Song Review:映画『ワイスピ』とともにヒット中のウィズ・カリファ「シー・ユー・アゲイン」に込められた“ファミリー”を巡る物語を紐解く
映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』(原題『Furious 7』)のサウンドトラックに収録されたウィズ・カリファの「See You Again feat. Charlie Puth」が、4月25日付のBillboard Hot 100でトップに躍り出て以来、6週連続の首位を記録している。デジタル・シングルとしてのリリース当初は、100位からのスタートであった。映画自体が大きなヒットを収めており、ウィズ・カリファ自身も昨夏にはアルバム『Black Hollywood』をチャート1位に送り込んでいる人気者なのだが、「See You Again feat. Charlie Puth」 ヒットの背景には、『ワイスピ』シリーズと人々を巡る物語が横たわっている。
「See You Again」として世に放たれることになる楽曲の根幹は、ニュージャージー出身の若手シンガー・ソングライターであるチャーリー・プースによって書かれた。この曲のピアノと美しいコーラス・パートを担っているシンガーだが、製作の過程で俳優のポール・ウォーカーを追悼するナンバーとして纏められ、映画制作会社に持ち込まれることになる。結果的には、前作『ワイスピ』サントラにも2チェインズと共に「We Own It(Fast & Furious)」で参加したウィズ・カリファに白羽の矢が立ち、彼がラップ・パートを受け持つコラボ曲として完成した。
ヴィン・ディーゼルと共に『ワイスピ』シリーズの多くで主役級の活躍を見せてきた俳優ポール・ウォーカーは、シリーズ第7作『~SKY MISSION』の撮影期間中である2013年11月に、同乗していた友人の車が交通事故を起こして他界。彼の死によって撮影は延期されたが、ウォーカーの実弟たちが残りのシーンの代役を務める形で『~SKY MISSION』はようやくクランクアップし、公開を迎えることになる。「See You Again」は、ウォーカー不在の日々を噛み締めながら《いずれまた会おうぜ》と優しく語りかける楽曲である。
激しいカーアクションが織り成す舞台で、ライバル的関係でありながらも物語の中で次第に友愛と絆を深めてゆくドミニク(ヴィン・ディーゼル)とブライアン(ポール・ウォーカー)が描かれてきた『ワイスピ』。2001年の第1作から10年以上に渡り、極限の緊張感の中で育まれる友愛(チームを“ファミリー”と呼ぶ)を目の当たりにしてきたファンは、「See You Again」の美しく哀しい旋律に、その記憶を重ね合わせることになる。
チャーリー・プースが手掛けたメロディとピアノ、コーラス・パートは、それだけでも充分に高い完成度を誇っているのだが、ウィズ・カリファがワイルドに、そしてルーズに友愛のラップ・パートを加えることによって、深く情緒的な「See You Again」は見事なほど男臭い“ワイスピ感”を醸し出している。ファンとしっかり共有された“ファミリー”への思いが、ポール・ウォーカーに寄せられる哀悼を一層深め、「See You Again feat. Charlie Puth」を支持する基盤となっているように思える。なお、先日行われたBillboard Music Award 2015では、ウィズ・カリファとチャーリー・プースにリンジー・スターリングのヴァイオリンも加わる編成で、「See You Again」のライヴ・パフォーマンスが繰り広げられている。
[text:小池宏和]
◎リリース情報
『ワイルド・スピード スカイミッション』
V.A.
2015/04/08 RELEASE
WPCR-16244 1,980円(tax out.)
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