映画『天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~』FROGMAN監督インタビュー 「誰も見たことのない『天才バカボン』を」
劇場のポスターを目にした誰もが二度見したであろう映画『天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~』(5月23日公開)。そのタイトルの通り、『天才バカボン』と『フランダースの犬』が映画でコラボを果たしたこの企画は、『秘密結社 鷹の爪』の生みの親にしてコメディアニメ界をけん引し続けるFROGMAN氏の発案によるもの。
このたびガジェット通信では、本作の監督・脚本、そして“バカボンのパパ”の声優を務めたFROGMAN氏を直撃。『天才バカボン』『フランダースの犬』の魅力や映画製作の裏側などについて、相変わらずの“イイ声”でたっぷりと語っていただきました!
<ストーリー>
東京の片隅で楽しく暮らしているバカボン一家に近寄る、暗黒組織インテリペリ。彼らはナゼか“バカボンのパパの本名”を知りたがっているが、パパに翻弄されるばかりで一向に本名を聞き出せない……。そこで、インテリペリの総帥・ダンテは、息子のバカボンからパパの本名を聞き出そうと目論み、召喚したのが地獄へと落ちた『フランダースの犬』の主人公ネロとパトラッシュの魂だった! 狙われたバカボンの運命は? そして、バカボンのパパの本名に隠された秘密とは……?
まさかのコラボが実現
――『天才バカボン』の長編映画化に際してまず考えたことは?
FROGMAN:赤塚不二夫先生だったらどんな映画を作るかなってことですね。彼はみんながビックリすることを次から次へと繰り出してきた破天荒な方なので、僕も今までに誰も見たことのない『天才バカボン』を発表して、観客に「訳が分からない!」って言わせてやろうと。
――なぜ『フランダースの犬』とコラボを?
FROGMAN:小さい頃にアニメのラストシーンを観て、「散々ひどい目にあったのにどうしてニコニコしながら天国に行っちゃうの?」って思ったんですよ。普通は人を憎んでオバケになっちゃうじゃないですか。そんな子ども心を振り返って、そこから始まる物語を作ろうと。悪いヤツらに操られて、現代によみがえって人類に復讐するネロとパトラッシュを描いてみたかったんです。それでバカボン一家と対決させたら面白いかなって。世間からは「名作をバカにしやがって」とお叱りを受ける覚悟をしていましたけど、割と「面白そうじゃん」って声が多くて嬉しいですね。
――瀧本美織さんのネロ役が意外でしたが、ピッタリで驚きました。
FROGMAN:オリジナルのネロって実は天真爛漫で子どもっぽい声を出すキャラクターなんですよね。でも今回は少し影のある声を求めて、美織ちゃんにオファーしました。
――『風立ちぬ』の菜穂子役にも通じますよね。
FROGMAN:『風立ちぬ』を観たときに、声の透明感とかピュアさが印象的でした。でも実を言うと、彼女は鳥取出身ということで、同じ“山陰組”として前々から注目していたんです。すごい美人じゃないですか。一緒に仕事したいなぁと(笑)。
『天才バカボン』で描くべきテーマとは
――FROGMANさんのナンセンスなギャグは『天才バカボン』と通じるものがありますよね。影響を受けていると感じますか?
FROGMAN:自分が新しいと思って自信満々に発表しても、悔しいですけど大抵は不二夫先生が40年前にやってることなんですよね。今回、『天才バカボン』の原作やテレビシリーズを見直して、自分は偉大なる才能のコピーのコピーのコピーのコピーでしかなかったんだと思い知らされました。真似しているつもりはなくても、どこかで赤塚イズムが染み込んじゃってるんですよ。半世紀経っても通じるギャクを生み出した方なので、本当に偉大です。
――改めて気づいた『天才バカボン』の良さがあれば教えてください。
FROGMAN:『天才バカボン』って行動目的がなくて、“バカ”なことが重要なんです。7つのボールを集めたりとか、海賊王を目指したりとか、そんな目的はなくてただひたすらバカ。でも不二夫先生が唯一バカボンのパパに与えたイデオロギーがあるとすれば、「家族を愛する」っていうことなんですよね。原作にも最重要のテーマとして描かれていて、映画を製作するにあたってもそこだけはブレないようにしようと気を付けました。
――自社コンテンツ以外のキャラクターをFlashアニメで動かすことに関して、技術面での難しさはありましたか?
FROGMAN:過去4回アニメシリーズ化された『天才バカボン』は、演出論が我々とまったく異なります。俯瞰(ふかん)で床が見えるような空間を作って、キャラクターを激しく動かすことでテンションの高い映像に仕上げているんです。一方で我々は、カメラが下から天井を見上げるような絵にして、キャラクターの上半身ショットをメインにした会話劇スタイルです。とは言え、完全にいつものようなアプローチに持ち込んでしまうと『天才バカボン』の良さが消えてしまうので、ひたすら微調整を繰り返してちょうど良い具合を探りました。
――原作を愛しつつ、新たなチャレンジをしたわけですね。この映画を観たらきっと赤塚不二夫さんも褒めてくれるんじゃないでしょうか?
FROGMAN:自分なりにすごく頑張ったので、「まあまあかな」と言ってくれたら嬉しいですね。でも「そんなことより飲みに行こうぜ」って言って欲しいです(笑)。
“アニメ界のみうらじゅん”を目指して
――劇中ではFlashアニメで長編映画を制作することについて自虐的なセリフがありましたが、FROGMANさんのおかげで、もうメジャーなジャンルとなったのでは?
FROGMAN:どうでしょうねぇ。でもメジャーになり過ぎても良くないと思っていて、所帯が大きくなり過ぎちゃうと僕らのビジネスモデルは成り立たなくなっちゃうんですよ。うちの社長が掲げている“ファスト・エンタテインメント”は、軽快さや手軽さが大切で、例えるならば“アニメ界のみうらじゅん”でありたいと。気軽にオファーしやすいイメージが大切なんです。
――ちなみに、今後また好きなキャラクターを自由に動かして良いと言われたらどんな作品が良いですか?
FROGMAN:ヒットするとか周囲が期待するとかは別として、昔から大好きな『あしたのジョー』ですかね。
――もちろん、ただボクシングするだけじゃないですよね?
FROGMAN:お互いにノーガード戦法で「あーらよっ」って言いながら最後まで打ち合わない『あしたのジョー』ってのもシュールで良いんじゃないですか? ちばてつやさんって冗談があまり通じない方だと聞いてるんで難しいと思いますけど(笑)。でも出来るならやってみたいですね。
――ぜひ実現してください(笑)。本日はありがとうございました!
「天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~」予告編(YouTube)
https://youtu.be/QMDY-2KBu7w
映画『天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~』公式サイト:
http://bakavon.com
監督・脚本:FROGMAN (「秘密結社 鷹の爪」etc.)
出演:FROGMAN、瀧本美織、濱田岳、犬山イヌコ、村井國夫
主題歌:クレイジーケンバンド『パパの子守唄』(ダブルジョイ インターナショナル / ユニバーサル シグマ)
オープニングテーマ:チームしゃちほこ『天才バカボン』(ワーナーミュージック・ジャパン)5月23日(土)、新宿バルト9他全国ロードショー
(C)天才バカヴォン製作委員会
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