ものを作ったことのない人にはものを作る苦労がわからない、しかも想像以上に(メカAG)

ものを作ったことのない人にはものを作る苦労がわからない、しかも想像以上に(メカAG)

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

ものを作ったことのない人にはものを作る苦労がわからない、しかも想像以上に(メカAG)

外から見ているだけでは現場の苦労はわからない。ただ分からないだけでなく、それは想像する以上にわからない。誰でも「たぶんいろいろ苦労はあるだろう」ぐらいは分かる。しかし実際の苦労というのは「いろいろ苦労がある」と漠然とイメージする以上のものなのだ。

たとえば

「失敗事例 > 生コンクリートの重さでペデストリアン橋が崩壊」 『失敗知識データベース』
http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CA0000466.html

生コンクリートは乾いて固まるまで水分を含んでいるから、完成した状態よりも重い。つまり建設途中の橋というのは、完成した状態よりも重い自重を支えなければならない場面がある。当然補強したり、補強の足場を確保したりしなければならない。そうでないと作れないわけだ。

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機械の部品とかも、工具が内側に入らないような形状のものは作れないんだよね。だからパーツを分けて、後で結合しなければ作れない。3Dプリンタはその意味で画期的。

逆もある。ピラミッドの内部は暗いのに、内壁に煤が付いてないのはおかしいという人がいる。明かり取りのために何かを燃やせば煤がつくはずで、建設した人たちは電気のランプとかのテクノロジーを持っていたのだ、みたいに想像力を膨らませる人もいる。

でも実際にはピラミッドは下から順に石を積み上げて作るわけだから、積んでる最中は天井ががら空きで照明なんて必要ない。これも逆の意味で完成品しか見ていないことからの勘違い。

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社内の部署の大掛かりな移動なんかパズルだよね。一瞬にして全員の移動がテレポートみたいに完了するなら簡単だが、実際にはまず第一段階としてこの人達が個々に移動して、開いたスペースにあっちの人が移動して…と。ようするに移動手順までが設計(計画)の範囲。現状と完成状態を示しただけでは、実現できない。

道路工事とか線路工事も機能を維持したまま工事しなければならないから大変。迂回路を作るところから工事をはじめなければならない。資材置き場とかも作らなければならない。

消費税の変更もどこかの定数を5%から8%に変えるだけじゃん。なんでプログラムの修正がそんなに大変なのか?と言ったりする。でも移行は瞬間的には起こらない。先月分までは5%で計算し、今月分からは8%で計算、日付変更の処理は…、過去3ヶ月の売上の平均を計算する時は…とか。

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毎年新人が入ってくると、IT企業なんだから社内はさぞかしハイテク化(笑)されている思っているらしく、古臭くて幻滅されたりする。んでもっと新しいやり方に置き換えましょうよ、と。

まあ気持ちはわかるが彼らの頭には移行のコストがないんだよね…。道路工事と同じで現在の仕事は継続したまま移行作業もしなければならない。そもそも新人はそういう移行作業を体験したことがないから、そのコストがうまく見積もれない。いきおい「頑張ればできます!」みたいな(苦笑)。

となるとやっぱ経験者が過去の経験を元に実現可能なスケジュール案までつけた提案書には劣るよね、残念だけど。「移行するのが合理的です」と主張するなら、移行のコストも含めてトータルでの合理性を示さなければならない。「頑張る」は合理的ではない。こういうところに経験はやっぱ大事。

そりゃ誰だって過去のしがらみを一切切り捨てて心機一転ゼロから整備したいよ。都市計画とかを考える人達もきっと同じ気持ちだろう。でも人体に盲腸とかが残っているように、神ですら1度では完璧なものを生み出せなかった。場当たり的な改良を繰り返して、徐々に進化していく、生物も人間も会社も社会も。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年05月23日時点のものです。

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