__(アンダーバー)インタビュー ニコニコにあった「お祭り」が僕の原点
__(アンダーバー)さん
7月9日(水)、3rdアルバム『くぁwせdrftgyふじこlp;@:「どうも、__(アンダーバー)です。」(仮)』(通称:ふじこ)をリリースする“歌い手”である「__(アンダーバー)」さん。
一度聴いたら離れない、大胆すぎる解釈でVOCALOID楽曲をアレンジして歌う「フリーダム」と、その一方で、真正面から丁寧に歌い上げる「フツーダム」、2つのスタイルを持つ異色の歌い手であり、動画共有サイトでの「歌ってみた」動画の累計再生数は3000万再生を超え、Twitterフォロワー31万人以上をも有する、超人気歌い手だ。
3rdアルバムの発売を機に、その異色すぎる才能の原点と、昨今の「歌ってみた」に思うこと、そしてこれからについて、語っていただいた。
きっかけは「おっくせんまん!」
──__(アンダーバー)さんは、2009年の『フリーダムに「脱げばいいってモンじゃない!」を歌ってみた』からニコニコ動画に「歌ってみた」を投稿されていますが、歌い手になったきっかけは何だったのでしょうか?
__(以下、アンダーバー) すべてのはじまりは2007年、ゴムさんの「おっくせんまん!」ですね。衝撃でした。僕の「歌ってみた」の原点はこれだと思っています。
当時は趣味としてカラオケで歌うことが大好きだったんですが、「おっくせんまん!」を聴いて、「あ、歌い方にもこんな世界があるんだ」と気付かされた感じがしたんです。それで、ああもう投稿しよう! と思いまして。
実はニコニコ動画の前に、koebuという音声専門のコミュニティサイトに歌を投稿していたんです。koebu自体は2007年12月にオープンしたんですが、オープン直後から投稿し始めました。だから実際には、そこから歌い手のような活動を始めていることになるんでしょうか。
──では、かれこれ6年以上も活動されているということですね!
アンダーバー 振り返ってみると結構長いですねー。
──でも2007年って、まだ歌ってみたブームの始まりの始まり、ぐらいの時期でしたよね? 今でこそ、必要な機材などをまとめた「歌ってみたのつくり方」なんて記事もありますが、当時は苦労されたんじゃないですか?
アンダーバー 一番初めは、アンダーバー星の祖母ダーバーの家に、カラオケ用のマイクがあったんです。それがちょうどパソコンのマイク入力端子に刺さって、認識してくれたんです。
そのマイクを借りて、パソコンに直刺しで録り始めたのが最初でした。でも何をやっても音割れが酷かったですね(笑)。
──ちなみにそのアンダーバー星っていうのは……。
アンダーバー 僕の生まれ故郷です。地球から20cmぐらい離れたところにあるんですけど、地球人にエンターテインメントのパワーを与えてアンダー星人を増やそうと侵略しに来ているんです。
──へ、へぇ……そうだったんですね!
【ニコニコ動画】【__(アンダーバー)CM動画】 「ふじこ」 【3rd アルバム】
「フリーダム」の原点と「フツーダム」の本音
──そういう意味ではもうかなり成功していますよね。歌ってみた動画だけで累計3000万再生近くありますし、Twitterフォロワーも31万人もいらっしゃいます。
アンダーバー いえ、まだまだですよ。まだまだ。
──やはりその人気の原点は「フリーダム」というスタイルにあると思うのですが、フリーダムの発想はどこから生まれているんですか?
アンダーバー カラオケに行っても、ふざけて歌うことが多かったんです。ウルフルズの「バカサバイバー」とか、野猿の「Fish Fight!」とか、変な曲がすごく好きで。一人でも大勢でも、みんなでバカ騒ぎして盛り上がるのが大好きなんです。
VOCALOIDの曲を聴いていても、「これをカラオケで盛り上がるように歌うにはどうしたら良いんだろう」という考えが最初に浮かんで、頭の中で勝手に合いの手を入れていたり。
そうやって曲を聴いていると、ピンポイントで気になる言葉が出てくるんです。ハチさんの「パンダヒーロー」で例えるならば、「パンダヒーロー」を「パンツヒーロー」って言ったらどうなるんだろう、とか(笑)。そうやって気になった言葉から、徐々に無理矢理広げていっています。
──以前からフリーダムの楽曲には、レコーディングされた曲というよりも、今そこで歌っているようなライブ感を強く感じていたのですが、カラオケ的な盛り上がりを意識されていたというのは、なるほどと思いました。
アンダーバー よくフリーダムは歌詞のアレンジや動画のつくりがおもしろいと言っていただけるんですが、僕としては、フリーダムは「おもしろい」よりは「楽しい」につながったらいいなと思ってつくっているところがあります。
僕が歌うだけじゃなくて、大勢で盛り上がるのが完成形だと思っているので、ライブで一緒にお祭り騒ぎできることが、僕の理想のフリーダムですね。
──そんなフリーダムがある一方で、歌ってみた正攻法的な「フツーダム」というスタイルもお持ちですよね。フツーダムを始めたのにはどんな理由があったんですか?
