ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

広島土砂災害から1年~災害対策はどう進んだ?

DATE:
  • ガジェット通信を≫

昨年8月の広島の土砂災害から1年。75名もの犠牲者を出した未曽有の災害の後、広島の災害対策はどのように進んでいるのだろうか? 国の法整備や砂防ダムの整備状況、減災の推進のための県民総ぐるみ運動など、行政の取り組みを広島県(危機管理監危機管理課/土木建築局砂防課・建築課)に取材した。
広島の土地事情と災害に備える「防災」の現状

多くの犠牲者を出してしまった土砂災害から1年。広島はまた同じ季節を迎えている。
「住まい」という点から見れば、災害以降、不動産売買の現場では山に近いエリアを敬遠する傾向があったのは事実。購入者本人だけでなく、購入を支援する親世代から反対の声が上がるケースも多かったという。しかしその一方で、緑豊かな環境を求めて、安佐南区・安佐北区など、広島市の郊外エリアに住まいを求める人は少なくない。

広島県はもともと、中国山地から瀬戸内海に向けて、高地から低地へ階段状の地形を成すエリアだ。平地は河川流域や沿岸部に限られるため、住宅地を確保するために長年にわたって山際の土地の開発が行われてきた経緯がある。一方で、都心部の平地にしても、河口地形に広がる土地だけに、高潮や洪水の被害想定地域に含まれているエリアも多い。市内のハザードマップ(自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図)を広げてみると、何の被害想定もないエリアのほうが少ないかもしれない。
そんな広島だからこそ、いつか起こるかもしれない災害に備える「防災」活動は大きな意味を持つはずだ。被災地において81カ所で砂防ダム等の対策事業を実施

昨年の土砂災害の後、土砂災害の対策施設として「砂防ダム(大雨のときなどに流れてくる土砂を一時的にせき止め、勢いを抑えることで下流域への被害を少なくするための施設)」という言葉がマスコミなどでも多く取り上げられていた。

平成14年に広島県が公表した、県内で土石流やがけ崩れなどの発生の恐れのある「土砂災害危険箇所」は約3万2千カ所にも及ぶ。これは全国で最も多い数字だ。広島県ではこうした危険箇所に砂防ダムなどの対策工事を順次実施しているが、その数の多さから、すべてに対応するにはまだまだ時間がかかるのが現状だ。

こうした中、昨年の土砂災害で多くの被害を出した広島市安佐北区・安佐南区の被災地域では、ハード面の対応として、国と県が分担して緊急的な対策事業を行っており、特に緊急性の高い57カ所については、今年度中に砂防ダム等の対策工事を完了させる予定だ。緊急的な事業以外にも、24カ所で安全を高める対策事業を実施することとしており、被災地域の一日も早い復旧・復興に努めていくという。土砂災害防止法に基づく基礎調査結果を公表し、ソフト面の対策に活用

一方、ソフト面での対策のひとつとして、土砂災害後の昨年10月の閣議決定を受けて、今年1月に「土砂災害防止法」が改正・施行された。「土砂災害防止法」は平成13年に施行された法律で、全国の土砂災害のおそれがある箇所を調査し、生命又は身体に危害が生じるおそれがある「土砂災害警戒区域」や、建築物に損壊が生じ生命又は身体に著しい危害が生じるおそれがある「土砂災害特別警戒区域」を指定することにより、土砂災害の危険性の周知や警戒避難体制の整備といった対策を行うことを定めたもの。しかし、都道府県知事が実施する「指定」に至るにはその地域の市区町村長の意見を聞くことになっており、住民説明会なども行われるため一定の期間が必要となり、危険性の周知などがすぐに行われていなかった。

そこで、今回の法改正では、「指定」前の基礎調査結果についても公表が義務づけられ、早期の災害対策に役立てるよう定められた。基礎調査結果で公表された段階では指定ではないが、これから土砂災害警戒区域等に指定される可能性があることから、不動産取引の際にもその旨を宅地建物取引業者がきちんと説明することが強く求められることとなった。また、住宅建築の際の建築確認申請時にも、「土砂災害特別警戒区域」になる可能性のある土地の場合は、必要な補強工事などを行うよう窓口で勧めているという。

【画像1】改正後の「土砂災害防止法」では基礎調査結果の公表が義務づけられた<出典>広島県作成の資料に一部説明を加えたもの「土砂災害特別警戒区域」に指定された地域にある既存住宅の対策は?

