辞めていった従業員に「また働きたい」と思わせるための仕組み

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辞めていった従業員に「また働きたい」と思わせるための仕組み

 辞められたら困るスタッフが近々、退職することが決定。でも、その辞めたスタッフの後任を任せられそうな人がなかなか見つからない。そんな悩みを抱える人事担当は多いのではないでしょうか。
 あるスタッフが辞め、代わりに新しいスタッフを雇い入れるとすると、企業側には採用コスト、教育コスト、業務に定着するまでの時間コスト、最低限のハード面にかかる事務コストといったものが発生します。つまり退職率が下がるほど、これらのコストを削減できるわけです。

 したがって、退職率を0%に近づけることが理想的。しかし現実はそうもいきません。そこで注目したいのが「退職者登録制度」。これは個人の事情により会社を離れたスタッフが再び職場に戻ってこられるようにするための制度です。
 この制度により「再び長期で働くことは難しいけれど、一時的であれば復帰可能」という個人と「繁忙期に一時的でいいからお手伝いをお願いしたい」という企業の利害を一致させることができます。

■妊娠・出産をきっかけに退職していったスタッフを再雇用
 『時代を勝ち抜く人材採用』(武井繁、米田光宏/著、ダイヤモンド社/刊)によれば、近年、特にアルバイト・パート採用の現場で、この制度を取り入れる企業が増えているそうです。ここでは、制度をうまく活用している例として、株式会社スタジオアリスを紹介しましょう。

 同社は写真館事業を展開しており、七五三、お宮参り、入学式など、「こどもの成長過程における特別な日を、忘れられない思い出に変える」ことを企業ミッションとしています。また、全従業員の約99.4%を女性従業員が占めています。
 そして以前からふたつの課題を抱えていました。まず創業以来ずっと、妊娠・出産をきっかけに退職してしまう女性従業員が多かったこと。そして年間の「繁閑差」による人員採用に難があったことです。繁忙期の対応については深刻で、七五三シーズンには、通常の約3倍、1万5000人ほどの人員が必要になり、この不足分をどう補うかは急務でした。

 そこで女性の育児と仕事の両立を支援するための仕組みとして、2007年より「短期アルバイト再雇用制度」の運用を開始し、退職者に募集をかけます。この制度を導入するにあたってのポイントは、「退職者のスキルを『見える化』した」ことだったといいます。
 たとえば「ヘアセットができます」「着付けを習いました」「衣装案内を習いました」といったようにスタッフに自己申告をしてもらうことで、企業側は個人のスキルを把握できます。その結果、「どこの店舗に、どのようなスキルを持ったスタッフを、どれくらいの時間」配置すればよいかといった人員計画を立てられるようになったわけです。
 2013年にはサポートメンバー要請システムを導入。これは「日曜日のピーク時や入園、入学のとき」などにスポットで働ける人を登録するという制度です。これらの制度を段階的に用意していったことで、システムに登録したスタッフの数は現在、9000人にものぼります。また、そのなかで最も多いのは子育て中の女性スタッフだといいます。

 女性スタッフにとって、この制度は「育児と両立できる」というメリットがあるのはもちろん、あるスタッフが「仕事で会った主婦スタッフたちと、休憩中に家族やこどもの話をするのも楽しみのひとつ」と語っているように、従業員の多様な就労ニーズを叶えることが可能になります。
 また、別の女性スタッフは、こう話します。「退職者には結婚や出産など家庭の事情で辞める人が多く、アリスを嫌いになって離れる人はほとんどいません。私自身も、サポートメンバーとして戻ってきて、やっぱりこの仕事が好きだと実感しました。これからもずっとアリスを応援し続けたいです」
 
 ビジネスの現場において人材不足になると、つい「新しい人を集めてこよう」という発想に走りがちです。しかしスタジオアリスの例を見ると、むしろ事情をもって辞めていく社員へのフォローを手厚くするほうが効果的な場合もあることが分かります。人事採用に悩みを抱える経営者、人事担当者にはぜひ手にとってもらいたい一冊です。
(新刊JP編集部)


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