運行中の線路脇5cmにひしめく屋台! スリル満点、バンコク国鉄のショートトリップへ(ガジェ通旅ライター:吉野歩)
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鉄道ファンならずとも、一度この目で見てみたい
バンコク中心街の‟名物”乗り物といえば、カーチェイスのように道路を爆走するトゥクトゥク(三輪タクシー)や路地をすり抜けるバイクタクシー。その一方で、電車はどうかと言えば……。高架鉄道も地下鉄もすっかり洗練されてしまって、安心して乗ることができる反面、物足りなさを感じる人も多いのではないだろうか?
そんな皆さんに力強くおススメしたいのが、タイ通の間ではもはや伝説となっている国鉄『メークローン線』である。終点のメークローン駅直前では列車が運行中にも関わらず、なんとその線路の上で市場が開かれているのだ。列車通過の直前になると、売り子たちはササッと軒をたたんで商品を引っ込め(といっても車体から5cm離す程度)、列車が去るか去らないかのうちに売り場を元のフォーメーションに戻し、何事もなかったかのように営業を再開する。
目前には列車が迫っているというのに殺伐とした感じは皆無で、いたってのどか。慣れたものである。ちなみに高さのない商品は、機体の底部に引っかかることがないので放置されたままだ。
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駅内には大きな市場がある。写真左端は、筆者の友人(タイ人)であるが、彼女らが立っているのもまさに線路の上。
このメークローン駅へは、国鉄マハーチャイ線とメークローン線を乗り継いで、バンコク中心街から約2時間半~3時間はかかる。しかし、その途中までの道のりでも、例えば片道30分もあれば ローカル線のディープな雰囲気を味わうことは可能である。というわけで、今回は実際にマハーチャイ線に乗ってみた。
大通りを曲がると突然現れる『ウォンウィエン ヤイ駅』
チャオプラヤ川の西側に位置する始発駅『ウォンウィエン ヤイ駅』は、BTS(スカイトレイン)『ウォンウィエン ヤイ駅』から徒歩10分。同名なのでややこしいが、違う路線である。
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大通りを1つ左に曲がってすぐに…
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駅が現れる。
とにかく線路がボーダレス。利用客に緊張感というものをまったく与えないフレンドリーな距離感が魅力である。
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ホームのちょっと先にある光景。10分後には列車がここを通るというのに、線路をゆったり散歩する地元民がのどかすぎる。鉄線からわずか40~50cm脇にも屋台がひしめき、出発前の腹ごしらえをする乗客も目立った。大丈夫なんだろうか。
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ピザは59バーツ(約210円)。列車の中で食べる場合は10バーツ(約36円)の追加料金が必要だ。
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終点まで1時間乗っても料金はたったの10バーツ。格安である。利用客はもっぱら地元の人たち。
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家路に着く学生たちも、発車まで腹ごしらえだ。
ドアのない2等車は、開放感抜群
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クーラーのない2等車にドアは……ない! ディーゼルのエンジン音を響かせながらガタゴトと進む電車は、慣れてくると何ともいえない開放感である。
そして車窓から流れる景色は、市街地の喧騒(けんそう)を忘れるほどに穏やかだ。沼の水面に建ちならぶ民家の群、ホテルらしき白い建物の裏に広がった湿地の草原、乾いた国道沿いに車の部品店が点在する一画等々。発車からわずか15分ほどでもこのぐらいの景色の変化が満喫できる。
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マハーチャイ線は5分間隔で駅に停車するので、飽きたらいつでもドロップアウトは可能。あとは周囲を散歩しながら、のんびり帰りの列車を待つのもいいだろう。タクシーをひろってBTSのウォンウィエン ヤイ駅まで戻るのであれば、往復、正味1時間半ほどでローカル線気分が堪能できる。
なにしろ根っから地元仕様の路線なので観光地的な対応はゼロだし、日本語はおろか英語も通じない。しかしその分、バンコクの「素の日常」に浸れる貴重なショートトリップとなること請合いだ。まったく言葉の通じなかった筆者も、窓口で10バーツコインを1つ渡しただけで電車に乗れた。問題ないだろう。
ちなみに終点までの10バーツといえば、タイのコンビニで売られているミネラルウオーター500mlとほぼ同じ金額である。ここはペットボトルをグイっとあおるぐらいの気軽さで、ローカル線も1本試してみては?
(写真撮影:メークローン線=筆者友人Aewさん。マハーチャイ線=筆者)
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