賃貸集合住宅でのひとり暮らし「顔が分かる人がいると何となく安心」が6割

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【今週の住活トピック】
「ひとり暮らしの安全・安心」調査について/旭化成ホームズ
http://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/press/20140530-3/index/ひとり暮らし、なかでも女性のひとり暮らしの防犯意識を把握して、防犯設計の向上などに役立てようと、旭化成ホームズが「ひとり暮らしの安全・安心」調査を行った。その結果、「匿名コミュニティ」をうまく機能させることが、防犯の抑止力になると分析している。さて、匿名コミュニティとはいったいどういうものだろう?

3階建て以下の低層集合住宅は侵入窃盗の被害リスクが比較的高い?住宅の犯罪安全性の指標となるのが、侵入窃盗の認知件数だという。警視庁の統計(平成24年)の「窃盗の認知状況」(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/toukei/bunsyo/toukei24/pdf/kt24b009.pdf)を見ると、侵入窃盗の認知件数は過去10年間で下がり続けていて、平成24年は7970件。

しかし、旭化成ホームズの「くらしノベーション研究所」では、低層の集合住宅については、戸建て住宅や4階建て以上の中高層集合住宅と比べて件数の減り方が小さく、被害リスクが比較的高いと見て、低層集合住宅などの被害実態調査などを独自に行ってきたという。

その研究結果から、低層集合住宅の被害リスクが高い理由として、第一に、戸建てに比べて地域コミュニティによる「みまもり」型の防犯機能が弱いこと。第二に、中高層集合住宅に比べ「くいとめ」型の防犯機能が不十分なことが考えられると報告している。例えば、住人同士の声掛けが少ないとか、オートロックの採用率が低い、1階住戸が多いといったことだ。

一方で、調査結果によると、防犯設備の評価は高いものの、それだけで犯罪を防げると考えている人は少ない。特に女性の場合は、ストーカー被害はオートロック・ホームセキュリティともに70%が防げない(全く防げない+あまり防げない)と回答。空き巣被害についても、オートロックで57%、ホームセキュリティで40%が防げないと回答している。

「匿名コミュニティ」とは、名前は知らなくても顔が分かる人がいる緩やかなつながりコミュニティによる「みまもり」はどうだろう?
賃貸住宅の居住者同士がどのような関わり合いを希望しているかという「コミュニティに対する志向性」について調査したところ、「共用部で居住者同士話ができるとよい」と思う(思う+やや思う)居住者は、男女ともに2割程度しかいなかった。同研究所では、この層を「対面コミュニティ」志向と名づけた。

賃貸集合住宅でのひとり暮らし「顔が分かる人がいると何となく安心」が6割

【図1】コミュニティに対する志向性(出典:旭化成ホームズ くらしノベーション研究所「ひとり暮らしの安全・安心」調査より抜粋)

一方、居住者同士話ができるとよいと思っていない(思わない+あまり思わない+どちらともいえない)残り8割の中には、「顔が分かる人(名前は知らなくてもよい)がいると、何となく安心だと思う」(思う+やや思う)人が6割近くいる。こうした考え方を「匿名コミュニティ」と名づけ、どちらともいえないという回答の半数にも匿名コミュニティ志向があると考え、全体の約6割を匿名コミュニティ志向と推測。どちらにも当てはまらない層は「NONコミュニティ」志向と名づけた。

志向性の違いをさらに調べたところ、いくつかの特徴が浮かび上がった。
まず、「顔を知っていると何かのとき助け合える」と思うのは、対面コミュニティ志向・匿名コミュニティ志向の女性でともに9割前後と高いのに対し、NONコミュニティ志向では2割弱しかいなかった。
また、匿名コミュニティ志向の女性は、「住民同士挨拶をする」「ゴミだしの日は守る」(必ず+できるだけ)がともに9割前後と高く、マナーへの意識が高いことも分かった。
さらに、「隣の部屋から悲鳴が聞こえた」り、「ベランダをよじ登る人がいた」りといった非常時に、様子を見にったり、何らかの通報をするといった対処をするという人が、匿名コミュニティ志向では9割前後と高かった。

匿名コミュニティを引き出す手法は?同研究所では、「匿名コミュニティ志向者はマナー意識が高く、非常時の通報に対しても協力的であることから、防犯性向上という観点からは十分に効果が期待される」と考え、匿名コミュニティを引き出す手法も提案している。

提案している手法は、次の3つだ。
・マナー同意書(入居時に、居住者同士の挨拶やマナーの順守、非常時の助け合いなどの同意書に合意する)
・共用部や日用品のシェア(ラウンジなどの共用部や脚立・工具、たまにしか使わない日用品をシェアし、適切に管理する)
・エントランスのイメージ向上(外部からの見た目にも明るい印象を与える管理の行き届いた共用ラウンジを設置したエントランスには、侵入者を抑止する防犯機能も期待できる)

子どもがいる家族であれば、子どもを通じて地域コミュニティに溶け込みやすいのだが、ひとり暮らしの場合はそうはいかない。そうした点で、シェアハウスが注目されているわけだが、たしかに「対面型」の濃いコミュニティを志向する人には適した住まいだろう。一方で、それを好まない人も多数いる。

対面型は望まないけれど、緩やかに居住者とつながりたいという「匿名コミュニティ」と名づけられた新しいコミュニティのあり方に、注目したい。単に顔見知りという程度ではなく、そこに信頼感という要素を織り交ぜてこそ、防犯機能を担うことができると思う。そのためには、顔を合わせやすいような建物のハード面に加え、無理なく互いを認知できる入居後のソフト面などで、それぞれの賃貸住宅に合った工夫が必要だろう。

●旭化成ホームズ株式会社「ひとり暮らしの安全・安心」(匿名コミュニティによる低層賃貸住宅の防犯)調査報告書(全文)
HP:http://www.asahi-kasei.co.jp/j-koho/kurashi/report/K038.pdf
元記事URL http://suumo.jp/journal/2014/06/11/64006/

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