角川書店社長「都知事の発言はマンガ・アニメへの職業差別」

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 昨年2010年12月に改正案が可決された、過激な性表現を含む漫画やアニメの販売を規制する「東京都青少年健全育成条例」。同条例はいまだ企業・クリエイター・漫画やアニメファンらの間で繰り返し議論されているが、可決直前に角川書店社長の井上伸一郎氏がTwitter上で「東京国際アニメフェア」への出展を中止する発言をしたことを覚えているだろうか。条例可決から2ヶ月ほど経った今、講談社発行の写真週刊誌「FRIDAY(フライデー)」(2011年2月25日号)のインタビューで、井上氏がいま一度、条例に対してはっきり「反対」の姿勢を示した。インタビューでは長年にわたり出版業界に身をおいてきた井上氏の”強い危惧”が語られている。

 現・角川書店社長の井上伸一郎氏は、1980年早稲田大学在学中に雑誌の副編集長に就任、以来「月刊ニュータイプ」「月刊少年エース」など多くの雑誌編集に携わったのち、2007年角川書店(新社)の代表取締役社長に就任した。井上氏が「東京国際アニメフェア」への出展中止をTwitter上で明言したのは2010年12月8日。その内容は、次のようなものだった。

「さてこの度、角川書店は来年の東京アニメフェアへの出展を取りやめることにいたしました。マンガ家やアニメ関係者に対しての、都の姿勢に納得がいかないところがありまして」

 インタビューにおいて井上氏はほかの出版社には相談せず「黙っていられなかった」からこのような発言をしたと説明。「表現の仕方は、作家や私たち出版人が考え、修正するもので、お上が規制するものでは決してありませんから」と話している。『あしたのジョー』を描いたちばてつや氏らマンガ家の抗議の声を一切顧みなかった都の姿勢にも批判的だ。

「石原都知事の発言は職業差別であり、マンガ・アニメというジャンル差別です。そもそも、現実とフィクションに関連性はない。(中略)今の若者だって、現実とフィクションは分けて考えているから、過剰な心配をする必要はありません」

 また、過激な表現を含む作品が多く出回っていることが問題だとするのなら、出版業界が「自浄努力をすればいい」とも話し、条例改正の不必要性を主張。規制によって若者の中にガスが溜まって青少年の犯罪を増やすきっかけになることへの危惧を示した。さらに「施行規則に”優良”な作品を都知事が表彰するなどとも書いてある」ことにも触れ、「戦時中の思想統制を連想」させる、「お上に褒められる作品を作って喜ぶマンガ家なんていないはず」と憤りを示していた。

 このように一貫して「東京都青少年健全育成条例」に否定的な姿勢が貫かれているインタビューは、最後にこのように締めくくられている。

「日本のマンガ・アニメは、今や世界的スタンダードです。そうした日本文化の価値を、世界のほうが逆に日本の為政者に教えるという皮肉な展開になるかもしれませんね」

【関連サイト】
FRIDAY(フライデー)講談社発行の写真週刊誌

(古川仁美)

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