アンダーバー カラオケで盛り上がるのが大好きだと言ったばかりなのですが、本音を言うと、実は普通に歌うほうが好きなんです。しかも、バラードが特に好きで。
──フリーダムからはかなりの振れ幅ですね……!
アンダーバー そうなんですよね(笑)。カラオケが好きと言っても1人で行くことの方が多くて、1人でバカ騒ぎするにも限界があるので、真面目にバラードを歌って、どうやったら上手くなるか研究した時期もいっぱいあったんです。
ニコニコ動画の「みんなで盛り上がろうぜ!」みたいなお祭り感覚が自分も好きだったし、ニコニコ動画のノリ的には、やっぱりフリーダムが合うと思ったので、フリーダムで投稿し始めたというのはありました。
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ストイックにオリジナルで勝負
──7月9日に発売される「ふじこ」には全編オリジナル楽曲のディスクを収録されますが、これは今後、オリジナルに力を入れていきたいということですか?
アンダーバー その気持ちは強いです。
──作曲陣がとにかく豪華ですよね。それに、ほぼご自身で作詞されているんですね。
アンダーバー そうなんです。今回はアルバム全体にストーリーを用意して、各作家さんに楽曲ごとのイメージをお伝えしました。そしていただいた楽曲に、僕が作詞したという流れです。
──ちなみに、どんなストーリーなんですか?
アンダーバー アンダーバー星からやってきたアンダーバーは、地球に住む悲しい想いをしている人々を助けたり、楽しませたりして元気を与えて、洗脳していき、地球を侵略していく。というストーリーです。
──これまでのアンダーバーさんの活動をまとめたようなアルバムになる、ということですね。アンダーバーさんは、作詞の経験はあったんですか?
アンダーバー 実はこれまで歌ってみた以外にも、いくつかオリジナルでつくった曲があるんです。2012年の「もやし男」という曲が初めての作詞・作曲でした。
といっても経験豊富というわけではないので、なかなか苦労したところも多かったです。
──10曲中、最後の「Happy Under World」だけは、作詞・作曲の両方をOSTER projectさんが手がけられていますね。
アンダーバー この曲の制作にあたって、OSTERさんが僕の世界観を隅々まで知りたいとおっしゃってくださいまして。直接お会いして長々と話し合ったんです。
それから作詞作曲に取りかかっていただいたのですが、一度完成した楽曲を「これはアンさんじゃない」と言ってボツにされたそうなんです。また一から作りなおしてくださったらしく。そんなに熱心に取り組んでいただいて、本当に嬉しかったです。
──逆に、1枚目のカバーディスクには、まさにOSTERさんの世界観が詰まった「Alice in Musicland」が収録されていますが、カバーの選曲はどうやって決められたのですか?
アンダーバー 僕自身、ずっとニコニコ動画を見てきていて、歴史を感じるところがあったので、昔の曲が好きな人も、最近の曲が好きな人も楽しめるように意識しました。
以前投稿したことがある楽曲も、今の自分が歌ったらどうなるのかなと思って再録したり、これまで上手く歌えなくて投稿を断念していた楽曲にも挑戦させていただいています。
【ニコニコ動画】【ヒャダイン×スズム×__】まじしゃんず☆さまー【オリジナルPV】
ニコニコ動画に感じる変化
──初投稿から約5年、今でもニコニコ動画に投稿されているのは、今だにニコニコ動画はそういうお祭り騒ぎが実現できる場所であって、おもしろい場所だと感じられているからですか?
アンダーバー うーん……時代の流れを感じるところはありますが、今のところニコニコ動画はそういう場であると思ってはいます。
──この5年で変化を感じているのですか?
アンダーバー 以前はあくまで投稿者と視聴者の立ち位置が同じであって、動画をみんなで盛り上げよう! という空気があったと思うのですが、今は立場が逆転しているような気がします。みんなでおもしろくするのではなく、はじめからいかにおもしろい動画を投稿するか。
それこそ昔は、何やっているんだかわからないクオリティーの低い動画でも、おもしろさを見つけ出して、コメント職人が動画に落書きしたり、その動画をネタにして他の動画がつくられたり、みんな盛り上げていこうとする感覚があったと思うんですよ。
だけど今は、最初からおもしろいもん持ってこい! っていう状況になっている。それが、なんだか悲しいというか、辛い感じがしています。みんな見ていて楽しいのかな、と。
──そんな現状を変えたい、という意識を持って動画をつくっている部分はありますか?
