12月の選挙は本当に投票率が下がるのか──45年前には仕事納めの土曜日投票も
来月12月に2年ぶりとなる衆議院の解散総選挙が行われるとの見方が強まっています。過去46回の衆議院議員総選挙で12月に投票が行われるのは1969年(昭和44年)、1972年(昭和47年)、そして前回の2012年(平成24年)の3回で、特に前回の総選挙は過去最低の投票率を記憶したこともあり、ネット上では「最初から低投票率を狙っているのではないか」と言う疑問の声や「年末の忙しい時期に選挙をされても投票に行けない」と言う批判の声も上がっています。
「12月の選挙は低投票率」は本当か
実際に解散総選挙が行われる場合の日程は12月2日公示・14日(茨城県議会議員選挙と同日)投開票、もしくは9日公示・21日投開票との観測がなされていますが、12月に投票日が設定された過去の事例では、第2次佐藤内閣の下で行われた1969年の第32回総選挙(定数486)の12月27日投開票という期日が史上最も年末に近い日程で行われた選挙となります。また、日本で戦後に実施された普通選挙は日曜日に投開票を行うのが通例となっていますが、公職選挙法には投票日を設定する曜日を限定するような条文はないため、この選挙では土曜日に投票が行われました。主な理由としては、この日を最後に役所が仕事納めに入ってしまう関係上からとみられますが、投票率は前回(1967年1月29日)の74%から69%に低下し、得票数では前回並みだった自民党が288議席に追加公認12を加えて300議席と大勝、野党第一党の社会党は投票率低下が響いて90議席と3桁を割り込む結果となっています。
4年後の1972年12月10日(日)に田中角栄首相の下で行われた第33回総選挙(定数491)では投票率がやや上向いて72%となり、自民党は過半数を維持したものの追加公認を含めて16議席減と若干の退潮傾向を印象付ける結果となりました。当時は2000年代以降の傾向よりもずっと投票率が高く、選挙制度も異なるためどの政党に有利かと言うことまでは一概に言えませんが、「12月投開票だから投票率が下がる」と言う通説は過去のデータから見ると必ずしも当たってはいないようです。
また、国政ではありませんが、年をまたいだ選挙日程が組まれたこともあります。1999年(平成11年)の愛媛県知事選挙では年明けの1月3日に投票日が設定され「現職有利な投票率低下を狙っている」と言う批判が続出しましたが、蓋を開けてみると前回(1995年)より9ポイントも投票率が上がって現職が落選する要因の一つとなりました。
欧米では平日投票が法律で定められている国も
欧米では日曜日に教会へ礼拝に行く習慣の関係から平日に投票日が設定されることも多く、米国では「偶数年の11月第1月曜の次の火曜日」が上院(33議席ずつ)と下院(全議席)、また4年に1回のうるう年は大統領選挙の投票日と決められています。イギリスでは国政選挙に関する規定を定める1983年国民代表法(1983 Representation of the People Act)で投票日が設定可能な曜日が「木曜日」に限定されており、庶民院(下院)の総選挙は5月の第1木曜日に行われることが多くなっています。カナダでは「休日の翌日」とされているため通常は月曜日、祝日と重なる場合は火曜日が投票日となります。これらの国では日本と異なり投票日が平日であっても仕事を抜けて投票に行くことは「正当な理由」として社会的に認められており、投票率低下の要因とは考えられていないようです。また、韓国では国政選挙も大統領選挙も水曜日に行われますが、投票日は臨時の休日となるので「平日に投票」のケースには該当しません。
画像:1928年(昭和3年)の第16回衆議院議員総選挙(それまでの納税額に応じた投票資格が撤廃され「25歳以上の男子」に緩和されたため「第1回普通選挙」とも呼ばれる)で大阪府が作成した啓発用ポスター。この年の2月20日は金曜日だった。
(画像出典: http://commons.wikimedia.org/wiki/File:1928_Japanese_General_Election_Poster.JPG )
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