酒税改正で「ビール戦争」幕開け 勝負の分かれ目は
早ければ2016年にも酒税改正?色めき立つビール業界
「早ければ2016年にも酒税改正の法案が通るかもしれない」。これを受けてビール業界では、各社が「ビール」に力を入れ始めています。酒税改正では、現在の350ml缶あたりにかかるビール77円、発泡酒47円、第3のビール28円という麦芽比率などに応じて違うビールの酒税を見直し、一律約55円に揃えられます。
つまり、この法案が通ることによって、発泡酒や第3のビールは増税となり、ビールは減税になるため、「消費者は再びビールを選択するようになる」と予測されているのです。
では、一斉に各社がビールに注力している中で、顧客に選ばれるためにはどのような戦略が必要なのでしょうか?
「〇〇するならこのビール」。商品の価値を定義できるか
酒税改正を控え、各社が一斉に行ったことは新商品の投入でした。しかし、選択肢が増えてしまい、顧客はどれを選んだら良いのか迷ってしまいます。そこで、ポイントになってくるのが「商品の価値を定義する」こと。言い換えると、顧客が選ぶ基準をつくる、ということです。
「選ぶ基準をつくる」という意味では、昨年、各社が行っていた「必ずもらえるキャンペーン」は効果的でした。ただ、その場合、商品の「価値」で選んでいるのではありません。「オマケが欲しくて、その商品を買っている」ということなので、オマケを手に入れたり、キャンペーンが終わってしまったら、その商品を選ぶ理由が無くなってしまいます。そうならないように「商品の価値を定義する」ことが、とても大切なのです。
最近の傾向としては「なぜ、このビールがおいしいのか?」というこだわりを紹介する方法が主流ですが、例えば、「焼き魚にはこのビール」や「焼肉するならこのビール」というように、「おいしいビール」ではなく「〇〇するならこのビール」という形でイメージを浸透させるという方法もひとつの戦略です。
発泡酒や第3のビールのファンを逃さない商品戦略も必要
そして忘れてはいけないのは「発泡酒や第3のビールファン」の動向です。酒税改正によりビールが減税されるからといって、顧客全員が喜ぶわけではありません。なぜなら、現在、発泡酒や第3のビールを購入しているのは、「ビールは高いので、仕方なく発泡酒や第3のビールを選んでいる」という人だけではないからです。「ビールは苦手だけど、発泡酒や第3のビールなら飲める」という人にとっては、増税になってしまう酒税改正は喜ばしいものではありません。
そう考えると、酒税改正によってビールを選択するようになるのは、値段的に仕方なくビール以外を選択している層だけであり、それ以外の人にとっては商品の値上がりになってしまうため、総合的に見ると客数が減ってしまうという可能性も否定できません。それを防ぐためにも「ビール」だけでなく、発泡酒や第3のビールのファンを逃さない商品戦略も必要となってくるでしょう。
酒税改正の動きを控え、各社どのような戦略に打って出るのか?お酒が好きな一人として、注目していきたいです。
(伊藤 伸朗/集客・顧客情報活用コンサルタント)
最新の気になる時事問題を独自の視点で徹底解説するWEBメディア「JIJICO」。各分野の専門家が、時事問題について解説したり、暮らしに役立つお役立ち情報を発信していきます。
ウェブサイト: https://mbp-japan.com/jijico/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。