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「暫定基準値」の「暫定」って何なの?

wikipediaより金町浄水場取水口の写真

水道水に「暫定基準値(ざんていきじゅんち)」以上の放射性ヨウ素131が含まれているとして福島原発周辺の一部エリアでは乳児向け「摂取制限(せっしゅせいげん)」などがおこなわれました。

「摂取制限を行います。でもただちに健康に影響は及ぼさないです」とか言われて、どうしたらいいの? と思った方も多いのではないでしょうか。しかも「暫定基準値」ってなんなんでしょう。「暫定」があるんだったら、通常の基準値というものがあってもよさそうなものなんだけど、そっちはどうなってるんでしょう。

そこらへんについては3月17日に東京都水道局が発表した「水道水の放射能の測定結果について」という発表資料の解説がわかりやすいので引用します。

※この記事の文中に登場するURLについては、ガジェット通信本サイトにてリンクつきでまとめてありますので、そちらもご参照ください。

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わが国では、放射能に関する水道水質基準等は定められていません。

ただし、放射性物質漏洩事故等が発生した場合、緊急時モニタリングが実施されるエリア(今回の場合は福島県)については、関係地方公共団体の原子力防災担当部局が中心となって緊急時モニタリングが実施されます。原子力安全委員会により示された指標値を超える飲食物が見つかった場合は、政府の原子力災害対策本部が摂取制限の実施等を検討する仕組みになっています。

 一方、当局が放射能に関して水道水の安全性の評価の根拠としているWHO飲料水水質ガイドラインは、世界保健機関(WHO)が定めたもので、一生涯にわたって水道水を飲み続けても健康影響が生じないレベルを示しており、各国の水質基準等の参考にされています。
 本ガイドラインは、福島県のような緊急時には適用されるものではなく、当局の水道施設など、平常時として浄水処理を実施している日常の運転条件に適用するものとされています。

(以下略)

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参考)
水道水の放射能の測定結果について(東京都水道局, 2011年3月17日)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/03/20l3i200.htm

WHO飲料水水質ガイドライン(第3版、財団法人日本水道協会)
http://whqlibdoc.who.int/publications/2004/9241546387_jpn.pdf

要するに、普段、基準は決まっておらず今回のような災害時だけ緊急に基準が決まるということらしい。つまり、「災害時基準値」みたいなものなんでしょうか。普段はWHOのガイドラインをめやすにしてますよ、ということなんですが、こんなに原発のある日本でなぜ普段の基準が決まっていないんでしょうか……なんかヘンだなーと思うわけですが、早稲田大学の大槻義彦名誉教授によれば、

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一体、何で『暫定』なのか?確定値というものはないのか?これは説明すれば長くなります。実際には専門家に結果がまちまちで今だ確定値はないのです。そこで一番安全に研究家たちのデータの下限をとって暫定としているのです。

放射能の暫定基準値―大槻義彦公式ブログ
http://ohtsuki-yoshihiko.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-1a34.html
より引用
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とのことです。なるほど一番安全な値をとっているわけですね。枝野官房長官が「保守的な値」と言っているのはそういうわけなのか。しかし専門家って私たちの健康に関わる、こんなことにも結論だせないんですね。

●基準を変えれば安全に?
さてこの暫定基準値ですが、「厳しすぎるからもっとゆるくしよう」という動きもあるようです。そこらへん、まだ議論がおこなわれているようで、基準の見直しもあるかもしれないのこと。基準を変えれば安全になるなんてまるで手品のよう。なんだか不思議な話ではありますが、「飲んでもただちに健康に害はないけど飲まないで」というわかりづらい表現をされるよりも、安心して生活できそうな気もしますね(前向きにとらえれば)。

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深水英一郎(ふかみん)

記者:

見たいものを見に行こう――で有名な、やわらかニュースサイト『ガジェット通信』発行人。トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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