地元愛で経済活性「観光振興」を民間の手で
観光産業の担い手は、地元住民など地域全体に広がる
地元経済活性化の新たな切り札として、観光産業を盛り上げていこうという動きが各地で始まっています。これまで、地元観光の活性化策は、役所の観光主幹部所と宿泊業者や交通関係業者など、直接的に観光客に接する関係者を中心に取り組まれてきました。しかし、観光産業盛り上げの担い手は、近年では地元住民による観光ボランティアガイドの登場など、地域全体へと広がりを見せています。
見知らぬ地に旅をしたとき、地元の人との何気ないふれあいが旅行の満足度を上げていることに気づきます。かつての観光は、名所旧跡を巡り「見る」ことにより満足感を得ることが大きかったのですが、今では単に「見る」だけであれば、旅番組の充実などもあって映像を通して代理体験できる機会が多くなりました。
旅先での「ふれあいの創造」が地元住民に任された役割
しかし、代理体験できない旅の醍醐味は、旅先に暮らす人々と、あたかも旧知の間柄であるように交流することによって得られる充実感ではないかと思います。それは一時的なものかもしれませんが、初対面の人たちで気持ちが通じ合うことは、まさに旅で得られる最大の喜びでしょう。
地元の生活者にしてみれば、観光客と交流することに経済的なメリットはありません。それでも世界各地に無数にある観光地の中から地元を選んでくれた旅行者へ好意を持って接することは、誇りを感じることにもなるでしょう。
「官」からの働きかけで「おもてなし」の心を醸成
「官」の役割は、地元の知名度アップを図ると同時に、訪れた観光客が必要な観光情報を確実に入手し、移動手段を適切に確保し、交通事故や犯罪に巻き込まれることがなく安全に滞在し、リーズナブルな価格で宿泊や飲食の機会に恵まれるようなシステムを構築することにあります。しかし、それはいわば基礎的な観光基盤として必要なのであって、それだけでは十分とは言えません。
「民」の役割として真に必要なのは、観光客が地元を訪問してくれることに感謝しつつ、彼らの観光がより良いものとなるような対応を、すべての地元住民が取れるようになることです。ただ、誤解がないように付け加えれば、その対応は特別なものではなく、隣人と挨拶するように、あるいは、隣人から尋ねられたことに答えるように、ごく普通の対応であれば良いのです。
観光産業盛り上げ策のポイントは、地元住民が隣人と接するのと同様に観光客と接していけるような「官」の側からの情報提供と、民間に「おもてなし」の気持ちを醸成していくことにあると思います。
(加藤 博幸/経営コンサルタント・中小企業診断士)
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