エボラ熱流行で外貨投資にリスクは?
懸念だけで相場は動く。カカオ豆の価格は1.5倍以上に
現在、日本は他の先進諸国と比べて非常に金利水準が低いために高金利に着目した外貨投資が人気を集めています。外貨投資で利益が上がるかどうかは、「金利」だけでなく「為替相場」が大きく影響します。為替相場は、各国の景気や政情不安、要人の発言等を受けて変動します。それでは、今年流行したエボラ熱は外貨投資にリスクを与えるのでしょうか?
これまでのところエボラ熱は、ギニア、リベリア、シエラレオネの3ヶ国に感染者や死亡者が集中し、死亡者の数は約5000名と言われています。医療制度も発達していないため、放置されている患者も少なくなく、感染者が多い地域では、村や集落が丸ごと捨てられてしまっているケースもあるようです。
これら3ヶ国では、自国経済への打撃が深刻になりつつあります。また、この3ヶ国のすぐ東にあるガーナとコートジボボワールという国は、世界のカカオ豆生産の60%程度を占めているため、今後これら2ヶ国にも影響が及ぶのではという懸念が高まっています。懸念だけで相場は動きます。カカオ豆の価格はここ1年で1.5倍以上に。カカオ豆はチョコレートの原材料であるため、今後チョコレート価格に影響を与えるものと予想されています。
エボラ熱とSARS流行時との違い
経済に最も影響を与えるのは、エボラ熱による人々への心理的側面です。患者との接触を避けるために港湾・空港の閉鎖が考えられるため、株式市場で航空株が売られたり、治療薬や防護服の株が買われたりしています。
病気で株式市場が大暴落した例では、2002年末から2003年にかけて流行したSARS(重症急性呼吸器症候)があります。SARSは空気感染の恐れもあったため大パニックとなり、香港国際空港が閉鎖されたりして香港株全体が暴落したのです。また、一時的に香港への渡航者や、人々の外出が減少し、香港や中国の消費が落ち込むなど、実際の企業業績にも影を落としました。
一方、エボラ熱は今のところ、感染力は強いものの、基本的には血液などの体液に直接触れないと感染しないと言われています。SARS流行時の香港株式市場のような事態にはなりにくいということです。ただし、感染が拡大すれば間違いなく株式市場にはマイナス要因となります。致死率が50~90%と非常に高く、明確な治療法が確立されているわけではないからです。
現時点では市場への影響は限定的
米国ニューヨークにおいて 陽性反応者の存在が確認されるなど、エボラ熱に関する関心は、依然として高い状況です。今以上に感染者が増えれば、米消費者が外出や買い物を控えかねないとの懸念が市場で強まっています。特に先進国において、感染の拡大が食い止められるかどうかが市場への影響を考える上での大きなポイントになるでしょう。
現時点での市場への影響が限定的であるのは、あくまでも「世界的な流行はない」という前提に立っているからです。
(福間 直樹/ファイナンシャルコンサルタント)
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