新たに「土砂災害特別警戒区域」に指定された土地にも既存住宅はあり、これまでも人が暮らしてきた。既存住宅については、今年6月に広島県が市町に対して対策改修工事の一部を補助する制度を創設し、市町を窓口として一部受け付けも始まっている。想定される土砂災害の高さや衝撃力に応じた強度を有する鉄筋コンクリート造の外壁等の設置が補助の対象となる。土砂災害発生時に想定される地点ごとの衝撃力などについてはインターネット上(「土砂災害ポータルひろしま(後述)」)で公開されているので、家づくりや改修工事の際には建築会社・設計事務所などに相談を。

また、こうした土地には家を新たに建てることはできないのだろうか? 実は、鉄筋コンクリート造の擁壁をつくるか、建物の構造や開口の配置・大きさなどの条件をクリアすれば住宅建築は可能だ。

【画像2】土砂災害対策改修のイメージ。外壁の改修や塀の築造などが補助の対象となる<出典>広島県作成の資料より不動産取引の際に、防災情報を周知する取り組みが進む

ソフト面での広島独自の取り組みとしては、不動産取引の際に防災情報を周知するという取り組みが行われている。これは今年3月、公益社団法人広島県宅地建物取引業協会と公益社団法人全日本不動産協会広島県本部が広島県と協定を結んだ全国初の取り組み。土地や住宅の購入や賃貸を検討している人に対し、土砂災害や洪水・津波・高潮、地震などに対応したハザードマップを提示し、防災情報を周知するというものだ。

このほか、広島県では「広島県防災Web」を立ち上げており、土砂災害はもちろん、洪水や高潮など、さまざまな災害に関する防災情報を確認できる。そこからもリンクする「土砂災害ポータルひろしま」では、MAP上で土砂災害危険箇所や土砂災害警戒区域等の指定・公表状況の確認ができ、スマートフォンならGPS機能で現在地の情報をチェック可能だ。
家や土地を買うとき、借りるときは、行政や不動産会社からの情報も参考にしながら、自分たちでも必要な情報を集め、その土地の防災情報についてきちんと確認することが以前にも増して求められていると言えるだろう。

【画像3】「土砂災害ポータルひろしま」ではMAP上で土砂災害危険箇所などが確認できる県民総ぐるみ運動で、一人ひとりが「知る」ことから始める

さらに広島県では、今年4月から「みんなで減災」県民総ぐるみ運動をスタート。その最初の一歩が「知る」運動だ。県では、5月から6月にかけて、学校、企業及び地域において、災害危険箇所、避難場所、避難経路などを「知る」ため、県下一斉に防災教室などを行った。また、問い合わせのあった自治会や事業所などには出前講座の開催も行うほか、県の自主防災アドバイザーとして登録している人材を紹介するなど、自主防災活動にも協力している。

こうした自主防災活動は被災エリアを中心に盛んになっており、地域ぐるみで避難方法を話し合ったり、地域内に避難タイミングの参考にするための雨量計を設置したりと、さまざまな活動が行われている。しかしその一方で、災害後1年が過ぎ、被災エリア以外では「防災」意識が薄れ始めている現実もある。

「みんなで減災」県民総ぐるみ運動では、今年10月をめどに、県民が災害から命を守るために適切な行動をとることができるよう、県民、自主防災組織、事業者、行政等の具体的な取り組みなどを盛り込んだ行動計画を策定する予定だという。
一人ひとりが災害の残した教訓を忘れず、常に「防災」意識を持ち続けることが何より大切だということを、広島土砂災害から1年という日を機に、改めて確認したい。
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/08/20/95952/

【住まいに関する関連記事】
あなたの住みたい家は大丈夫? 災害リスクを回避するためには
街を「まるごと展示」することで、街も住人もどんどん元気に?!
「土地白書」公表!利便性、住環境等に優れた住宅地で、上昇傾向が顕著
大型台風やゲリラ豪雨、自宅の水害対策はどうしたらよい?

住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
SUUMOジャーナルの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP