Charli XCXインタビュー
スカイ・フェレイラ、アジーリア・バンクス、バンクス、エリー・ゴールディング、そして日本のきゃりーぱみゅぱみゅはもちろん、いま注目の個性派女性アーティストが顔を揃えたことでも話題を集めた今年のサマーソニック。なかでも、キュートなルックスと、ポップ&コアなクラブ・サウンドでアイコニックな存在感を放ったのが彼女、チャーリーXCX。
昨年発表されたデビュー・アルバム『トゥルー・ロマンス』で一躍脚光を浴びた彼女だが、直後のアイコナ・ポップとのコラボをきっかけに、本国イギリスのみならずアメリカでも注目度が急上昇。今年リリースされたイギー・アゼリアのシングル「Fancy」にも客演を果たし、全米チャートの1位を獲得した。
そんな彼女の新曲“ブーム・クラップ”が、4曲のリミックスを収録した配信限定のシングルとしてリリース。全米公開の映画『The Fault in Our Stars(さよならを待つふたりのために)』用に書き下ろされたその制作秘話、最近は自身でリミックスも手がける彼女の最新プレイ・リスト、そして日本で撮影されたMVが話題を呼んだ昨年のシングル“スーパー・ラヴ”についてなど、いろいろ訊いた(※ニュー・アルバム『Sucker』の話は、アナウンスがサマーソニック後だったため訊けず、、、残念)。
―去年のシングル“スーパー・ラヴ”のMVは歌舞伎町と横浜で撮影されたものでしたけど、どんな思い出がありますか?
Chali XCX「そうだなあ……日本にはまだ2回しか来たことがないんだけど、すごく親しみを感じるのね。自分の頭の中に、日本と共鳴する部分でもあるんじゃないかっていうくらい。日本で目にするすべてが魔法みたいに思えて、ファッションにしろ音楽にしろ、すごくクールで、しかも文化に歴史があるでしょう? そこがすごく特別だなって」
―けど、歌舞伎町の「ロボットレストラン」はかなり強烈だったんじゃないですか?
Chali XCX「あれはほんと強烈だった! 衝撃っていうか、ロボットが飛んでる中で、女の子が踊ってたり、女性オーナーもすごくクールだし……あのオーナー、(良い意味で)クレイジーよね(笑)。そこが最高なんだけどね」
―で、“スーパー・ラヴ”もそうですが、それと前後する形で発表されたイギー・アゼリアやダニー・ブラウンとのコラボとか、“ブーン・クラップ”とか、去年のアルバム『トゥルー・ロマンス』以降さらに、あなたの音楽の志向がディープになっている印象を受けるのですが。
Chali XCX「そうね、自分の音楽が変化してるって感じる部分はあるけど、自分から意識して変化したってよりは、年齢と共に自然に変化してきたって感じじゃないかな。それと、“アイ・ラヴ・イット”(※アイコナ・ポップとのコラボ)の成功のおかげで、ソングライターとしても自信がついたってこともあるのね。『トゥルー・ロマンス』の作業を通じて、自分はまだまだ成長過程にあるんだなってつくづく実感させられたというか……まだ完全に大人になりきる前に音楽業界に入ってしまったことで、どこか不安定なとこがあったし、ファーストを作った頃には人からどう思われるのかすごく気にしてたのね。何がクールで、何が正しいのか間違ってるのか、人の意見が気になって仕方なかった。“アイ・ラヴ・イット”は、そんな時期に作った曲で……完全に自分ひとりで、ホテルの部屋で、何も考えずに30分くらいで書いた曲なの。その曲がヒットしたことで、ソングライターとしてものすごく自信がついたし、人からどう思われるかなんて気にせずに、ただ自分自身であればいいんだって思えるようになったんだ」
―いま「成長過程」って話されましたけど、“ブーン・クラップ”について手応えはどうですか?
Chali XCX「自分が今まで書いた中で一番ポップな曲だと思う。すごくシンプルにロマンスについて歌い上げたラヴ・ソングで、ものすごく深く恋に落ちる経験について、それを祝福するような曲にしたかったの。みんな誰でも人生で一度はそんな恋を経験したことがあるでしょう? そう……愛について、ものすごくシンプルに歌ってる曲」
―あなたのように、ポップ・シンガーでありながら、コアなダンス・ミュージックを聴いているリスナーも惹きつけつつ、それでいてファッション・アイコンとして注目を集めているアーティストって、いまのイギリスにはあまりいないのかなって思うんですけど。
Chali XCX「たしかにそうかもね。片足をポップに、もう片方の足をインディに突っ込んでるような気がするし、そういう立ち位置にいるのが自分でも気に入ってる。私としてはただ最高にクールな音楽を作りたいだけなんだけどね。ただ、不思議に思われるかもしれないけど、自分は最初からポップな音楽を作ってきたつもりなんだよね。ファーストですら自分にとってはポップだし……たとえ今の意見に共感してくれる人が少数派だとしても(笑)。私自身は、クールなインディー・アーティストみたいに思われたいと思ったことは一度もないんだよね。いつでもポップ・ミュージックを作ってきたつもりだし……それで今、自分の作ってるポップ・ミュージックがコマーシャル的にもまあまあ受け入れられてるっていうのは、わりと自分にとってやりやすい状況なのかもと思って。私としては、いつでも自分の頭の中にあるアイディアをそのまま形にしてきたつもりだし、それが世間一般に受けようが受けまいが、自分のやりたいことをやってくだけだから」
―ちなみに、ダニー・ブラウンやイギー・アゼリアとのコラボレーションからは、同じアーティストとしてどんな刺激を受けましたか?
