減税5%政策の効果、名古屋市発表に疑問
市内総生産は年平均1128億円増え、減税効果があるという見方
名古屋市では2012(平成24)年度以降、市民生活の支援及び地域経済の活性化を図るとともに、将来の地域経済の発展につながるよう、市民税の一律5%減税を実施してきました。
その効果の検証を行うため「市民税 5 %減税検証プロジェクトチーム」が民間シンクタンクに委託。結果が11月11日の市議会財政福祉委員会で発表され、2012年度から10年間で市内総生産は年平均1128億円増え、減税効果があるという見方が示されました。
115億円の減税で10倍以上の効果が出ることは有り得ない
財政福祉委員会副委員長である斎藤まこと議員(民主党)や、同委員の横井利明議員(自民党)のブログによると、検証プロジェクトチーム報告書には、「115億円の減税を行うことにより、10年間で1.76%程度、年平均では0.17%程度(200億円程度)の押し上げ効果が認められる」と記載されており、委員会の発表とでは、金額に大きな差があります。そもそも115億円の減税で年1128億円という10倍以上の効果が出ることは常識では有り得ないことです。200億円の効果と発表されたことが真実のように感じます。
同日の財政福祉委員会では、この検証結果について、減税とほかの様々な施策による経済効果を比較するべきといった異論も唱えられました。
河村市長が言うように、減税財源をすべて行政改革による歳出削減で賄われたとするなら、減税分のプラスと歳出削減分のマイナスが同額になって市内総生産は変わらないはずです。さらに、減税分が市内での消費に回らず貯蓄に回ったり、名古屋市以外での消費に回れば、むしろ全体として市内総生産がマイナスになる可能性もあります。
経済効果を大きくするためには法人市民税減税が効果的
ところで、施策の経済効果を大きくするためにはどうすれば良いかをシンプルに考えると、景気回復のためになるように最も合理的にお金を使ってくれるところにお金を渡せば良いということになります。日本人はいつ来るかわからない災いに備えてひたすらお金を貯め込む傾向にある農耕民族ですから、個人への減税は消費に回らない割合が高いと予想されます。一人あたりの平均減税額が1万円以下と少額であれば、なおさら貯蓄に回る率が高くなるでしょう。
その意味では、個人ではなく企業にお金を渡す方が効果が高いと予想されます。ただし、公共投資は建設業などの特定業界に効果が偏るという問題がありますので、広く企業にお金が行き渡る法人市民税減税、つまり企業に限定した減税が最も効果がある施策だと考えます。
(米津 晋次/税理士)
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