9割近い生存も実現、白血病治療が進化、米国血液学会より

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白血病は「血液のがん」とも呼ばれる。血液を作る細胞の遺伝子が突然変異を起こして無制限に増殖する病気である。

新しい治療法が次々と開発されており、従来ない治療成績を上げる事例も多いようだ。

9割を超える生存を達成

現在では抗がん剤や造血幹細胞移植の進歩などで完治も可能となっている。

急性白血病のようなタイプの白血病では5年生存率の平均はいまだに約50%にとどまる。難しい病気であることに変わりはない。

そうした状況が好転しつつあるのも白血病治療の特徴かもしれない。生存率は9割近くまで高まっている事例も出ているようだ。

世界最大の血液学の学会、米国血液学会の第56回総会がサンフランシスコで2014年12月6日から9日まで開催されて、白血病の最新治療が披露された。米国血液学会による注目の発表から抜粋していく。

難しい子どもの白血病で成果

まず、子どもの白血病には朗報があるようだ。白血病はがん化する白血球によって、リンパ球性、骨髄性などと分かれている。成果が報告されたのは、リンパ球性白血病のうち、Tリンパががん化する「T細胞性リンパ球性白血病」というタイプだ。

まれなタイプの延命が難しい白血病だが、個別対応の治療を行ったところ期待以上の効果が得られたという。シアトル、ワシントン大学の研究だ。生存率を9割近くに高められるという。

1100人強の子どもを対象とした大規模な研究の成績となっており、過去最大規模のようだ。

この病気の治療成績には「免疫表現型」が大きく影響する。タイプは3つに分けられる。一つは「初期胸腺前駆体(ETP)」と呼ばれる免疫表現型のあるタイプ。全体の1割程度が当てはまる。さらに、成熟していない細胞から成る「Tリンパ芽球性白血病」というタイプ。全治の2割弱となる。この最初の2つのタイプは、互いに近い性質があって、一般的な治療が効きにくい。

さらに、初期胸腺前駆体の免疫表現型がない子が7割強と多数を占めている。

今回検証の対象となったのは、最初の治療の成果に合わせて、追加治療をチューニングしていくというものだ。

研究では、最初に標準的な薬を全員に行って、その後の再発の危険度に合わせて、再発の可能性が高いと見ると、追加の治療を行う。放射線治療とネララビンによる治療を追加する。前に紹介した似通った治療の効きにくい2つのタイプは再発しやすいと判断される場合がやはり多い。

結果として、個別の治療性かに合わせて追加の治療をしたところ、生存率はどのタイプでも9割を超えた。研究グループは、「初期胸腺前駆体の免疫表現型のあるタイプの子どもで、免疫表現型のないタイプと同じくらいの治療成績を上げられると示した最初の大規模な研究結果となった」と説明している。

今後、この難しいタイプの子どもの白血病の治療成績が向上すると考えられそうだ。

2倍の治療効果向上

一方で、同じく若い人の白血病で、別の成果も上がっているようだ。

16歳〜39歳という若い急性リンパ球性白血病の人に対する治療に、一般的によりより幼い子どもに実施する強慮療法が効果的だと分かったというものだ。

米国の研究グループが行う臨床試験の中間報告によると、若い人には、通常、成人向けの治療を処方されているが、約300人に対して、子供向けの強化療法を実施して効果を検証してきた。2年間にわたって追跡したところ、約8割が生存し、約7割は症状が消えていた。以前は、無症状での延命率は約4割に過ぎなかったので2倍近い治療効果の改善と言える。

従来の研究を踏まえて治療を微調整することで、成績が着実に進歩しているようだ。

抗がん剤の「ソラフェニブ」を一緒に

腎臓や肝臓のがんに対して使われている「チロシンキナーゼ阻害薬」という抗がん剤が白血病でも注目されそうだ。

若年の急性骨髄性白血病の標準的な薬に、チロシンキナーゼ阻害薬「ソラフェニブ」と呼ばれる薬を加えて効果を検証している。ドイツのドレスデン大学の研究グループが、3年間にわたって薬の効果を検証したものだ。

結果として、ソラフェニブを加えた方が延命期間は20.5カ月を中心として分布。比較対象となった、実際の薬ではないプラセボを加えた場合、9.2カ月を中心として分布していたので改善していると見られる。年間、無再発で生存していた人の割合は、ソラフェニブを追加した場合には約6割で、プラセボのグループの約4割と、大幅な改善となっていた。

ただし、ソラフェニブを加えると発熱、出血などの問題も発生する可能性があり、副作用として注意が必要になりそうだ。

9割超で完治に近い効果も
このほかにもさまざまな新しい治療の成績が出ているようだ。

例えば、「フィラデルフィア染色体」と呼ばれる染色体の部分の移動を伴う急性リンパ性白血病の高齢の人に対して、チロシンキナーゼ阻害薬「ニロチニブ」と呼ばれる薬の効果を検証した欧州の研究結果。9割を超える人で病状が完全に改善したという結果となっている。

このほか「IDH2阻害剤」と呼ばれる薬によって、IDH2と呼ばれる遺伝子の突然変異のある進行性の血液悪性腫瘍を治療し、約6割近くで病状が改善したという報告も米国から出ている。

急性骨髄性白血病の人の治療として、シタラビンと呼ばれる一般的な薬にボレロキシンと呼ばれる薬を追加して使った場合の治療成績についても米国から報告されている。この治療については効果が十分に確認できなかったようだ。

白血病の治療は進化が続く。日本でも恩恵を受けられることになると期待が持てそうだ。

文献情報

“Novel Combinations of New and Existing Therapies Yield Promising Results for Leukemia Patients with Poor Prognoses”, Press release by the American Society of Hematology, Dec 07, 2014.

http://www.hematology.org/Newsroom/Press-Releases/2014/3483.aspx

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