アンダーバー 以前のように戻ってほしいなとは思いつつ、色んな人に聴いてもらいたい気持ちのほうが強いので、とにかく僕自身のクオリティーを上げていくしかないかなと思っています。
活動期間が長いと誰でも、「あの頃は良かった」と言われることがあると思うのですが、僕も「『パンダヒーロー』の頃が一番良かった」と言われ、「『いーあるふぁんくらぶ』の頃が一番良かった」と言われ、「『脳漿炸裂ガール』の頃が一番良かった」と言われ……。なんだよ結局ずっとおもしろいんじゃん! って(笑)。
何かと文句をつけたがる人は絶対いるんだから、それに対して悩むよりは、楽しんでくれる人のために頑張ろうって思うようにしていますね。
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再生数を上げるコツって?
──そう言われてしまうのも、人気ゆえだと思います。アンダーバーさんのように人気の歌い手になるためのコツは、どんなところにありますか?
アンダーバー 人気というか、再生数は常に意識しているので、再生数を伸ばすためにいろいろ試行錯誤はしていました。
歌の技術向上はもちろんとして、やっぱり動画も大事なんですよね。原曲の動画に歌をのせるというのはオーソドックスなやり方ですし、楽なんですが、それだけじゃダメだ、伸びないんだと思い始め、今の“顔”を使い始めました。でもそれも、ただ使うだけじゃ伸びないなと思って、元動画に合わせて動きをつけたり……。
だけど最近は結局、いかに金をかけるかになっているんですよね。身も蓋もないといえばそうなんですが(笑)。
──お金、ですか?
アンダーバー 機材にかけるお金のことです。高い機材を使えば、やっぱり音も良いんですよ。音質が悪いと「もっと良いマイク買え」とか、「そんな安いインターフェースじゃダメだ」ということになってしまうんです。
それができたらみんなプロじゃん! って思いつつ、趣味として、タダで動画を投稿するというのは、ご奉仕になっているんじゃないかと感じてしまう面もあります。でも、今はそれが大前提というか、伸びるコツになっていますね。
──今「プロ」という言葉が出ましたが、「プロと歌い手の違いって何?」という話題が長いこと言われてきたと思います。アンダーバーさんはどうお考えですか?
アンダーバー 今、僕の中でも「プロ」という言葉はネックというか、キーワードになっています。
メジャーアルバムを出すか出さないか、これが形式的に一番わかりやすいプロの定義ですよね。でもそれだけで終わらせるのは、僕としてはちょっと違うんだろうな、と思っています。
聴いてくれる人の存在を大前提として、その人たちを楽しませるために自分は何をすべきなのかを考える。それをしっかりやった上で、結果を出せて、視聴者を十二分に満足させることができることが大事だと思っています。
歌い手の全員が全員ここまで考えろとは思いませんし、プロを目指して歌い手になった人もいると思いますが、結果としてプロになるかは別として、表現者を名乗るからには、そういった意識が必要じゃないかと思うんです。
「お祭り騒ぎ」が僕の原点
──今後の活動方針について、教えていただけますか?
アンダーバー アルバムもどんどんつくっていきたいなと思いますが、まずは9月6日のワンマンライブを成功させたいですね。
──9月のワンマンライブは、どんなライブになるのでしょうか?
アンダーバー 「ふじこ」がかなりコンセプトをもったアルバムになったので、これに沿って、オリジナルをメインに、ストーリーのあるライブにしたいと思っています。これを成功させて、どんどん大きいところでできるようになりたいですね。
たくさんの人と一緒にお祭り騒ぎしたい、という気持ちが一番強い僕の原点であって、それを一番リアルに叶えてくれるのがライブなので。ぜひたくさんの方に来ていただきたいなと思います。
__(アンダーバー) // UNDERBAR
歌い手
ニコニコ動画にて歌ってみた動画を投稿し、人気を博する。キャラクター爆発の「フリーダムバージョン」とボーカルのうまさを発揮した「フツーダムバージョン」のふたつの個性を使い分け、独自の__(アンダーバー)ワールドを作り出す。自身は、地球から20センチ離れたアンダー星の国王として君臨しており、地球上にエンタテインメントのパワーを送り込み日夜アンダー星人を増殖させている。
TOWER anime × __(アンダーバー)決定!
「ふじこ」のリリースを記念して、タワーレコード全店で、撮り下ろしのスペシャルポスターが掲出決定!
2014年7月8日(火)から8月4日(月)までの期間限定となっております。
さらに同期間中、スペシャルフライヤーも全店で配布! フライヤーはなくなり次第終了です。
ぜひお近くのタワーレコードでゲットしてください!
関連商品
くぁwせdrftgyふじこlplp;@:「どうも__(アンダーバー)です。」(仮)[2枚組]
__(アンダーバー)
発売 : 2014年7月9日
価格 : 3,240円(税込み)
発売元 : Subcul-rise Record
ウェブサイト: http://kai-you.net
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