AJYSYTZ、「音楽を続けていて良かった!」レコ発ライヴで歓喜の歌声–OTOTOYライヴレポ

AJYSYTZ、「音楽を続けていて良かった!」レコ発ライヴで歓喜の歌声–OTOTOYライヴレポ

AJYSYTZのファースト・アルバム『Unknown Nostalgia』のリリースを記念して、5月3日(土)に〈『Unknown Nostalgia』Release Party〉が新代田FEVERで開催され、多くの仲間と共に歓喜のパフォーマンスを披露した。

18時過ぎに会場に入るとAJYSYTZのベーシスト平泉佑真プロデュースの「ヒソミネカレー」が人気のようで、開演前に腹ごしらえとばかりにお客さんが列をなしていた。家でご飯を食べてきてしまったことを悔やみつつ今度は絶対食べよう…と考えていると開演時間に。まずは名古屋からやってきたバンドAUDIOBOXINGがオープニングに登場。ツイン・ドラムにベースの3人編成で土着的なリズムにエレクトロニカを絡ませた演奏に徐々に埋まり出したフロアの熱が上がっていくのがわかる。トーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』が現代に作られたらこんな感じだろうか。

2番手のシンガーソングライター、千代によるソロユニットkotturはセンターにキーボードとラップトップを置きパフォーマンス。ループして幾重にも重なるコーラスが広がって行くと一気に視線がステージに集まり出す。パーカッシヴな打ち込みが散りばめられた楽曲は民族的なメロディとの融合で独自の世界観を演出。ステージ斜め上から放射状に伸びた照明が神秘的な彼女の魅力を際立たせていた。「物販のCDを家に忘れてきてしまった」というドジっ子MCで観客を和ませたが(笑)、ボーカリストとしての確かな実力者ぶりをしっかり聴かせていた。

Aureoleのライヴは一瞬壮大なイントロで始まるかと思いきや叩きつけるような爆音の「Windfall」からライヴをスタート。激しく体を揺さぶる者、圧倒され立ち尽くす者、両極端な反応が見られた。「World As Myth」ではベースの岡崎がタッピングを見せ、ハンドクラップも加わり広い地平を突き進む群衆のような迫力ある演奏を聴かせた。Aureoleはその佇まいからアンビエントな音響派と思われがちだが、今日はラウドな音を聴かせるゴリゴリのロックバンドとしての姿がそこにあった。「AJYSYTZレコ発おめでとう! ツアー・ファイナルの凄く良いイベントに呼んで頂いて嬉しいです」との森大地(Vo.Gt)のMCから東京で初めて演奏するという新曲を披露して短めのセットを攻めの姿勢で駆け抜けた。

続いてハイスイノナサが登場。先程ライヴを終えたばかりのAureole佐藤香も参加している。ステージ・バックと会場左手の壁に映し出される映像と共にパフォーマンス。AJYSYTZとの対バンは初めてだが各メンバーとの縁は深い、とのこと。「地下鉄の動態」では演奏者全員のタイム感が一部の隙もなくピタリとはまったプレイを見せた。ここまで緻密に計算され尽くした音楽をライヴ・ハウスで聴ける日本のインディーズ・シーンは贅沢だ。「最後に盛り上がる曲を演奏してAJYSYTZさんに繋げたいと思います」という照井順政(Gt)のMC通りに観客を存分に盛り上げてステージをあとにした。

いよいよAJYSYTZが登場。白い衣装に身を包んだ男性メンバーに続きボーカルの五阿弥瑠奈が登場すると大きな拍手と歓声が挙がる。1曲目はニュー・アルバム『Unknown Nostalgia』の冒頭を飾る「mirror, mirror」。早くも全身を使って曲の世界を表現する。囁くようにタイトルを告げたのはMVも公開され話題を呼んだアルバム・リード曲「I know you, you know me.」。続く「Night Flight」では2人のダンサー(「BLUE TOKYO」より亀井翔太・松田陽樹)がステージに上がり、左右でパフォーマンス。バンドの演奏は重厚で切れ味抜群で、あくまでも瑠奈の歌を支え寄り添っている。

ステージにはゲストとしてバイオリニストの白須今が上がり「メトロ」、続いてバイオリンのイントロから軽快なアコースティック・ギターのストロークに乗って「Synchronicity」へ。アルバムでも一際ポップで親しみやすい曲だ。ライヴでも良いアクセントになっており最後のシャウトまで惹きこまれた。

ここで初めてのMC「今日はこんなに沢山来ていただいて、本当にありがとうございます!」と客席を眺め嬉しそうだ。と、早くも最後の曲として「唯一、アルバムに入ってない曲を久しぶりにやります」と始まった「Icebreaking Dancer」。つんのめるようなリズムにザラリとした音色のギター、そこにスペイシーな装飾音がふりかけられ、激しく動く映像がレイヤーのようにメンバー達に重なって行く。右腕をグルグル回しながらシャウトする瑠奈。

いったんステージを降りたバンドはアンコールの声にすぐにステージに戻ってきた。ギターの藤野礼がMCで「『Unknown Nostalgia』ツアー・ファイナルにこんなに大勢の方に来て頂いて本当にありがとうございます。」と改めて来場者への感謝を述べ、アンコールがスタート。ゆったりと始まった「TyphoonNight」では瑠奈が座ってキーボードを弾きながら歌う。間奏でのインタープレイから徐々に熱を帯びる演奏と共に歌声も力がこもり力強いスクリームが会場を震わせた。

「音楽を続けていて良かったな、と今思いました。みんなの顔が見えてとても嬉しいです。また会いましょう」とラストはストレートに言葉を噛みしめるように「ノイ」を歌いレコ発ライヴは終了した。太く力強い声、繊細なウィスパーボイスを自在に操る五阿弥瑠奈を中心に腕利きのプレイヤーで構成されたAJYSYTZ。アンコール・ラストで高く伸びていった歌声のように、これからAJYSYTZの音楽がどこまでも遠くまで広がっていってほしい、そんな風に思えたレコ発ライヴだった。(岡本貴之)

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撮影 : 岡本麻衣 / Yacoh 35

〈『Unknown Nostalgia』Release Party〉
2014年5月3日(土)
OPEN 18:00 / START 18:30
AJYSYTZ / ハイスイノナサ / Aureole / kottur / AUDIO BOXING

〈AJYSYTZセットリスト〉
1. mirror, mirror
2. I know you, you know me.
3. Night Flight
4. Biscuit
5. メトロ
6. Synchronicity
7. Icebreaking Dancer
アンコール
8. TyphoonNight
9. ノイ

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