著作権侵害に揺れる「バイラルメディア」の没落
バイラルメディアの「BuzzNews」がサービスを終了
バイラルメディアの「BuzzNews」が、サービスを終了したというニュースがありました。バイラルメディアとは、簡単に言えば「他人に教えたくなるようなインターネット上のコンテンツを集め、SNSを通じて短期間でアクセスを稼ぐサイト」のことです。
人々は、いつも何か面白そうなものを手早く見つけたいと思っています。ネットのどこかにはそれがありますが、検索エンジンも「面白いものを探して」と言われるだけでは困ってしまいます。そこに登場したのが、バイラルメディアでした。
アクセスを稼ぐSEO対策とも手法が異なる
つまり、バイラルメディアは「(1)コンテンツをネット上の他サイトから拾ってくる」「(2)そうしたコンテンツを集約している」「(3)アクセスを稼ぐためにSNSを使う」などの点に特徴があります。
自分で独自にコンテンツを作成してアクセスを稼ぐサイトは、(1)の条件に合わないため、バイラルメディアではありません。また、独自コンテンツは簡単に量産できるものではありませんが、バイラルメディアは常に新しいものを拾ってくるので、「何か面白いもの」が常に補充されます。
個人がたまたま面白い動画を見つけ、日常の一コマとしてブログに書き込むこともありますが、これも(2)の条件に合わないのでバイラルメディアではありません。なお、従来までアクセスを稼ぐといえば「Yahoo!」や「Google」等の検索エンジンで上位表示される対策を行うSEOでしたが、バイラルメディアの手法はSNSによる拡散を意図している点でSEOとも異なります。具体的には、記事上にツイッターやFacebookのボタンを設置し、簡単にツイートや「いいね!」をすることができます。
致命的になりかねないのが、著作権に関する問題
さて、バイラルメディアは「他人のふんどしで相撲をとる」サイトだとも表現できます。コンテンツは他者がつくったもので、それを広めてもらうのもSNSです。拾ってきたコンテンツを張り付けるプロセスは必要ですが、それも利用者に任せ、アウトソーシングサイトに安い価格で発注することもあります。それでいながら、アクセスを稼いで広告収入を得るわけですから当然、風当りも強まります。
特に致命的になりかねないのが、著作権に関する問題です。冒頭に挙げた「BuzzNews」サイトの閉鎖も、著作権問題が大きかったようです。現状、著作権侵害は親告罪なので、海外の動画や著作権者がむしろ拡散してもらいたがっている場合、著作権者がはじめから諦めてしまう場合などは、著作権を侵害していたとしてもバイラルメディアにダメージはありません。
バイラルメディアの没落は意外に早い
しかし、著作権意識の高い制作者の作品は、バイラルメディアにとっては地雷です。著作権侵害で訴えられてしまうからです。もちろん、その場合でも、「著作権法上認められている『引用』である」等の論理で、バイラルメディアの反論が予想されます。しかし、自分の利益のために他人を利用しているだけという状況を鑑みれば、その反論にも厳しいものがあります。
「何か面白いもの」を手っ取り早く見たい、他人に教えたいという利用者がいる以上、「バイラルメディア的」なものは存続するでしょう。しかし、「他人のふんどしで濡れ手に粟」という不合理さは、どこかで解消されていくものです。検索エンジンが個人ごとに「面白いものを探してくる」時代になるか、ネット上の著作物の利用が本来の著作権者に分配されるようになるか、法的規制が強まり著作権者の意識が高まるか、どんな形になるにせよ、バイラルメディアの没落は意外に早いのかもしれません。
(小澤 信彦/弁理士)
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