続々々・マスコミはウケる記事を書きたがる(メカAG)

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続々々・マスコミはウケる記事を書きたがる(メカAG)

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

続々々・マスコミはウケる記事を書きたがる(メカAG)

年金制度には2つの方式がある。積立方式と賦課方式がある。なんかネットでは積立方式の方がいいという主張が少なくないが、どう考えてもダメだろう。

積立方式は自分で若いころに積み立てて、自分が積み立てた分を老後にもらう。一見、確実に見える。自分が積み立てたものを自分が受け取るのだから、収支が合わなくなる心配もない。それが素人には「正しい」ように見えるのだろう。

しかし積み立ててから受け取るまで20年の時間経過があるわけで、その間に社会は変化する。直接的には物価が変動する。インフレが起きて物価が2倍になっても、積み立てた貯金は増えないのだから、価値が半分になってしまう。これでは困るだろう。現に戦争中と現在では貨幣価値がものすごく変動してるわけで。

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一方賦課方式は時間軸を同一にして、今現役の世代がいまの高齢者が受け取る年金を負担する。一見不自然に見えるけどこの方が本当は自然。年金制度がなければ親の老後の生活費を子供が負担しなければならないのだから、これは事実上の賦課方式。それを国家レベルでやりましょうということ。

当然物価変動やそれ以外の社会の変化(たとえばいま起きている少子高齢化問題とか)に対処するのが難しくなる。なので年金制度が行き詰まってるわけだ。でもそれは本来国民が負うリスクを、国が代わりに負ってるんだよね。いいかえれば破綻しない年金制度を作るというのは、変化のリスクを国民に押し付けるということ。

国民一人ひとりは立場が弱いのだから、20年という歳月の中で社会の変化を吸収するのは、国の方が結果的に国民には優しいはず。現行の年金制度を糞味噌に言ってる人が多いが、それは年金制度がなければ国民が追うリスクを、国が代わって負っているんだということを知るべき。

まあ起きることをすべて予測して、最初から変化に柔軟に対応できる制度を作っておけば良かったとは言えるけどね。

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もう一つ。集まった資金の運用の話。花澤武夫の発言のマスコミが取り上げた部分だけ読むと、預かった金を勝手に使うとは何事だ、詐欺じゃないかという気になるが、使わなかったら逆に問題なんだよね。正確に言えば資産運用をする必要がある。

もしそういうことを一切せずに、札束を銀行の大金庫に収めたら、ものすごい額の資金が市場から消えてしまうのだから、日本社会は不況になる。いまのデフレと同じですな。金が流通しないと経済活動が停滞してしまう。

だから資産運用するというのは正しい。逆にそうやって増やさないと物価変動で価値が下がった時に対応できないし。ようするに花澤武夫はそういうことを言ってるのであって、極めてまとも。預かった金を20年間、銀行の大金庫死蔵しておくなんてとんでもない。

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ただ最初の年金制度は積立方式からスタートした。これまでの話からいえば最初から賦課方式でスタートすべきだった。花澤武夫は当然そんなことはわかってる。(使い込もうが込むまいが)いずれ賦課方式に切り替えざるをえないのはわかっていたから、ああいう発言になる。

この点がある意味花澤武夫の優秀なところであり、ある意味狡猾なところなのだろう。国民のために年金制度は導入したい。しかしそのまま主張しても国会で通りそうにない。戦争中だし。んで「飴」を用意したわけだ。積立方式で始めれば、支給開始まで20年あるから、その間資金を軍事費に使えますよ、どうです?お得でしょ?と。

こういう政治力(寝技というか変化球というか)は、必要だと思う。やっぱ他人が実現できないことを実現する人というのは、こういう技が使えないと。

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ではゼロから軍事費を生み出したマジックのし掛けはどこにあるか?無から有を生み出せるわけないのだから、誰かが損してるはず。誰が損しているのか?

この場合最初に20年間積立た世代。この人達は自分の親の生活費を直接負担すると同時に年金も納めているわけだ。現代の我々は、年金を納めているが自分の親は年金を支給されてるから、親の生活費の負担からは解放されている。

まあ「自分が積み立てたお金を20年後にもらえます、年金とはそういうものです」と、まあぶっちゃけ当時の国民を丸め込んだわけですな。損しているというのは賦課方式としてみた場合で、あくまではじめの約束通り積立方式と見ればむしろ予定以上に貰えてるし。なのでしいて言えば、ほぼ確実に予想される積立方式のデメリット(物価変動に弱い)を十分に説明していない点が根本的なマジックのタネ。良くも悪くも官僚のお得意芸ですな。嘘は言わないが本当のことも言わない(苦笑)。

それを悪どいといえばそれまでだけど、そういう技を駆使しなければ当時、年金制度は実現しなかったのだろう。そして年金制度が実現したことは国民にとって得になっている。罪より功の方が大きいと思う。やっぱ政治は綺麗事じゃできないのだから、こういうのはむしろ評価するべきだと思う。俺はね。

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最後の部分は俺とは評価が違う人はいると思う。それについては俺はそれ以上言わない。ただマスコミがこういったことをありのまま報道し、その上で国民それぞれの評価を仰ぐならいいが、事実の切り取り方が非常に悪意があるよね。

(権力によって)隠された事実を暴くのがマスコミのはずなのに、マスコミが事実を隠すというのはなにごとかと思う。

関連記事:
「続々・マスコミはウケる記事を書きたがる」 2014年10月23日 『ガジェット通信』
https://getnews.jp/archives/687225

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年10月23日時点のものです。

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