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グローバル化で加速するバイリンガル教育の”落とし穴”とは?

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 2020年の東京五輪を見据えて、英語教育の必要性が叫ばれる昨今。「子供をバイリンガルにしたい」「どうせなら早いうちに…」と考える親御さんも多いのではないでしょうか? 2か国語を自由に話せるバイリンガルというと、語学の才能を活かし、国際社会でも活躍できるなど、良い面ばかりがクローズアップされがちです。

 しかし、日本人の母と、ドイツ人の父の間に生まれ、日本語とドイツ語のバイリンガルであるサンドラ・ヘフェリンさんは、自著『ハーフが美人なんて妄想ですから – 困った「純ジャパ」との闘いの日々』のなかで、「2つの言語を同時に習得する」ことの危険性を、以下のように指摘しています。

「『2つの言語を同時に習得する』というと聞こえはいいですが、常に『中途半端』となる危険性がつきまとうということです。両方習ってきたはいいけど、読み書きが怪しいとか、文法が怪しい、というのはよくある話なのです」(同書より)

 サンドラさんは、子供をバイリンガルにするには「まず、親に必要なのは、財力・体力・時間・根気です」(同書より)と断言。たとえば、バイリンガルに育てる最適な教育環境に、インターナショナルスクール(外国人学校)の存在がありますが、授業料は、年間100~200万円とも言われ、ある程度の「財力」が求められるのです。しかも、それだけの労力やお金を費やしても、親の願い通りに完璧なバイリンガルに育ってくれるとは限りません。親が言語教育に熱心でなかった場合、「今日は学校のbreakでeat an appleした 」のように、日本語と外国語を混ぜて話す”語学ちゃんぽん”状態に陥ってしまう子供も少なくないそうです。

 また、バイリンガルになったとしても、通訳や翻訳など、バイリンガルの特性を活かせる職業に就ければ良いのですが、専門知識を身に着けられなかった結果、中途半端な「語学屋」で終わってしまう危険性もあるのだとか。さらにサンドラさんによれば、意外なことに、ドイツにおいて、医師や弁護士、税理士、エンジニアなど「堅い」職業に就いているハーフのほとんどが、モノリンガル、つまりドイツ語だけを話す環境で育っているそうです。

「私はかなりの数の日・独ハーフの人を知っていますが、ドイツ在住のハーフの場合、日本語とドイツ語の両方を話す人より、ドイツ語のみを話す人のほうが、専門知識を必要とする、いわゆる『堅い』職業に就く傾向があります」(同書より)

 一方、日本在住ハーフの場合はと言えば、専門性や高度な日本語能力が必須の職業に就いているハーフは、「日本語中心」のモノリンガル環境で育ってきたケースが多いのだとか。たとえば、高い日本語能力が求められるアナウンサーという職業に就いている、滝川クリステルさんや、加藤シルビアさん。フランス語やポーランド語がペラペラ、というイメージがある彼女たちも、外国人学校でバイリンガル教育を受けてきたわけではなく、日本で教育を受けて育ち、母国語はあくまでも日本語のようです。

 数多くのハーフを観察してきたサンドラさんによれば、よほどの天才でない限り、2か国語を完璧にマスターした上に、他の専門分野でもエキスパートとなる可能性は、ほぼゼロに等しいそうです。なぜなら、「日本語とドイツ語」「日本語とフランス語」など、まったく異なる言語体系の言葉を同時に習得するには、膨大なエネルギーが必要。それゆえ、2つの言語を学ぶために”語学漬け”の子供時代を送った場合は、語学の学習にエネルギーの大半を費やしてしまうので、医学や法律など、語学以外の他の専門分野への興味や意欲が育ちにくいのではないか?と分析しています。

「子供をバイリンガルにすべきか?」――この問いに正解はありません。しかし、もし子供にバイリンガル教育を考えているのであれば、メリットだけではなく、そのデメリットについても、充分認識しておくべきだと言えるのではないでしょうか。

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