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元ゲリラ、マリファナ合法化、世界一質素な大統領…ホセ・ムヒカという人物の素顔

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 日本の総理大臣の年収がどのくらいか知っているだろうか。
 まず、月ごとの俸給(約205万円)だけで計算すると年間で約2500万円。そこに賞与や手当などが乗って、4000万円ほどといわれている。
 一方、南米ウルグアイの大統領の月給は29万ウルグアイペソ。これは日本円にしておよそ130万円(2015年8月現在)だ。ところが、2015年3月1日までそのウルグアイで大統領として国を率いていたホセ・ムヒカは、その給料の約90%を慈善事業と所属政党に寄付し、残りは将来貧しい子どもたちを受け入れるための農業学校をつくるために貯金していたという。月の生活費は1000ドル程度(約12万円)で、妻が上院議員として収入があるため、それで生活しているのだという。

 5年間の任期を通して、ありえないほど質素な生活スタイルを貫いたホセ・ムヒカという人物。その発言に世界中からの称賛と共感の声が寄せられ、話題を呼んでいる。そんなムヒカのスピーチや発言をまとめたものが『ホセ・ムヒカの言葉』(佐藤美由紀/著、双葉社/刊)だ。

 ムヒカが発する言葉はとてもシンプルだが、力強い。そこからは、彼が質素でありながらも精神的に豊かな生活を送っていることがうかがえる。ここでは、本書から2つ、彼の言葉をご紹介しよう。

■「物であふれることが自由なのではなく、時間であふれることこそ自由なのです」(p28より引用)
 これは、ベネズエラのテレビ番組「La Hojilla」で語った言葉だ。6時間労働を獲得したのにも関わらず、自国民たちはバイクや車のローンを支払うために、別の仕事を持ち、以前よりも長時間働いている。物欲を満たすために時間を犠牲にしていると指摘するのだ。
 ムヒカにとって、自由とは働いていない時間のこと。そこでは好きなことをすればいい。サッカーをしたり、釣りをしたり、ただ木の下にいることだっていい。自らを「素朴な百姓」と呼ぶ彼は、農業をしたり、友人と過ごしたりしながら、自由な時間を謳歌するのだ。

■「ひとつ言えることは、弾圧だけでは問題を解決することはできない、ということです」(p80より引用)
 2013年12月10日、ウルグアイ上院議会は大麻(マリファナ)の所持、使用、栽培を合法化する法案を可決した。国家が大麻を全面的に認めるのは初めてのことで、世界中から注目を浴びた。
 この法案を提案したのは、このムヒカである。その裏には、大麻を排除しようと弾圧し続けたものの、ますます事態が悪化するウルグアイの状況があった。そしてその金は麻薬組織に流れていってしまう。ムヒカは、政府が麻薬市場をコントロールすることで、組織の資金源が断たれ、犯罪の抑止や乱用による犯罪の防止が可能だと考えた。
 もちろん、いくらでも大麻を吸ってもいいというわけではなく、18歳以上の国民に限り、許可を受けた薬局で一人当たり一ヶ月40グラムを購入でき、あるいは年に6株まで栽培できるとしている。また、いずれも事前の登録が必要であるという。
 この法案に対して、世界から賛否両論あがったが、ムヒカはこの試みを「実験」と呼び、進歩の道は実験、失敗、実験で学んでいくものだと語っている。政府と麻薬組織の戦いという背景を持ち、上手くいかない方法を変えて前進させようとする姿勢は、まさにリーダーのあるべき姿なのではないだろうか。

 表紙では穏やかな表情を見せるムヒカだが、1960年代には極左ゲリラ組織に参加し、ベッドの下に機関銃を置いて眠っていたというほど、緊迫した状況の中を生き抜いてきた。1972年8月には逮捕され、1985年3月まで獄中生活を強いられるが、本書で書かれているそのときの経験も壮絶だ。しかし、狂気の瀬戸際でも信念を持ち続けたムヒカは、1995年に下院議員選挙で初当選し、政治家としての道を歩み始めた。

 彼の生き方は、肥大化した経済が蔓延るこの社会の中においては異端中の異端だ。しかし、彼の信念はそうした世界のあり方に疑問を感じている人たちにとって、大いに勇気づけられるものであるし、本当に大切なものとは何かを改めて考えさせられることだろう。
(新刊JP編集部)


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