人気の漫画『ONE PIECE』には「ヤンキー」の要素がある?
マンガ『SLAM DUNK』の発行部数は1億2000万部、『ドラゴンボール』は1億5700万部――これら”モンスター作品”を抑え、3億2000万部と堂々と歴代発行部数№1に輝いているのがご存知『ONE PIECE』。目下連載が続いているにも関わらず、既にドラゴンボールの倍の発行部数というから驚きです。また、売れているだけでなく「心奮い立つ名言のある漫画」「いつか子どもに見せたい漫画」といったマンガに関する各種調査でも上位にランクインするなど、同作品は名実ともに今や日本を代表する漫画と言えます。
そんな超人気作品について、お笑い評論家で雑誌編集者のラリー遠田さんは書籍『ヤンキーマンガガイド』のなかで、『ONE PIECE』を「ヤンキー的な思想に基づいて描かれている」と指摘しています。
あの国民的冒険活劇がヤンキー的な思想に基づく……いったい、どういうことでしょうか。
ラリー遠田さんは同書の中で、その理由についてふたつ挙げます。一つ目は、すべてが「気合い一発」で成り立っているからというもの。
同作のお馴染みのシーンといえば、「ドン!!」という効果音と共に、主人公のルフィが状況を打開するといったもの。どんな不利な状況であっても、ルフィが気合いを入れると勝利することができます。
しかし、ラリー遠田さんは、「バトルシーンに理屈がほしい」と訴えます。
「結局気合いですべてを解決してしまうのなら、その結論にいたるまでの長ったらしい展開は何のためだったのか、と言いたくもなる」(同書より)。
『ONE PIECE』には、「張りめぐらされた伏線、豊富なキャラクター、緻密な世界観など、目移りする要素はたくさんある」(同書より)と認めつつも、気合いだけで解決してしまうことに違和感があるというのです。
また、ラリー遠田さんは、同作には修行シーンがほとんどないと指摘。コミックス61巻で2年の修行期間が設けられましたが、それまではルフィが鍛錬する描写がほとんどなく、努力して勝つといった展開はありません。ラリー遠田さんは、「勝利にはありがたみがないし、たとえ勝ってもさほどカタルシスが得られないのは当然」(同書より)といいます。この「深く考えないことを美徳とする、反知性主義の支配する世界」(同書より)が、ラリー遠田さんの言うところのヤンキー的な部分なのだそうです。
そして、ふたつ目の理由は「仲間主義」。同作には仲間がたくさん登場しますが、そこには何か深い理由があるわけではないといいます。
「『仲間』という概念をじっくり分析してみると、そこに深い何かが潜んでいるわけではない。一緒に船に乗って冒険を続け、苦楽を共にしてきた『旅仲間』である事実があるだけだ」(同書より)
同作では「仲間」という言葉がくり返し登場します。それは、彼らの間に「深い何か」があるわけではないので、浅さを埋めるために、「仲間」という言葉が必要となるのだというのです。
その関係の浅さもヤンキー的な要素がある、とのこと。
「反社会的な存在であることを自認するヤンキー同士の絆は、いつ壊れてもおかしくない。だからこそ、彼らはそれをしつこいくらいに確かめ合わなくてはいけないのだ。暴走族は、仲間がバイクで死んだら悲しむが、自分たちが暴走行為でどれだけ騒音をまき散らし、一般車両の通行を妨害し、迷惑をかけまくっても、その被害者に思いをはせることはない。(中略)ヤンキーが信奉する『仲間』という概念は、このようにきわめて自己中心的な代物だ。仲間は守るべきだが、それ以外のものは一切守らなくていい。その根拠は……ない。根拠のない『仲間主義』を気合い一発で盲信するところにこそ、ヤンキーの本質がある」(同書より)
ヤンキーマンガと似ているという『ONE PIECE』。ヤンキー文化を知る世代の皆さんは、どう思いますか?
■関連記事
福山雅治、タモリも洗ってない?……皮膚科医も推奨する「洗わない」美肌術
ジョジョファン必読 荒木飛呂彦流「漫画の描き方」とは
『クレヨンしんちゃん』 父・野原ひろしの名言集が沁みる
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。