会社だけに縛られない生き方 パラレルキャリアの可能性とは

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会社だけに縛られない生き方 パラレルキャリアの可能性とは

 パラレルキャリアという言葉を知っているだろうか。

 これはひと言でいえば、本業以外にも、学びや活動の場を持つライフスタイルのこと。ただ、そこで経験したり学んだことを本業に活かそうとする点が、いわゆる副業とは異なるところだ。
 具体的には、NPO、プロボノ(専門性を活かした社会貢献活動のこと)、コミュニティカフェ、社会人大学院、コワーキングスペースといった団体、コミュニティなどにおいて、社会活動をおこなうことを指す。
 『時間と場所を選ばない パラレルキャリアを始めよう!―――「2枚目の名刺」があなたの可能性を広げる』(石山恒貴/著、ダイヤモンド社/刊)によれば、近年、このパラレルキャリアという生き方が草の根的に広がりつつあるという。
 このパラレルキャリア、人によっては敷居が高いと感じるかもしれない。しかし本書で取り上げている事例の多くは、以下に示すとおり、拘束時間はさほど長くない。

・本業以外の活動はせいぜい週に5時間から10時間以内
・長期間継続するとは限らず、3か月から6か月程度でいったん活動を終了

 ここでは、小さな活動からパラレルキャリアをスタートさせた例を紹介しよう。

■パラレルキャリアによって人生を変えた女性
 ここでは、「キャリアバラエティ」という、パラレルキャリアを実践する人の応援コミュニティを立ち上げた岸智子氏の例を紹介する。
 岸氏はもともと、アパレル販売、化粧品メーカー、ジュエリーショップなど、いくつか小売業の会社に勤め、販売から店舗企画、マーケティング、営業などの仕事を手がけていた。
仕事にのめりこむタイプだったこと、さらには小売業という業態の特性も手伝って「気づけば20連勤」ということも珍しくなかったという。そんな日々が続くなか「土日だけは休める会社で働きたい」と思うようになり転職。希望どおり土日休みの生活を手に入れたものの、仕事中心の生活に変わりはなかった。
 そんな岸氏に転機が訪れる。職場での異動で仕事に違和感をおぼえることが多くなり、「会社が人生のすべてではない。ビジネス一般の知識を身につけたい」と大学の通信課程へ入学したのだ。
 そして授業の内容におもしろみを感じた岸氏は、さらに同じ大学の大学院へ進学。大学院修了時には、平日18時以降に会社以外の学びの場へ出向く姿勢に拍車がかかり、ワークショップデザイナー育成プログラムなどをはじめとして、多くの学びの場に出かけるようになっていた。こうして岸氏は、会社でも家でもない、「サードプレイス」の居心地の良さにめざめていく。
 
 このような一連の体験が少しずつ彼女を変えはじめる。まず、本業での働き方に変化が出た。サードプレイスへ出向く時間を確保したいがために日常業務を効率化するようになった。また、大学院やワークショップデザイナー育成プログラムで学んだ知識を、「全社女子会」など社内業務へどんどん応用するようになっていったのだ。
 そして、そのような活動では飽き足らず、「社外の人を結びつけるイベントができないか」と考えた岸氏は、定期的に大学院の同窓会をワークショップ形式で開くようになる。いまでは3か月に1回ほどのペースで開かれるイベントとして定着しているという。
 このように着実にパラレルキャリアを積み重ねていった岸氏の集大成が、冒頭で紹介した「キャリアバラエティ」。これは結婚を機に福岡に移り住んだ岸氏が、ワークショップデザイナー育成プログラムの同窓生であった吉次潤氏と意気投合して始めたものである。
 この活動は「働きながら×働く」「働きながら×社会活動する」「働きながら×学ぶ」「働きながら×趣味を極める」といったように、多様な生き方があったほうが人生が豊かになるという考えのもと、パラレルキャリアを実践している人同士を結びつけるイベントを定期開催している。

 本書では他にも、人事・活動コンサルタントからNPO支援活動へ活動の軸を移していった人、長期間同じ会社に勤務しながら多彩な社会活動をおこなう人などの例も紹介されている。またそもそも、パラレルキャリアの裾野を広げる要因となっているサードプレイスの増加についても具体例が多数紹介されている。「これからの生き方」を考えたい人にとっては有益な情報が詰まった一冊といえるだろう。
(新刊JP編集部)


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