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Album Review: 殿下1年ぶりの新作!EDMやファンク、ネオソウルにハードロックまで、ジャンルを超えた傑作『ヒット・アンド・ラン フェーズ・ワン』

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 プリンス殿下も御年57歳。そろそろ落ち着きをみせるお年頃…なんて、とんでもない。今っぽさを強調したデジタルアート(前作『アート・オフィシャル・エイジ』の引用?)に、冒頭からぶっ飛ばす「ミリオン・ダラー・ショー」で華々しい幕開けとなる、本作『ヒット・アンド・ラン フェーズ・ワン』。「レッツ・ゴー・クレイジー」にも似せた、このファンク・チューンから、雨音に乗せたメロウ「ジューン」で締めくくるあたり、まるで名盤『パープル・レイン』を彷彿させるよう構成…と思ったのは、意識しすぎか、はたまた「パープル・レイン」のイントロを起用しているあたり、意図的なものか…。

 本作は、昨年リリースの『アート・オフィシャル・エイジ』、『プレクトラムエレクトラム』の2作同時リリースから1年ぶりとなる新作で、自身が立ち上げたばかりのレーベル<NPGレコード>からのリリースとなる。ジョシュア・ウェルトンを共同プロデューサーに、リタ・オラやジュディス・ヒルといった、若手ミュージシャンをゲストに迎えた意欲作。意欲といえば、殿下らしからぬ“EDMサウンド”の取入れも話題をよんだが、さほどエレクトロ感は強調されていない。安定した“プリンス・サウンド”が堪能できるアルバムだと思う。

 「フォールインラヴトゥナイト」あたりは、ややデジタリーな印象を受けるも、80年代にカムバックしたような仕上がりで、EDMとは言い難い。「シャット・ディス・ダウン」、「エイント・アバウト・トゥ・ストップ」も、そう。シンセっぽい音は取り入れているんだけど、北欧のフロアを賑わせているような、エレクトロニック・ダンスとはまったく違う。「ライク・ア・マック」で聴かせるリフは、やはりミネアポリスの威信をかけるがごとく、ファンク魂がそこにある。

 先行リリースされた「エクシズ・フェイス」やシングル「ハードロックラヴァー」など、プロモーション形態は現代ならではのスタイルを取り入れ、デジタル配信がメインとなった『ヒット・アンド・ラン フェーズ・ワン』。今をうごめくサウンドや、若い才能を取り入れるだけでなく、シーンの今を拒まず受け入れる体制も、成功と若さの秘訣。かといって、ステージ上では無駄なパフォーマンスは一切なく、音楽そのものを楽しみにきたファンを常に魅了するんだから、すごい。本作も、“これは生音で聴きたいぞ”という曲しか並んでいない。

 11曲というコンパクトにまとめながら、その11曲がすべてインパクト絶大で、イントロ/アウトロ長すぎ…という、ちょっと惜しいな…的な要素も一切ない。LP盤で聴く“アルバム”としての構成が、見事にまとまった傑作。ジャケットを見る限り、“期待していいものか…”と、ためらうリスナーに告ぐならば、期待して良いと太鼓判を押したいアルバム。プリンスの圧倒的な天才・異才ぶりは、デビューから40年近く経った今も健在だ。

Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ヒット・アンド・ラン フェーズ・ワン』
プリンス
2015/10/09 RELEASE
2,646円(tax incl.)

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