(ねえさん)

「今日はエッグトーストでしたが、日替わりなので来るごとに違う味が楽しめるのがイイですね。リゾットも日替わりで、ひやむぎなどの麺になることもありますよ♪」(おかち)

モーニングトークに花を咲かせていると、マスターが最近メニューに加わった「ベトナムコーヒー」(600円、提供は12:00以降)を持ってきた。「ぜひエンジェルズのメンバーに味の感想を聞いてみたい」とマスター。モーニングエンジェルズの訪問は、お店にとっても若者の意見が直接聞けるとあって、メリットがあるようだ。

 

お店情報

住所:愛知県一宮市千秋町佐野字郷西40-1
電話番号:0586-52-4684
営業時間:6:00~18:00※モーニングタイム6:00~12:00
定休日:水曜

COCORO・CAFE

 

現在、モーニングマップ掲載店のモーニングを食べるごとに押印されるスタンプを集めると抽選で商品券などがもらえる「一宮モーニングスタンプラリー」を10月31日(土)まで開催している。一宮モーニングエンジェルズのメンバーもラリーに参加しているので、運が良ければお店で彼女たちに会えるかも?

 

スタンプラリー応募用紙は、モーニングを提供する各店舗に用意されている

 

さらに、オリジナル曲「おもてなし」に続く新しい曲を制作中というウワサも。

「曲はすでに完成しています。10月4日(日)、11日(日)、12日(月・祝)に尾張一宮駅前のi-ビルで開催される『一宮モーニング博覧会』での発表をめざして、歌とダンスを猛練習しているところです。楽しみにしていてください」と、一宮モーニング推進委員会の副委員長、森さん。彼女たちの今後の活躍に期待したい。

がんばれ! 一宮モーニングエンジェルズ!

 

 


書いた人:
永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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