Chali XCX「ヒップホップは昔からずっと好きだったのね。それに自分の可能性を全方向に広げていきたいと思ってるから、同じことばっかりずっとやってるのが苦手なのね。いろんなジャンルのアーティストとコラボレーションするのも好きだし、一つの小さな枠の中に閉じ込められていたくないの。そういう意味で、いろんなジャンルの人達と共演することは自分にとってチャレンジでもあるし、そうすることで自分のリスナーに対してもチャレンジしてるんだと思う。今言ったダニー・ブラウンにしろ、イギー・アゼリアにしろ、まさに真のアーティストだし。ダニーなんて、あり得ないくらい天才的なラッパーで、それなのにすごく過小評価されてると思う。それにイギーは毎回全力投球なのね。そんな2人と一緒に共演できてすごくよかったと思う」
―8月にリリースされた“ブーン・クラップ”のEP“にはリミックスも収録されますが、今年の初めにはあなた自身が手がけたポルトガル・ザ・マンのリミックスも発表されましたね。リミキサーを選ぶ基準みたいなものってあるんですか?
Chali XCX「そうねえ……自分の曲をリミックスしてもらう場合は、自分がその人の作品のファンだったりとか……一番最初にやってもらったリミックスもセーラム(Salem)ってバンドで、もともとすごくファンだったのね。あとは友達に頼んだりとか、あるいは、曲の可能性を広げて、私ひとりの力では無理な領域にまで持っていってくれる人とかになるのかなあ。自分が人の曲をリミックスしたり、他のアーティストとコラボレーションする場合は、その曲だったり、そのアーティスト自身に何かしら感じるものがないと一緒はできないかな」
―最近だとジーザス・ミリオン(J£ZUS MILLION)とコラボした“イリュージョンズ・オブ”が印象的でしたけど、他にいま気になっているトラック・メイカーやアーティストはいますか?
Chali XCX「ジーザス・ミリオンはこれからものすごいビッグになっていくんじゃないかな。ほんと天才だし、彼の作るビートは心底すごいと思う。あと最近のお気に入りではスウェーデンのヤング・リーン(Yung Lean)とか、彼のやってるラップ・グループのサッド・ボーイズ(Sad Boys)とか。ヤング・リーンも日本好きで、“Kyoto”ってタイトルの曲もあるんだよ。Tシャツなんかでも日本語を使ってて、シャネルが何年か前に日本で出したTシャツをモチーフにしてたりね。すごく才能があるし、今後一緒に何かやるかもしれない。本当にセンスがいい子達なのね」
―最後の質問です。今回の“ブーン・クラップ”はそもそも、青春小説が原作の映画用に書き下ろされた曲とのことですが、チャーリーにとって“青春のサウンドトラック”を挙げるとするなら? この曲を聴くと青春時代を思い出す、みたいな。
Chali XCX「アハハハ、そうだなあ……『クルーレス』のサウンドトラックか、『フリーキー・フライデー』のリメイク版の『フォーチュン・クッキー』のサウンドトラックになるのかな。本当に大好きだったし……私が今よりももっと若かった頃をすごく思い出してキュンとなるしね」
Chali XCX
『Sucker』10月21日発売(Warner)
Charli XCX
イギリス生まれ。、デビュー前にも関わらずコールドプレイのオープニング・アクトを務めたことで話題に。その後、アッシャー、ノー・ダウト、ヴァンパイア・ウィークエンド、ソランジュ・ノウルズなどの数多くのヒット曲を手掛けてきたプロデューサーであるAriel Rechtshaid とロサンゼルスで出会い、彼の力を借りながら、2013年5月にデビュー・アルバム『True Romance』をリリース。2013年9月にリリースされたアイコナ・ポップ“アイ・ラヴ・イット(feat. Charli XCX”)”に共作・客演として参加し、全米シングル・チャート17週連続チャートイン。2014年3月にリリースされたイギー・アゼリア“Fancy feat. Charli XCX”にも客演参加し、全米チャート1位を記録。サマーソニック2014に登場し、オーディエンスを涌かせたことは記憶に新しい。2014年10月21日、ニューアルバム『Sucker』をリリース予定。
http://wmg.jp/artist/charlixcx/
撮影 中野修也/photo Shuya Nakano
文 天井潤之介/text Junnosuke Amai
都市で暮らす女性のためのカルチャーWebマガジン。最新ファッションや映画、音楽、 占いなど、創作を刺激する情報を発信。アーティスト連載も多数。
ウェブサイト: http://www.neol.jp/
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