Album Review: ジョアン・ドナート ブラジルの天才ピアニストによる名演が凝縮されたスタンダード集
タイトにボサノヴァのビートを刻むリズム・セクションと、軽快にスウィングするピアノ。聴きなれたメロディを、潮風のような心地いいサウンドに包み込んで聴かせてくれる。ジョアン・ドナートの新作は、いつになくオーソドックスな作品である。
10代ですでにプロとして活動を始め、米国でジャズやラテンをマスター。ボサノヴァ・ブームの頃にはジョアン・ジルベルトを筆頭に多くのミュージシャンを支えてきた。もちろんソロでも数多くのアルバムを残し、とりわけ70年代の名盤『ケン・エ・ケン』や『ルガール・コムン』などはレアグルーヴとしての観点からも評価されているのも周知の通りだ。
今回発表した新作『ブルー・ボッサ~スタンダード・コレクション~』は、そのタイトルにある通りスタンダードをメインに演奏している。自身のオリジナル曲は控えめに、「イパネマの娘」や「コルコヴァード」、「デサフィナード」といったボサノヴァの名曲が多いが、それ以上に「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」や「虹の彼方に」、「オール・オブ・ミー」といったジャズのスタンダードが目に付く。しかし、まったく違和感なく、ピアノ・トリオ編成を軸にジャジーなボッサ・ビートを披露しており、ドナートの軽やかなプレイがとにかく心地いい。老練になると難解になったり、逆に生ぬるくなったりすることがあるが、彼に関してはとても80歳とは思えないみずみずしい音符が鍵盤からこぼれてくるのだ。
潮風の薫りを運んでくるブラジリアン・ジャズ・ピアノ。2枚組たっぷりに収められた名演を、じっくりと堪能してもらいたい。
Text: 栗本 斉
◎リリース情報
『ブルー・ボッサ~スタンダード・コレクション~』
ジョアン・ドナート
2015/05/27 RELEASE
3,240円(tax incl.)
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