6人に1人が退学、AO入試の問題点

AO入試合格者の退学率は、一般入試合格者の約2.6倍

6人に1人が退学、AO入試の問題点

読売新聞の調査で、入試方法別の退学率が明らかになりました。一般入試合格者の退学率が一番低く5.9%。AO入試(アドミッションズ・オフィス入試)合格者の退学率は、その約2.6倍である15.5%でした。AO入試合格者の実に6人に1人が退学している計算です。

「AO入試は本来、学力試験で測れない意欲や能力を重視する試験だが、早ければ入学の半年以上前に合格が決まることなどで、学習意欲を失わせている」と指摘があるようですが、私はもっと別のところに原因があると考えています。

「大学側の思惑」と「高校側の思惑」の違いに起因

問題は、そもそもAO入試に対する「大学側の思惑」と「高校側の思惑」の違いに起因しているのです。

■大学側のAO入試に対する思惑
大学にふさわしい人物を青田買いして確保したい。

■高校側のAO入試に対する思惑
その大学に合格できる実力のある生徒には一般入試で合格してもらい(AO入試ではなく一般入試を勧める)、2ランクくらい下の大学を受ける予定の生徒をAO入試で合格させ、上位大学への合格実績を増やしたい。

この思惑の違いによって、AO入試では、実力の伴わない生徒が合格することになり、大学に入ってから授業についていけず、退学率が上がってしまうのです。

AO入試の合格枠を減らすことが必要不可欠

では、どうすれば良いのでしょうか?大学側の需要と高校側の供給のバランスがとれていないため、高校側は2ランクも下の大学を受ける予定の生徒を提供しているほどです。つまり、AO入試での合格枠が多すぎるのです。まずは、AO入試の合格枠を減らすことが必要不可欠でしょう。

「AO入試は本来、学力試験で測れない意欲や能力を重視する試験だから合格枠を減らせない」という声も聞こえてきそうですが、一般入試に面接や実績、特殊能力による加算点をもっと導入すれば解決できることではないでしょうか。これにより、一般入試を考えていた人も、加算点のために勉強以外の活動に力を入れることになります。また反対に、学力で測れない能力を持っている人は、加算点だけでは合格できないため、一般的な勉強にも力を入れることになり、学力の底上げが期待できます。

AO入試が機能するよう、バランスのとれたシステム作りと運用を

2016年度より、東大・京大でもAO入試が始まります。「一般の入試では計れない優秀な人材を早い段階で確保したい」というのが大学側の思惑です。しかし、現状のAO入試のごとく、東大・京大への抜け道状態になってしまっては本末転倒です。

AO入試の本来の意義が正しく機能するような、バランスのとれたシステム作りと運営がなされなければなりません。例えば、アメリカのハーバード大学のように、AO入試しか実施しないスーパー国立大学を新設するというのも面白いかもしれません。

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