介護施設つぶす脅威「集団インフル」に備える保険登場
高齢者施設で、インフルエンザに集団感染した入所者が死亡
毎年、冬になると猛威をふるうインフルエンザですが、例年その流行は12月から3月とされています。今シーズンは昨年11月頃から流行り始め、2月上旬になってもまだ東京都の一部では流行警報発令中となっていますので、終息までにはもう少し時間がかかりそうです(2月6日発行 東京都インフルエンザ情報第13号)。
インフルエンザは抵抗力の弱い子どもや老人が最もかかりやすく、罹患すると、時に命に関わるような重篤な症状に陥りかねません。最近でも、福岡や和歌山の高齢者施設で、インフルエンザに集団感染した入所者が死亡したというニュースがありました。厚生労働省では、こうした事態を防ぐため「高齢者施設感染対策マニュアル」を出すなどして、集団感染の防止に努めるよう呼びかけています。
感染拡大すれば収益の損失は避けられず、休業手当の支払いも必要
毎年この時期になると、利用者だけでなく、職員の体調管理にも配慮が必要になるため、「普段以上に気を遣うよね」とこぼす施設関係者も少なくありません。感染が拡大し、施設の一時的な閉鎖や、利用者受け入れの一時停止などに追い込まれた場合、収益の損失は避けられず、経営を圧迫する可能性は極めて高くなります。また、そうなれば、職員も休ませざるを得ず、休業手当の支払いも必要になります。
休業手当とは、働いていない人に給料を支払わない「ノーワーク・ノーペイの原則」とは異なり、事業主の都合で職員を休ませた場合、平均賃金の6割以上を支払わなければならない、というものです。集団感染という、一見、事業主の都合ではないように思えるこのようなケースでも、当該感染の拡大を未然に防げなかったことに対する責任と労働者保護の観点から、その支払いは避けられないでしょう。そう考えると、労務管理の視点から見てもリスクの高い問題といえます。
損失を補償する保険発売へ。リスクヘッジとして選択肢の一つに
そんな中、損保ジャパン日本興亜(株)から「インフルエンザ等集団感染休業補償保険」という商品が発売されます(既存の店舗休業保険の特約として新設された保険ですので、単独での加入はできないそうですが)。
これは、デイサービスなどの介護施設で、インフルエンザやノロウイルスなどによる感染拡大が原因で、施設の一時閉鎖や利用者の受け入れの一時停止があった場合、その間の利益の損失を補償するというものです。
保険料負担や費用対効果を考えた場合、必ずしも加入しなければならない、というものではありませが、予期せぬ利益損失に対するリスクヘッジとして、選択肢の一つに加えておくのも良いかもしれません。
(五井 淳子/社会保険労務士)
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