歩きスマホ、法規制の必要性は?
スマホ利用者の約半数が「歩きスマホをしている」
今月、電気通信事業者協会が実施した、いわゆる「歩きスマホ」の実態調査によれば、利用者の半数近くにあたる44.8%が「歩きスマホをしている」と回答したということです。
「歩きスマホ」とは、特に人が集まる場所や公共の場で、歩きながらスマートフォンを見たり操作したりすることをいいます。「歩きスマホ」による駅ホームからの転落事故や、他人への衝突事故は、年々増加して大きな問題になっています。「歩きスマホ」中の視野は、通常の歩行時に比べて約20分の1にまで狭くなってしまうという研究もあります。
この問題に対して、業界団体は「歩きスマホ」の危険性を啓発する防止キャンペーンを行い、NTTドコモなどは、スマートフォンを見ながら歩くと、歩行中であることを検知し警告画面を表示する「歩きスマホ防止機能」を提供するなど、業界としての一定の対策はとられています。
約6割が「歩きスマホ」を法律や条例で規制することに賛成
しかし、日本では、自転車に乗りながらの携帯電話を禁止する法規制はあっても、「歩きスマホ」を規制する法律や条例はありません。法規制としては、米国などではすでに一部の州で、「歩きスマホ」を規制し違反者に罰金を課す条例も制定されるなど実例はあります。
また、ある民間の調査では、スマホ利用者も含めて、全体の約6割の人が「歩きスマホ」を法律や条例で規制することに賛成しているというデータもあるようですが、実際に「歩きスマホ」に対する法規制を行うべきでしょうか。
「歩きタバコ」の例から見ると、規制の効果は見込める
似たような規制としては、「歩きタバコ」の条例規制があります。これは2002年に東京都千代田区が条例で定めたのが全国最初で、歩行者が特に多い地区に限定して「歩きタバコ」を禁止しています。違反者には2,000円の過料が課されるのですが、この条例施行により、1年後には吸い殻の数が1割以下に減り、大きな効果を上げています。同様に条例で「歩きタバコ」を規制する札幌市でも、市の追跡調査で、条例施行後に「歩きタバコ」が9割以上減ったという結果も発表されています。
「歩きスマホ」について、国土交通省や東京消防庁が発表したデータでは、「歩きスマホ」による転落や衝突事故による救急搬送の事例が複数報告されており、その被害が小さくありません。そのため、駅や駅周辺など場所を限定した上で、条例で規制することには十分意味があると思います。「歩きタバコ」の例から見ると、ある程度の効果も期待できそうです。もちろん、その場合の規制はスマートフォンだけでなく携帯電話についても同様に必要でしょう。
また、法規制だけでなく、NTTドコモの「歩きスマホ防止機能」のような機能の積極的な搭載も求められます。自動車走行中のカーナビ操作やテレビの視聴を制限するようなハード面の対策と連携することが、効果を一層高めることにつながります。
(永野 海/弁護士)
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